リーダーが知っておきたい、職場の心理的安全性を高める3つのポイント
こんにちは。グロービス法人部門 note編集部の澤田です。
「会議で発言を求めても、特定のメンバーしか意見を出してくれない……」
「1on1の場を設けているけれど、本音の相談というより形通りの業務報告で終わってしまう……」
「心理的安全性」という言葉を耳にすることが増えた一方で、自社の現場を見渡したときに、このようなもどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。
前回の記事では、心理的安全性を高めることは、ただの「居心地が良いヌルい職場」にすることではない、という本質をお伝えしました。 メンバー一人ひとりが「自分はここにいていいんだ」と安心できる環境を築くこと。それこそが、それぞれの強みを最大限に発揮し、変化の激しい時代を生き抜く「しなやかで強い組織」を作るための大切な土台に繋がるからです。
とはいえ、人事が「心理的安全性を高めよう!」と発信しても、現場からは「理想はわかるけど、そんな余裕はない」「うちのメンバーはおとなしいから無理だよ」と、綺麗事のように受け取られてしまうことも少なくありません。
そこで今回は、現場のリーダーが「これなら自分にもできるかも」と思え、人事の皆様が「そう、リーダーにこれを伝えたかった!」と背中を押せるような、具体的なアプローチをご紹介します。
心理的安全性を高める鍵は、リーダーによる「日々のリーダーシップ」
心理的安全性が大切なことはなんとなくわかっていても、何から始めればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
「うちのメンバーはシャイだから」「元々おとなしい組織なので……」と個人の性格やこれまでの風土を理由に諦める必要はまったくありません。職場の心理的安全性は、誰かの能力や生まれ持った資質で決まるものではなく、リーダーの「日々の小さな関わり方」次第で、後からいくらでも高めていけるものだからです。
組織の心理的安全性向上には、以下の3つの段階があると考えられています。

1段階目の「構造・環境」は簡単に変えられませんが、2段階目以降はチームのリーダーの関わり方次第で変えていくことができます。リーダーが発言の良し悪しにかかわらず、まずは受け止める雰囲気を作ることで、メンバーも少しずつ自分の考えを言えるようになります。
その結果、率直な意見を言うことが習慣となり、最終的にはメンバーが安心して行動・発言できる風土が生まれてくるのです。
心理的安全性を高めるための4つのステップ
ここでは、リーダーが率先して心理的安全性を高めるための、具体的な4つのステップをご紹介します。
ステップ1:話し合いができる場を設ける
まずは意図的に、気兼ねなく話し合える場を作りましょう。「3か月に1回のランチミーティング」「週に1回の1on1やチームミーティング」などが有効です。
💡ワンポイントアドバイス
「話し合いの場」を設けるときに、大切なのは形式ではなく「お互いの信頼関係」です。
マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」でも、成果が出るチームのスタートラインは「関係性の質」だとされています。
「このチーム、このリーダーなら信頼できる!」という安心感があるからこそ、良いアイデアや本音の意見が生まれ(思考の質)、それが前向きなチャレンジ(行動の質)につながり、最終的な成果(結果の質)へと結びついていきます。
せっかくのミーティングの時間。まずは「お互いを知り、信頼を深める場」にすることから意識してみてはいかがでしょうか?
ステップ2:リーダーから先に「弱み」を見せる
「心理的安全性を高める」というと、リーダーが常に優しく完璧な存在でいなければならないように思えるかもしれません。しかし、本当に必要なのはその逆です。
メンバーの不安をほぐすために、まずはリーダーから「ちょっと困っていて、相談に乗ってほしいんだ」「実は、私も過去にこんな失敗があってね」と、自己開示や相談をしてみましょう。完璧ではないリーダーの姿を見るからこそ、メンバーも「自分も失敗や本音をさらけ出していいんだ」とホッとできるのです。
メンバーが勇気を出して発言してくれたら、「発言してくれてありがとう」「〇〇の視点、すごく良いね!」と、「意見を出してくれたことへの感謝」と「良い部分の受け入れ」からスタートしてみましょう。
💡ワンポイントアドバイス
一方で、悪気が無くとも、忙しい中でついやってしまいがちな「NGな姿勢」には少しだけ注意が必要です。
【NGな姿勢】
・「それは今の状況にそぐわないね」と頭ごなしに否定する
・「他の意見は?」と、出たばかりの意見を流してしまう
・一部の特定メンバーばかりが話す状況をそのままにする
・パソコンを打ちながら目を見ないで話を聞く
忙しいとマルチタスクになりがちですが、メンバーは「私の話は優先順位が低いんだな」と敏感に察知してしまいます。まずは「手を止めて、相手の目を見て聞く」という小さな一歩から、空気を作っていきましょう。
ステップ3:小さな「嬉しい反応」をすぐに返す
人は自分の行動に対してポジティブな「見返り(反応)」があると、その行動をまた繰り返したくなるものです。
意見をくれたメンバーに対して、「〇〇さんの前回の発言のおかげで成果が出たよ、ありがとう!」と具体的にフィードバックしてみましょう。「自分の発言が役に立った」という実感は、「もっと意見を出そう」「ここなら安心して発言できる」という自信につながります。
おおげさな言葉でなくても構いません。Web会議で大きくうなずく、チャットツールでポジティブなスタンプを送るだけでも効果は大いにあります。まずは小さく、嬉しい反応をチームに返していくことから始めてみませんか?
ステップ4:日常のフォローを「仕組み」ではなく「心がけ」にする
特別な話し合いの場だけでなく、日頃からの継続的なフォローがメンバーの安心感を育てます。日常の中で、ぜひ次の「5つの心がけ」を意識してみてください。
1. 大切なことを言葉にする(理解・学習) 「ここでは安心して何でも話してね」という姿勢を言葉やルールにして、チームにしっかり共有します。
2. 変化に目を配る(関係性構築) なかなか発言できないメンバーや、困りごとを抱えていそうなメンバーがいないか、日頃からそっと気にかけておきます。
3. ミスは責めずに次へつなげる(受容) 何か問題が起きても責めるのではなく、「早く報告してくれてありがとう」と感謝を伝え、一緒に解決策を探します。
4. 否定をせず、感謝をベースにする(包摂・感謝) 「やって当たり前」と思わず、まずはメンバーの存在や行動に対して、常に感謝の気持ちを持って接します。
5. メンバーの意思を尊重する(自主性) スケジュールや納期を決めるときなどはリーダーが押し付けるのではなく、「どう進めるのが良さそう?」とメンバーの主体性を引き出す問いかけをします。
リーダーが知っておきたい「3つのポイント」
「ステップはわかったけれど、自分のマインドセットをどう整えればよいのだろう?」と悩まれるリーダーの方も多いはず。そんな時に心の支えとなる「3つの心構え」をご紹介します。
①まずリーダー自身が「しなやか」であること(心理的柔軟性)
心理的柔軟性とは、「思い通りにいかない状況」を冷静に受け止めながら、自分が本当に大切にしたい価値に集中し、効果的な行動をとる力のことです。
トラブルや変化が起きたとき、リーダー自身がイライラしたり、感情的になったりしては、チームの安心感は一瞬で崩れてしまいます。「変えられないもの(他人の行動やトラブル)」をコントロールしようとするのではなく、「今、自分たちにできることは何か」に集中するしなやかさを持つこと。リーダーの心の余裕が、チームの安全基地を作ります。
②「仕事の基準が高い」チームを目指すこと
「心理的安全性を高めると、甘えが生じて目標が達成できなくなるのでは?」という懸念をよく耳にします。しかし、それは誤解です。 心理的安全性の高さと、仕事の基準の高さは両立します。

目指すべきは、誰もが活き活きと目標達成のために率直な意見を言い合える「学習ゾーン」です。ただ優しいだけの「快適ゾーン(ヌルい職場)」に留まるのではなく、「成果を出すために、何でも言い合える関係を作ろう」という高い基準を掲げることこそが、本当の心理的安全性です。
③「無意識の思い込み」(アンコンシャス・バイアス)に気づくこと
「Z世代の新入社員は、キャリアに対して保守的だろう」
「女性社員にこの仕事は難しいだろう」
こうした無意識の決めつけは、メンバーに「自分は受け入れてもらえないのではないか」「壁を作られている」という不安を与えてしまいます。
もしメンバーからの提案や行動に違和感を憶えたときは、「自分に偏見がかかっているかもしれない」と一度立ち止まってみてください。相手の提案の背景にある「本当の価値観」に目を向けることが、信頼関係の第一歩になります。
リーダーに必要な考え方はわかっても、自社のカルチャーや研修にどう落とし込むかが、人事担当者にとってはお悩みの種かと思います。
グロービスでは、組織の心理的安全性を高めるためのリーダーシップ研修や、組織開発に関するご相談を数多く受けています。現状の課題感に合わせて最適なアプローチをご提案させていただきますので、いつでもお気軽にご連絡ください。
次回は、戦略実行に必要な人と組織の姿を定める「人材要件定義」についてお届けします。ぜひご期待ください!
※本記事は以下のコラムの一部を再構成しています。
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