白い自転車とトマトと──電話の向こうのやさしい時間
10年以上前、特別支援学校に3年だけ勤めた。
今、遠く離れた地で、子ども3人と暮らす日々。
そんな中である日着信が入る。
見慣れた番号。
支援学校時代に生徒だったCくんだ。
退職後、コーディネーターの先生から連絡があり、退学されたCくんに私の連絡先を教えてもよいかとのこと。
担任ではなかったけれど、これも何かの縁とつながらせていただいた。
それからしばらくして、何度かCくんからお電話があり、お仕事についたこと、グループホームに入っていること、家族のこと、休みの日に出かけたことなど聞きつつ、元気にしているか確認する時間になった。
当時は物静かな男の子だったけれど、電話口の彼は、快活にお話をする青年だった。
多い時は何度もお電話くださるので、余裕がないと出られないこともあって、付かず離れずの距離感でいたのだけど、最近なんだか面白いことになっている。
Cくんとの電話中、娘が「だれ〜?」と入ってきたことをきっかけに、「ママが学校の先生していたときにいたCくんだよ、こんにちはって言ってみる?」と展開。Cくんと私と小学生3人のグループ通話に発展しているのだ。
ある日の会話がこちら
・・・・
C「こんにちは、Cです。先生、ぼく昨日◯◯に行きました」
私「よかったねぇ〜。最近暑いね。元気にしてる?」
C「元気です」
次女「だれ〜?」
長女「Cくんだよ、ママが先生したときの」
私「Cくんにこんにちはって言ってね」
次女「こんにちは。どこにすんでるの?」
C「あ、こんにちは。ぼくは◯◯にすんでます。」
長男「すきなやさいはなんですかー?」
C「あ、ぼくはトマトが好きです」
次女「わたしもトマトすきぃ〜」
C「あ、先生、僕最近金髪にしました」
私「へぇ〜、おしゃれだね〜」
長男「車何色?」
C「え、えっ…」
私「Cくんは車持ってないよね。お仕事に行く時には、自転車で行ってるの?電車で行ってるの?」
C「自転車です」
長男「自転車何色ー?」
C「白です」
・・・・
素直なCくんは、子どもたちからの忌憚ない質問に気持ちよく付き合ってくれて、時々思い出したように自分の話したいことを話してスッキリする。
各々が話したいことを話したいペースで話して、ときどき私が間に割って入って、皆んなの言いたいこと拾って。
なんだか、いい時間だなぁってじんわりする。
好きだなぁ、皆んなの素朴な想いが交差して。
私が皿洗いとかしてて着信出られない時は、「Cくんから電話あったでしょ、かけなおさないと!」とお叱りを受けたりする。
Cくんとの電話、大事にしてくれてありがとう。
会ったことはないけど、子どもたちの中にCくんはちゃんと存在している。
子どもたちは、まだ「知的障害」って言葉を知らない。
子どもたちにとって、Cくんは障害者じゃなくて、ママの友達なんだろうな。
それも、社会で働く先輩なのだ。
家元を離れてグループホームで暮らす大先輩。
彼との会話を通して、子どもたちは働くということ、そして社会で自立することを知っていく。世の中にいろんな仕事があること、自転車で通勤している人がいること、お給料をもらってお買い物に行くこと、自分の誕生日を自分で祝うこと…。
Cくんは、子どもたちのお手本なんだよ。
かっこいいよ、みんなで応援してるよ!
胸張って頑張ってね。
