堀江先生のなるほど教室〜石油〜
「今日は、ここまでお疲れ様」
「先生!」
(きた、マナちゃんはいつも勉強終わりに勉強以外を聞いてくる……)
ノートを閉じるやいなや、身を乗り出してきたマナちゃんに、堀江先生は苦笑しながらシャーペンを置く。
「なんだい、マナちゃん」
「こないだ先生、スマホケースも服も石油からできてるって言ってたじゃん。でも石油って、真っ黒でドロドロの液体でしょ。なんであんな透明なケースやフワフワの服になるの? 魔法?」
「魔法じゃないよ。強いて言えば『お料理』だね」
「お料理?」
「そう。ドロドロの原油を、巨大な鍋みたいなタワーに入れて、グツグツ煮込むんだ」
「煮込むと透明になるの」
「沸点、つまり蒸発する『温度の違い』を利用するんだよ。タワーの下から何百度って熱を加えると、石油は蒸気になって上に昇っていく。そして、冷えて液体に戻る温度ごとに、違う部屋に集めるんだ」
「へえー、温度で分けるんだ」
「そう。一番下の一番ドロドロな残りは、道路の『アスファルト』。その上が船やトラックの『重油』や『軽油』。もう少し上が車の『ガソリン』。そして、100度ちょっとで取り出せる『ナフサ』っていう透明な液体が、マナちゃんのスマホケースや服、コスメの材料になるんだよ」
「温度の差で、道路からスマホまでできるんだ! 石油すごすぎ! そもそも、なんで地球にそんな便利な液体が埋まってるの? 地球からのプレゼント?」
「うーん……実はね、石油の正体は『大昔の生き物の死骸』なんだ」
「えっ……ウソでしょ」
「何億年も昔のプランクトンや藻が海の底に積もって、地球の熱と圧力で長い時間をかけてドロドロに変化したもの。それが石油なんだよ」
「ひいっ! じゃあ、私のこのスマホケースも……」
「そう、数億年前の古代生物のなれの果てだね。……言い方を変えると、“命の最終形態”かもしれない」
「ロマンチックなのかホラーなのか分かんないよ! ……でも、それを毎日普通に使ってる私の方がちょっと怖いかも」
「地球が何億年もかけて作った『命のスープ』を、人間はこの150年くらいで猛スピードで使い切ろうとしてる。しかも、燃やすと大昔の生き物が溜め込んでいた二酸化炭素が空気中に出ていって、地球が温暖化しちゃうんだ」
「それヤバくない? なくなっちゃうし、暑くなるし」
「だから今、世界中で太陽や風の力を使ったり、プラスチックをリサイクルしたりして、石油に頼りすぎない工夫をしてるんだよ」
「古代のプランクトンさんたち、ごめんなさい! 私、このスマホケースずっと大事に使うね」
マナちゃんはスマホケースを両手で包み込むように優しく撫でた。堀江先生はふっと笑って帰り支度を始める。
先生を見送った後。
マナちゃんは机に向かい、お気に入りの『秘密のノート』を開いた。そこには、今日先生が教えてくれたことが、誰が読んでも分かるように可愛くまとめられていく。
📒 マナの秘密のノート 📒
石油の正体って?
何億年も昔のプランクトンや藻の死骸! 海の底に積もって、地球の熱と圧力で長い時間をかけてドロドロの液体になった「古代生物のスープ」だった🦖💦
どうやっていろんなモノに変身するの?
製油所の巨大なタワーでグツグツ煮込んで、蒸発する「温度の差」で分けてる!
• 下の方(高温): ドロドロのアスファルトや船の重油(道路の材料!)
• 真ん中くらい: 車のガソリン🚗
• 100度ちょっと: 「ナフサ」っていう透明な液体。
これがプラスチックや服、コスメに変身する魔法の素!✨
• 一番上(低温): おうちのコンロで使うガス🔥
石油の悩み事
地球が何億年もかけて作ったのに、人間がすごいスピードで使ってるからいつかなくなっちゃうかも。しかも燃やすと二酸化炭素が出て地球が暑くなる(温暖化)🌍🔥 だからリサイクルや新しいエネルギーが大事!
ニュースって遠い話だと思ってたけど、私のスマホケースには“数億年の歴史”が詰まってたんだ✏️✨
(それを、私たちは毎年どれだけ捨ててるんだろう……)
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