見出し画像

英作文の地力を上げる! 語彙武装編[参]


第3回 似て非なる語(日本語1語に英語が複数ある罠)

第1 はじめに

  第3回のテーマは「似て非なる語」である。
  日本語では「合う」の一語で済むところ、英語では suit / fit / match を使い分けなければならない。「疑う」と言いたいのに doubt と suspect を取り違えると、意味が正反対になる。「面白い」を funny と書いてしまうと、「興味深い」のつもりが「滑稽だ」になってしまう。
  今回取り上げる10組は、いずれも「日本語では同じ1語なのに、英語では厳密に使い分ける必要がある」語群だ。使い分けの基準を知らなければ減点され、知っていれば確実に得点できる。まさに英作文の「守備力」を決める語彙である。
  なお、和文和訳連載との関係でいえば、本回はパターンA(=難しい単語を避けて中学英語で書く安全策)と最も関係が深い。使い分けに自信がないとき、安全に逃げるための代替表現も各語の解説で併記する。

第2 各語の解説

1 suit / fit / match(「合う」の使い分け)

⑴ NG例文
× This shirt fits you.(このシャツはあなたに合う。=似合う、と言いたい場合)
○ This shirt suits you.
  日本語ではどちらも「合う」だが、英語では意味が全く違う。fit は「サイズが合う」であり、suits は「雰囲気や好みに合う=似合う」だ。fit you と書くと、「このシャツはあなたの体のサイズに合う」という意味になる。似合うかどうかは別の話だ。

⑵ 使い分けの基準
  「合う」の英訳は、何が何に対して合うのかで決まる。
ア suit = 「(服装・色・条件などが)人に似合う・都合がよい」
  suit の対象は「人」であり、「好み・雰囲気・条件」が合うかどうかを問う。This job suits me.(この仕事は私に合っている。)のように、仕事や予定にも使える。
イ fit = 「(サイズ・型が)合う」
  fit の基準は「サイズ」だけだ。This shirt fits me perfectly.(このシャツは私にぴったりのサイズだ。)
ウ match = 「(物と物が)調和する・釣り合う」
  match は「物と物」の組み合わせが良いかどうかを問う。Your tie matches your shirt.(ネクタイがシャツに合っている。)のように、2つの物の調和を表す。人に対しては使わない。

⑶ ×○例文の追加
× This color matches you.(色があなたに調和する?)
○ This color suits you.(この色はあなたに似合う。)
  match は「物と物」の調和であり、「物と人」の組み合わせには使えない。「人に似合う」は必ず suit を使う。
  なお、「食べ物が体に合う」は suit でも fit でもなく、agree with を使う。This food doesn't agree with me.(この食べ物は私の体に合わない。)

⑷ 英作文での使いどころ
  京大の過去問では、「能力別クラス編成」の文脈で「教育が個々の生徒に合う」を suit を用いて表現する場面がある。「合う」が出てきたら、suit / fit / match のどれかを反射的に考える習慣をつけよう。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:This educational system suits each student's needs.(この教育制度は各生徒のニーズに合っている。)
逃げ:This educational system goes well with each student's needs.(go well with は「合う」の万能表現として使える。)

2 doubt / suspect(「疑う」の正反対)

⑴ NG例文
× I doubt that he is the criminal.(彼が犯人だと疑っている、と言いたい場合)
○ I suspect that he is the criminal.(彼が犯人ではないかと思う。)
  この間違いは致命的だ。doubt that は「〜ではないと思う」であり、上の×の文は「彼は犯人ではないと思う」という意味になる。彼が犯人だと思っているなら suspect を使わなければならない。

⑵ 使い分けの基準
  doubt と suspect は、日本語では同じ「疑う」だが、英語では意味が正反対だ。
ア doubt = 「〜ではないと思う」
  doubt の核心は「否定的な疑い」である。I doubt that he is honest. は「彼が正直だとは思えない」の意味だ。don't think とほぼ同義である。doubt の後ろには that 節のほか、if / whether 節も来る。
イ suspect = 「〜ではないかと思う」
  suspect の核心は「肯定的な疑い」である。I suspect that he is lying. は「彼は嘘をついているのではないかと思う」の意味だ。think とほぼ同義である。

⑶ ×○例文の追加
× I doubt that it will rain tomorrow.(明日雨が降ると疑っている、と言いたい場合)
○ I suspect that it will rain tomorrow.(明日雨が降るのではないかと思う。)
  doubt that it will rain は「雨が降るとは思えない」という意味になる。「雨が降りそうだ」と言いたいなら suspect を使う。
  覚え方はこうだ。doubt = don't think、suspect = think。これを丸暗記するのが最も確実な防御策である。

⑷ 英作文での使いどころ
  京大の過去問では、物事の真偽について論じる場面が多い。「〜は本当かどうか疑わしい」なら I doubt whether / if ...、「〜ではないかと疑っている」なら I suspect that ... を使う。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:I suspect that he is not telling the truth.(彼は本当のことを言っていないのではないかと思う。)
逃げ:I don't think he is telling the truth.(doubt / suspect の区別に迷ったら、think / don't think で逃げるのが最も安全だ。)

⑹ 和文和訳連載との接続
  和文和訳の極意 第2回「コンピュータは間違えません」で、「コンピュータの正確性を疑う」という文脈があった。「コンピュータが正しいのではないか」と思うなら suspect、「コンピュータが正しいとは思えない」なら doubt。この使い分けを知っているかどうかで、文意が180度変わる。

3 realize / notice(「気づく」の内と外)

⑴ NG例文
× I noticed the importance of health.(健康の大切さに五感で気づいた?)
○ I realized the importance of health.(健康の大切さを理解した。)
  notice は「五感で気づく」であり、「見たり聞いたりしておや?と思う」ことだ。「大切さ」や「重要性」は目に見えるものではないから、notice は使えない。頭で理解して悟る「気づき」には realize を使う。

⑵ 使い分けの基準
ア realize = 「(頭で)理解する・悟る・実感する」
  思考や認識のプロセスを表す。重要性、真相、価値など、抽象的なものに「気づく」場合に使う。
イ notice = 「(五感で)気づく・感知する」
  感覚的・物理的な気づきを表す。見たり聞いたりして「おや?」と思うこと。I noticed a strange smell.(変な匂いに気づいた。)のように使う。

⑶ ×○例文の追加
× I noticed that I was wrong.(自分が間違っていることに五感で気づいた?)
○ I realized that I was wrong.(自分が間違っていたと悟った。)
  自分の誤りに気づくのは、目で見てわかることではなく、頭で理解するプロセスだ。したがって realize が適切である。

⑷ 英作文での使いどころ
  京大の過去問では、「〜のありがたみがわかる」「〜の重要性に気づく」という文脈が頻出する。これらはすべて realize の出番だ。「パンのありがたみが分かる」を realize the value of bread と表現する例もある。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:I realized how important it is to communicate with others.(他者と意思疎通することがいかに重要か悟った。)
逃げ:I understood how important it is to communicate with others.(realize に自信がないなら understand で逃げられる。)

⑹ 和文和訳連載との接続
  和文和訳の極意 第10回「無知の自覚」で、「自分の無知に気づく」という文脈があった。自分の無知は五感で感じるものではなく、頭で理解するものだから、realize one's own ignorance が適切であり、notice は使えない。

4 borrow / use / rent / lend(「借りる・貸す」の条件)

⑴ NG例文
× Can I borrow your phone?(あなたの電話を借りていい?=電話を持ち帰る?)
○ Can I use your phone?(あなたの電話を使ってもいい?)
  日本語では「電話借りていい?」と言うが、英語では borrow ではなく use を使う。borrow は「無料で借りて持ち帰る」ことを意味するため、電話のようにその場で使うだけのものには不適切だ。

⑵ 使い分けの基準
ア borrow = 「無料で借りて、移動させる」
  本、傘、ペンなど、持ち運べるものを無料で借りる場合に使う。
イ use = 「その場で使う(移動させない)」
  電話、トイレ、パソコンなど、その場から動かせないものを使う場合に使う。日本語では「借りる」と言うが、英語では「使う」だ。
ウ rent = 「有料で借りる(または貸す)」
  家、車、DVDなど、お金を払って借りる場合に使う。rent は「借りる」にも「貸す」にも使える点に注意。
エ lend = 「無料で貸す」
  borrow の反対語である。Can you lend me your umbrella?(傘を貸してくれない?)のように使う。

⑶ ×○例文の追加
× Can I borrow your restroom?(トイレを持ち帰る?)
○ Can I use your restroom?
  トイレも電話と同じく「その場で使う」ものだから use が正しい。英作文参考書でも、「電話・トイレ・ペン(その場で使うもの)は use」と明確に指導されている。

⑷ 英作文での使いどころ
  日常的な場面描写で使い分けが問われる。旅行の場面なら「電話を借りる(use)」「レンタカーを借りる(rent)」「傘を借りる(borrow)」のように、同じ「借りる」でも状況によって動詞が変わる。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:I borrowed several books from the library.(図書館から本を数冊借りた。)
逃げ:「借りる」の使い分けに迷ったら、まず「その場で使うだけか」を確認する。その場で使うだけなら use。持ち帰るなら borrow。お金を払うなら rent。この3ステップで判断できる。

⑹ 和文和訳連載との接続
  和文和訳の極意 第6回「海外旅行のトラブル」で、旅先でのやり取りを英語にする場面があった。「電話を借りる」「車を借りる」など、同じ「借りる」でも borrow / use / rent の使い分けが求められる典型的な場面だ。

5 say / tell / speak / talk(「言う・話す」の語法)

⑴ NG例文
× He said me that he would come.
○ He told me that he would come.(彼は来ると私に言った。)
  say は人を直接の目的語にとれない。「人に言った」は tell me that か say to me that とする。ある語法問題集では、say / tell の使い分けの正答率は25~30%台と極めて低い。

⑵ 使い分けの基準
ア say = 「内容」に焦点
  発言内容そのものに焦点がある。say (to 人) that ... の形をとる。say の直後に人は来ない。
イ tell = 「伝達(相手)」に焦点
  「誰に」伝えるかに焦点がある。tell 人 that ... / tell 人 about ... / tell 人 to do の形をとる。tell の直後に必ず人が来る。
ウ speak = 「音声・言語」に焦点
  一方的に話す行為や、言語能力に焦点がある。speak to 人 / speak English の形をとる。
エ talk = 「会話・やり取り」に焦点
  双方向のコミュニケーションに焦点がある。talk with 人 / talk to 人 / talk about 事 の形をとる。

⑶ ×○例文の追加
× He spoke that he agreed.(speak は that 節をとれない)
○ He said that he agreed.(彼は賛成だと言った。)
  speak と talk は that 節を直接とれない。「〜と言った」の内容を that 節で示すなら、say か tell を使う。

⑷ 英作文での使いどころ
  say / tell / speak / talk は基本語だからこそ、語法ミスが目立つ。特に「say+人」の誤りは減点が大きい。英作文では tell 人 that ... を第一選択とし、相手が不明な場合は say that ... を使えばよい。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:She told me that she would study abroad.(彼女は留学すると私に言った。)
逃げ:say / tell の語法に不安があるとき、最も安全なのは「tell+人+that節」の形を死守することだ。「誰に」言ったかが不要なら「say that節」を使う。この2つの基本型さえ守れば致命的なミスは防げる。

6 fun / interesting / funny(「面白い」の致命的混同)

⑴ NG例文
× He is funny.(彼は面白い人だ。=知的に興味深い人だ、と言いたい場合)
○ He is interesting.
  funny は「滑稽な・笑える・変な」であり、interesting(興味深い)とは全く異なる。He is funny. は「彼は笑える人だ」という意味であり、「彼は興味深い人物だ」とは言えない。日本語の「面白い」にはどちらの意味もあるが、英語では厳密に区別される。

⑵ 使い分けの基準
ア fun = 「楽しい(快楽・娯楽)」
  遊び・イベントなど、参加して楽しいことに使う。The party was fun.(パーティーは楽しかった。)
イ interesting = 「興味深い(知的関心)」
  知的好奇心を刺激されることに使う。The lecture was interesting.(その講義は興味深かった。)
ウ funny = 「滑稽な・変な」
  笑いを誘うもの、または「何かおかしい」ものに使う。He told a funny joke.(彼は面白い冗談を言った。)

⑶ ×○例文の追加
× He told a very interesting joke.(知的に興味深い冗談?)
○ He told a very funny joke.(とても面白い冗談を言った。)
  冗談は笑いを誘うものだから、interesting ではなく funny が適切だ。逆に、「興味深い本」を a funny book と書くと「滑稽な本」になってしまう。

⑷ 英作文での使いどころ
  「面白い」と書きたい場面に出会ったら、まず「楽しい?興味深い?笑える?」と自問する。この一瞬の判断が、致命的な誤訳を防ぐ。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:I found the documentary very interesting.(そのドキュメンタリーはとても興味深かった。)
逃げ:fun / interesting / funny の区別に迷ったら、「楽しい=enjoyable」「興味深い=interesting」「笑える=funny」と日本語の段階で意味を絞ってから英語にする。

⑹ 和文和訳連載との接続
  和文和訳の極意 第5回「子供のころの読書体験」で、「読書体験が面白かった」を英語にする場面があった。「わくわくした」なら exciting / excited、「知的に面白かった」なら interesting / interested と、感情動詞の使い分け(ing = 物が主語 / ed = 人が主語)も含めて判断が必要だ。

7 injure / hurt / wound / damage(「傷つける」の場面別)

⑴ NG例文
× I was damaged in the accident.(私は事故で損害を受けた?)
○ I was injured in the accident.(私は事故で怪我をした。)
  damage は「物に対する損害」であり、人には使えない。人が怪我をする場合は injure を使う。日本語では「傷つく」「ダメージを受ける」と言えるが、英語では damage は物限定だ。

⑵ 使い分けの基準
ア injure = 「(事故などで)怪我をさせる」
  事故や過失による身体的損傷に使う。受動態 be injured で「怪我をする」。
イ hurt = 「痛む・(心や体を)傷つける」
  最も広い意味を持つ。肉体の痛みにも精神の痛みにも使える。hurt one's feelings(感情を傷つける)。
ウ wound = 「(武器などで)負傷させる」
  戦争や凶器による意図的な損傷に使う。be wounded in battle(戦闘で負傷する)。
エ damage = 「(物に)損害を与える」
  物に対する被害のみ。The typhoon damaged many buildings.(台風が多くの建物に損害を与えた。)

⑶ ×○例文の追加
× The car accident wounded three people.(事故で3人が武器で負傷した?)
○ The car accident injured three people.(事故で3人が怪我をした。)
  交通事故は武器による攻撃ではないから、wound は不適切だ。事故による怪我は injure を使う。

⑷ 英作文での使いどころ
  「傷つける」と書きたくなったら、まず「物か人か」を判断する。物なら damage、人なら injure / hurt / wound のいずれかだ。次に「事故か武器か心か」を判断する。事故なら injure、武器なら wound、心なら hurt。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:The earthquake injured hundreds of people and damaged many buildings.(地震で数百人が負傷し、多くの建物が損壊した。)
逃げ:迷ったら hurt を使う。hurt は肉体にも精神にも使える最も広い語であり、injure / wound の代用として安全に機能する。ただし物には使えないので、物は damage。

8 habit / custom(「習慣」の個人と社会)

⑴ NG例文
× Japanese people have a habit of taking off their shoes at the entrance.(日本人は玄関で靴を脱ぐ癖がある?)
○ It is a Japanese custom to take off your shoes at the entrance.(玄関で靴を脱ぐのは日本の慣習だ。)
  habit は「個人の癖・習慣」であり、社会全体の慣習には custom を使う。「靴を脱ぐ」は日本社会の文化的慣習だから custom が適切だ。

⑵ 使い分けの基準
ア habit = 「個人の癖・習慣」
  個人的で、しばしば無意識的な行動パターンを指す。He has a habit of biting his nails.(彼は爪を噛む癖がある。)
イ custom = 「社会的な慣習・しきたり」
  集団的で、文化的な背景を持つ行動パターンを指す。It is a custom in Japan to bow when greeting.(挨拶でお辞儀をするのは日本の慣習だ。)

⑶ ×○例文の追加
× He has a custom of jogging every morning.(彼には毎朝ジョギングをする社会的慣習がある?)
○ He has a habit of jogging every morning.(彼には毎朝ジョギングをする習慣がある。)
  個人の日課は habit だ。custom は社会全体の慣習に使う。

⑷ 英作文での使いどころ
  京大の過去問では、「日本人の習慣として」と述べる場面がある。文化論や社会論で「〜という慣習がある」を書くとき、custom を使うことで「社会的・文化的な背景を持つ行動」であることを明示できる。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:It is a Japanese custom to exchange business cards at the beginning of a meeting.(会議の冒頭に名刺交換をするのは日本の慣習だ。)
逃げ:Japanese people usually exchange business cards at the beginning of a meeting.(custom / habit の区別に迷ったら、usually や often で「普段〜する」と書いて逃げる。)

9 number / amount(「量」の可算と不可算)

⑴ NG例文
× The amount of people is increasing.
○ The number of people is increasing.(人の数が増えている。)
  people は可算名詞だから number を使う。amount は不可算名詞に使う。「the number of+複数名詞」と「the amount of+不可算名詞」は鉄則として覚えるべきだ。

⑵ 使い分けの基準
ア number = 「数(可算名詞につく)」
  a large number of students(多くの学生)、the number of cars(車の数)
イ amount = 「量(不可算名詞につく)」
  a large amount of money(大量のお金)、the amount of time(時間の量)

⑶ ×○例文の追加
  ここで、number と amount に関連する重要なコロケーション(語と語の相性)を整理しておく。「多い・少ない」の表現は日本人が最も間違えやすいポイントの一つであり、参考書でも繰り返し警告されている。
  number(数)の多い・少ないは large / small で表す。a large number of ...(多数の…)、a small number of ...(少数の…)。many / few で number を修飾するのは誤りだ。
  amount(量)の多い・少ないも large / small で表す。a large amount of ...(大量の…)、a small amount of ...(少量の…)。

【コラム1 traffic のコロケーション】
  交通量の多い・少ないは heavy / light で表す。
○ The traffic is heavy today.(今日は交通量が多い。)
× The traffic is large / crowded today.
  traffic は不可算名詞であり、「交通の流れ」のイメージで捉える。流れが「重い」(heavy)と渋滞し、「軽い」(light)とスムーズに流れる。「車が多い」と言いたいだけなら、There are many cars on the road. で逃げることもできる。

【コラム2 population のコロケーション】
  人口の多い・少ないは large / small で表す。
○ Tokyo has a large population.(東京は人口が多い。)
× Tokyo has many population.
  population は「人口」という一つの塊として捉えるため、many / few ではなく large / small を使う。「人口が多い都市」は a city with a large population だ。人口を具体的に述べたくないなら、Many people live in Tokyo. で逃げることもできる。

⑷ 英作文での使いどころ
  number / amount の使い分けは、可算名詞と不可算名詞の区別がそのまま問われるポイントだ。traffic や population のコロケーションとあわせて、「数量表現」を正しく使えるかどうかは、英作文の基礎体力を示す指標になる。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:A large number of tourists visit Kyoto every year.(毎年多くの観光客が京都を訪れる。)
逃げ:Many tourists visit Kyoto every year.(a large number of に自信がないなら、many / much で逃げる。最もシンプルな数量表現だが、間違いにはならない。)

10 increase vs raise(「増やす」の自他)

⑴ NG例文
× The price raised.(価格が上がった、と言いたい場合)
○ The price rose / increased.
  raise は他動詞であり、自動詞としては使えない。「価格が上がった」は、自動詞の rise(rose-risen)か increase を使う。ある語法問題集での正答率は76.1%であり、約4人に1人が間違える。

⑵ 使い分けの基準
ア increase = 「増える(自動詞)・増やす(他動詞)」
  数や量がふくらむイメージ。自動詞にも他動詞にもなれるため、汎用性が高い。The population is increasing.(人口が増えている。)/ We need to increase productivity.(生産性を上げる必要がある。)
イ raise = 「上げる(他動詞のみ)」
  何かを高い位置に持ち上げるイメージ。raise your hand(手を挙げる)、raise the price(価格を上げる)、raise children(子どもを育てる)。自動詞にはならない。
ウ rise = 「上がる(自動詞のみ)」
  自然に上がるイメージ。The sun rises.(太陽が昇る。)、Prices rose.(価格が上がった。)他動詞にはならない。

⑶ ×○例文の追加
× The number of accidents has raised.(事故の数が上げた?)
○ The number of accidents has increased / risen.
  raise は他動詞なので、主語が「自ら上がる」場面では使えない。「数が増えた」は increase か rise を使う。
  逆に、「政府が税金を上げた」なら他動詞が必要だから The government raised taxes. が正しい。The government increased taxes. でもよい。

⑷ 英作文での使いどころ
  社会現象の記述やグラフの説明で、「〜が増えている」「〜が上がった」はよく使う表現だ。自動詞・他動詞の区別を間違えると基礎力を疑われる。迷ったら increase を使えばよい。increase は自動詞にも他動詞にもなれるため、最も安全な選択肢だ。

⑸ 攻めと逃げ
攻め:The government decided to raise taxes to fund social security.(政府は社会保障の財源として増税を決定した。)
逃げ①:increase は自他両用だから、迷ったら increase を使えば安全だ。「増える」も「増やす」もこれ一語で書ける。
逃げ②:自動詞で「上がる」と書きたいだけなら go up でも逃げられる。Prices went up.(価格が上がった。)

第3 まとめ

  第3回では、日本語では同じ1語でも英語では使い分けが必要な10組の語を扱った。ポイントを整理しておこう。

  「合う」は suit(似合う)/ fit(サイズ)/ match(調和)。迷ったら go well with。
  「疑う」は doubt(〜ではないと思う)/ suspect(〜だと思う)。意味が正反対。迷ったら think / don't think。
  「気づく」は realize(頭で悟る)/ notice(五感で感知)。重要性への気づきは realize。
  「借りる」は borrow(無料で持ち帰る)/ use(その場で使う)/ rent(有料)。
  「言う」は say(内容)/ tell(相手)/ speak(音声)/ talk(会話)。say+人は不可。
  「面白い」は fun(楽しい)/ interesting(興味深い)/ funny(滑稽な)。致命的混同に注意。
  「傷つける」は injure(事故)/ hurt(広義の痛み)/ wound(武器)/ damage(物限定)。
  「習慣」は habit(個人の癖)/ custom(社会の慣習)。
  「量・数」は number(可算)/ amount(不可算)。population は large / small、traffic は heavy / light。
  「増やす」は increase(自他両用)/ raise(他動詞のみ)/ rise(自動詞のみ)。迷ったら increase。

  これら10組に共通するのは、「日本語の訳語だけで英単語を選んではいけない」という原則だ。英語の使い分けの基準は、日本語の訳語には現れない。「サイズの話か?」「五感の話か?」「個人の話か社会の話か?」と、一瞬立ち止まって考える習慣が、減点を防ぐ最大の武器になる。

  次回(第4回)は「語法の落とし穴」を取り上げる。知っているつもりで語法を間違える基本動詞・形容詞について、「この形はダメ」「この形ならOK」を鉄則として示す。

いいなと思ったら応援しよう!