「暗黒面の寓話・#1:更生プログラム」
(Sub:彼が地球にきたホントウの理由は、、、)
俺は処置室の寝台の上でその処分が実施されるのを待っていた。
《 社会性を学び人格再生を促す重犯罪人更生プログラム:M A N 》
(Mentor of Association in Natural life)
極度に社会性を欠いた重犯罪人に適応されることになった新しい刑罰。
一定の社会性を形成する群生原始生物の一個体の中に精神幽閉されるのだ。
その間、その原始生物の1匹として生きていかなければならない。
当然、群生生物の支配階級ではなく、底辺階級の働きアリにされるのだ。
そうして群れ(社会)の中で地道な役割をこなす生涯を体験することでその意義を認識させるのだという。
俺はあきらめに近い虚ろな気持ちで執行官からの通達を聞いていた。
一通りの通達が終わると、次いで “ハーネス” の装着が始まった。
“ハーネス“ とは受刑者を監督するための装備で、特殊な施術によって受刑者の胸部にインプラントされる監視端末のことである。
受刑者の挙動を常に監視し、更生プログラムの執行状態を管理するための装置だ。
この端末は身体の主要な神経節と接合して身体の状態を隈なくモニターするのと同時に、装着者の神経節に対して不可逆的な働きかけを行うこともできる仕様になっている。
端的に言えば、この装置はいつでも装着者の生命活動を停止させることができるということだ。
俺は胸部の痛みに耐えながら “ハーネス” の説明を聞いていた。
そして、最後の注意事項、“非常事態における緊急避難処置“ について。
>>> 更生プログラムの執行中に不慮の非常事態が発生し、受刑者の生命および所属する生物コロニーに不可避の危険が切迫した場合、受刑者の独自の判断において一時的に原始生物への精神幽閉を解除し、本来の素体に復帰して状況に対処することを許可する <<<
虚ろになっていた俺の意識はその言葉ににわかに収束した。
《 受刑者の判断で精神幽閉が解除できるなら、、 》
《 素体に戻れるのなら、逃亡できるかもしれない!? 》
だが、続く説明が俺の淡い期待を霧散させた。
>>> 緊急避難処置において素体に復帰しての活動許容時間は、
現地惑星における自転周期換算で180秒とする。
この制限時間を超過した場合、自動的に予防措置が発動し更生プログラムを即時に中止させる <<<
“予防措置“、 ”更生プログラムの中止“、
それらの役人的な言葉の指す ”意味“ は無学な俺にも理解できた。
制限時間以内に更生プログラムに復帰しない場合は 、
”逃亡とみなして処刑する”、ということだ。
役人からの説明は続く。
>>> 緊急避難処置発動から150秒経過して、残存時間が30秒を切ると胸部に埋設されたハーネスが赤く点滅して警告音を発し、プログラムへの復帰を促すようになっている。
また、緊急避難処置の発動は肉体にかかる負荷が極めて大きく、発動するたびに寿命が大幅に縮むことになるので注意するように <<<
>>> 今回の更生プログラムの執行は第七辺境管区のソーラー・システムにある第三惑星で実施し、原生する生物群の、、、<<<
もう役人の言葉は俺の耳には届いていなかった。
全ては愚かだった自分のせいなのだ。
かつては誇らしかった全身を覆う赤い入れ墨が、今は思い枷に感じられる。
もう何処にも逃げられない。
俺は辺境の星で原始生物の1匹となって生きるしかないのだ。
