見出し画像

『対話する経営』 第6章 “事業所間のバランス”と内なる競争

第6章 “事業所間のバランス”と内なる競争
  ――利用者確保とサービス配置のリアル

「新しい利用者が出た時、どこの事業所が受けるのか」
——その判断が、思った以上に現場を揺らしていた。

訪問介護、通所介護、居宅介護支援、そして就労支援。
それぞれの事業所が持つ強みと制約。
その中で「誰が」「どのサービスを」担うかを決めるのは、
単なる調整業務ではない。
内部には無意識の“取り合い”があり、あるいは“譲り合い”がある。

ある職員はこう語った。
「うちの事業所ばかりが負担しているように感じる」
「数字が見えた時点で、あの事業所のほうが余力があるはずだと思った」——こうした発言には、現場のリアルな“納得感”の欠如がにじんでいた。

利用者の人生にとっては、
職員の負担感は、大きな意味を持たないかもしれない。
だが、
当の職員にとってはオペレーションの質は深刻だ。

サービスの配置とは、
労働環境の調整であり、組織間の信頼関係の調整でもある。
この問題に直面した時、
私は「最適配置」とは何かを改めて考えた。
利用者満足、職員の稼働率、事業所ごとの戦略、そして財務的な安定性
——それらを全体最適で捉えるには、情報共有と意図の明確化が不可欠だ。

組織間調整コスト(Transaction Cost)という概念がある。
複数の部門が協力し合う際に生まれる摩擦や情報の非対称性、
それをいかに減らすかがカギとなる。
そこで、
示されたのが「稼働率」や「計画達成率」の指標だ。
これによって、
感覚ではなくデータに基づいた判断が可能になり、
議論の土台が整った。
定性ではなく、定量での比較だ。

だが、数字だけでは足りない。
「ここは本当に今、しんどい」
「この案件はこの人でないと難しい」
——そうした“言葉にならない事情”が常にある。

だからこそ必要なのは、
“数値と感情のハイブリッド”によるマネジメントだ。
事業所間の関係性を「競争」ではなく「共創」に変えていくには、
目的の再確認と、互いへの信頼が欠かせない。

ケアの現場における調整とは、単なるリソースの配分ではなく、
「誰と、誰が、どのように支えるか」というストーリーの選択なのだ。

いいなと思ったら応援しよう!

Parker-m. 0401 いただいたチップは学びの営みに使わせていただきます! 応援よろしくお願いします!