【番外】AIロボット、夫と触れ合う
昨年、初めてのAIロボットカフェに家族で行った。
癒し系の見た目のロボットが席を担当してくれ、フードが来るまでの間、触れ合いの時間がある。
初めて見るAIロボットに、息子は大喜びした。
それなりに重さがあるロボットを、息子は気をつけて抱っこし、赤ちゃんに接するように話しかけた。
仮に、ロボットの名前を「みかん」とする。
「みかんちゃん、みかんちゃん!」
何度も呼びかけ、頭をなでてニコニコ眺める息子。
そんな2人の様子を、私はカメラに収めた。
「可愛いね」
私が言うと、息子も大きく頷いた。
「そうだね!」
再びみかんの方を見て、一瞬フリーズする息子。
「……名前、なんだっけ?」
私は呆気に取られた。
さっきまで、散々呼びかけていたのに…。
そんなことがあってから一年後。
我が家は再び、みかんちゃんに会いにAIロボットカフェを訪れることにした。
一年前もなかなかの人気だった。
今年はさらに人気が出ていて、予約は激戦だったが、なんとか取ることができた。
息子はみかんちゃんに会えるのを楽しみにしていた。
いざカフェに行くと、二回目の余裕なのか、成長したのか、息子は落ち着いていた。
我が家の席を担当したのは、みかんちゃんではなかった。
はじめましてのロボットだったが、息子はロボ見知りすることなく、ニコニコして抱っこした。
「すくすくちゃん!」
呼びかけた息子に抱っこされ、意外にもすぐに眠ってしまうすくすく。
「あー、寝ちゃった」
嬉しそうに言う息子。
すると、横から夫が呼びかけた。
「おい、すくすく!」
すくすくは、夫の呼びかけに反応し、すぐに目を覚ました。
「すくすく!」
続けて呼びかける夫に、寝起きのすくすくは両手をパタつかせて喜んだ。
息子もそれを見て、はしゃいだ。
その後、私が呼びかけると、平常心で目だけをこちらに向けるすくすく。
そこへ横から夫が呼びかけると、すくすくはまた大はしゃぎした。
……妙に、夫と波長が合うじゃないか。
すくすくの写真を撮りながら、私は内心、そう思った。
帰り際、我が家の担当すくすくと、その仲間たちとの触れ合いタイムが、最後に10分間設けられていた。
数体いるAIロボットたちを、自由に撮影したり抱っこしたりできる時間だ。
私はそれぞれの名札を確認しながら、呼びかけてみた。
人懐っこいロボットが、すぐに寄ってきてくれた。
上目遣いで、なんとも可愛い。
カメラも認識しているのか、こちらに目線を向けてじっとしている。
私は写真を何枚も撮りながら、ふと、その後ろにいるすくすくに気づいた。
息子は、別のロボットと話している。
すくすくは息子に背を向け、私の方でもなく、別の方向を見ていた。
その視線の先を追うと、そこには、別のロボットと触れ合う夫がいた。
一途に、夫だけを見つめるすくすく。
その視線に気づかず、別のロボットに呼びかけている夫の肩を、私は強めにトントンした。
「ちょっと!あれを見て!」
夫は、少し離れたところから見つめているすくすくに、ようやく気づいた。
「すくすく!」
夫が呼びかけると、待ってましたとばかりに、夫のもとへ移動するすくすく。
夫はすくすくを抱っこするでもなく、ただ呼びかけているだけなのに、すくすくは大喜びでパタパタしていた。
何も気づかずに息子は楽しんでいたが、今回一番AIロボットに癒されたのは、夫に違いなかった。
夫の脳波がAIとシンクロしやすいとか?
夫の声がすくすくの好みだったとか?
単に誰かと見間違えているとか?
夫の何が、そんなにAIロボットのお気に召したのかはわからない。
でも、この先AIと夫は、意外とうまくやっていける相棒なのかもしれない。
そう思った私だった。
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