クレオパトラも愛した? 古代エジプトの薬草と「香り」|自然療法シリーズ・歴史② #0015
代エジプトと聞くと、ピラミッド、ミイラ……
そして、クレオパトラを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
絶世の美女と伝えられる彼女もまた、
香油や香りを、こよなく愛したと言われています。
実は、エジプトでは、はるか昔から、
とても高度な**「薬草と香りの文化」**が、暮らしに根づいていました。
3500年前の“薬草事典”
今からおよそ3500年前に書かれた医学文書
「エーベルス・パピルス」には、
数百種類もの薬草の使い方が、びっしりと記されています。
その長さは、なんと20メートル以上。
一巻の巻物に、700をこえる処方が、書き込まれています。
おなかの不調、目の病気、肌のトラブル、女性の悩み——
扱う分野も、驚くほど幅広いのです。
ちなみに「エーベルス」という名前は、
1800年代に、この巻物を手に入れた、
ドイツの学者の名前に、由来しています。
はちみつ、にんにく、ひまし油、そして各種のハーブ。
彼らはすでに、
「どの植物が、どんな不調に役立つか」を、
体系立てて知っていたのです。
たとえば、このパピルスには、
傷の手当てに「はちみつ」を使う処方が記されています。
はちみつには、細菌の繁殖をおさえる性質があり、
実は今でも、傷のケアの分野で見直されているほど。
3500年前の知恵が、現代にちゃんと通じている——
なんだか、面白いと思いませんか。
医療にも、祈りにも――「香り」
そして、忘れてはいけないのが**「香り」**。
乳香(にゅうこう=フランキンセンス)や
没薬(もつやく=ミルラ)といった、
かぐわしい樹脂が、
医療にも、祈りの儀式にも使われました。
あのミイラづくりにも、
植物の樹脂や香料が欠かせませんでした。
腐敗を防ぐ——つまり、
自然の力で"守る"知恵が、そこにあったのです。
クレオパトラと、植物の恵み
そして、冒頭のクレオパトラ。
彼女もまた、こうした香りと植物の恵みを、
美容と健康に、惜しみなく使ったと言われています。
たとえば、こんな逸話が残っています。
美肌のために、ロバのミルクのお風呂に浸かった。
愛する人を迎える部屋を、バラの花びらで埋めつくした。
サフランやバラを溶かした香油を、肌にまとった。
(※いずれも、伝説的な言い伝えで、諸説あります)
真偽はさておき、
彼女が“植物や自然の恵みで、美しさと心を整える”ことに、
人一倍こだわっていたことは、想像に難くありませんね。
“美しさ”の裏側にも、
植物の力が、そっと寄り添っていた——。
そう思うと、なんだか親しみがわいてきます。
香りは、単なる“いい匂い”では、ありませんでした。
古代エジプトの人々にとって、それは、
心を鎮め、場を清め、神とつながるための、
大切な“はたらきを持つもの”だったのです。
だからこそ、神殿では日々、香が焚かれ、
王や神官たちは、香りをまとって、儀式にのぞみました。
香りは、暮らしと祈りの、どまん中にあったのですね。
香油を肌に塗り、香を焚き、薬草で体を整える。
エジプトでは、薬草と香りが、暮らしと祈りに溶け込んでいたのですね。
これは、今の私たちが親しむ
アロマテラピーやハーブの、はるかな祖先ともいえます。
数千年の時を超えて、
植物の力は、かたちを変えながら、
今も私たちのそばにあります。
次回は、さらに時をさかのぼって、
「人類最古級の処方」が刻まれた
メソポタミアの粘土板のお話です。
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参考・出典
※実在の資料です。正確な書誌・最新の解釈はご確認のうえ記載してください。
エーベルス・パピルス(Ebers Papyrus、紀元前1550年頃の古代エジプト医学文書)
ロイ・ポーター『The Greatest Benefit to Mankind: A Medical History of Humanity』(医学史の通史)
香料・精油の歴史に関する概説書(乳香・没薬など古代の芳香樹脂の利用について)
