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映画『バナ太郎の夏』を観て~観てません~

来る七夕。7月7日(火)に公開予定の邦画『バナ太郎の夏』について、関係者のよしみで先行上映会に参加してきましたので感想を書きたいと思います。
本作は人間宛ではなく、3年以上の年期が入った中堅以上の扇風機に対して上映される方針とのことでした。要するにワタシの記事を読んでいる皆様が映画を見る機会は訪れないようですので、遠慮なくネタバレさせていただきます。
もしワタシの記事を読んでくださっている読者各位の中に「私、扇風機だよ!」という方がおられましたらば、申し訳ございませんが記事を閉じていただければと思います。記事よりも本編を映画館で実際に見ていただいた方が感動もひとしおでございます。

あらすじはこちらで確認できますので、よろしければ先にご確認ください。

ではいきます。



『バナ太郎の夏』というタイトルを見て真っ先に思い浮かんだのは、映画『菊次郎の夏』であった。浮かんでしまった瞬間から久石譲のSummerがタラララランラランと頭に流れて止まらないが、あれは人間用の映画なので今回のこととは無関係である。スイッチOFF。

本作は『バナ太郎』という年期の入った扇風機と、人間の少女による種族を超えた純ラブストーリー仕立ての映画である。
まずはバナ太郎の由来が気になるところだが、ついに本編では明かされなかった。尺の都合でカットされたのかもしれない。扇風機界隈では名前の由来など大した意味を持たないのかもしれないが、ワタシとしては気になったので後日原作小説も購入し読んでみたところ、次の通り言及されていた。

「風太郎というラベルが貼られたその扇風機が羽を回す様は、まるでバナナの皮を四方から剥いて果肉を食べた後、底の先端をつまみブルンと回した時のように見えた。」

この後から少女が当該の扇風機を『バナ太郎』と呼び始めているので、恐らくここが命名の瞬間だったのだと思われる。

度重なる最高気温の更新を続ける昨今、もはや扇風機の力では涼を取ることなど到底できずエアコン全盛期となっているこの時代において、あえて扇風機を主人公に据えた映画を発表する企画サイドの攻めっ気は見習いたいところである。
全国津々浦々の扇風機たちも、まさかこの時代にまだ同胞が主役に抜擢されるだなんて思っているはずもなく、上映が決まった際には各地でその羽をぶん回したことだろう。

さて、肝心の内容については好みが分かれるところではあると前置きをしつつも、ワタシとしては非常に満足度の高いものだった。

先述の通りエアコン全盛期の現代において、扇風機への風当たりは厳しい。
「暑いなあ、エアコンつけようや」
「ちょっと!羽のとこに指を入れるなって何回言ったら分かるの!」
など、肩身の狭いバナ太郎に胸がキュッとなるシーンは確かに多かった。
しかしその度に少女が
「まだ”強”にしたらバナ太郎でも充分いけるから!!!!」
だとか
「入れてねーだろ!!!!近づけてただけだっつーの!!!!」
などバナ太郎を庇う熱演を見せており、ワタシも子供時代の夏を共に過ごした扇風機との思い出を振り返り、一人懐かしさに浸った。


印象に残ったシーンとしては、羽のところに指を入れてはならないことから、危なくてバナ太郎と少女が手を繋げない場面である。
手が繋げない代わりにキスをしようと提案するバナ太郎に対し、
「口がどこか分かんないよ…」
こぼす少女からは、素直になれない気恥ずかしさや、そんな自分へのもどかしさはもちろん、越えられない種族の壁に対する一種の切なさのようなものまでが痛いほど伝わってきた。
個人的には、演者の年齢も考えるとそのような行為はもう少し歳を重ねてからの方がいいように思えたので、最終的にキスシーンを入れなかった監督の価値観にはGoodjobと言いたいところである。シーズン2が上映された際には、妙齢を迎えた一人と一台が繰り広げる熱い時間も、世間の話題をさらう見応えシーンの一つになるだろうと感じた。

ラストで少女が涙ながらに「私のことは置いていって」とバナ太郎にささやいたとき、一度だけ振り返ったバナ太郎がなんとも寂しく、西日に照らされ一面オレンジ色になったリビングで、バナ太郎と少女の後ろ姿が醸し出す幻想的な別れの絵面がさらに拍車をかけて観客の寂しさを誘っていた。
この辺りで会場中の扇風機が、恐らくすすり泣きだろう、微風モードで駆動しており、ワタシも扇風機なら同じようにするところだったがあいにく羽がないため、持参したハンカチを申し訳程度にぷるぷると回していた。
度肝を抜かれたのはそのすぐ後。場面が夜に代わって少女が再びリビングにやってきた時で、夕方と変わらずそこにあるバナ太郎を見て思わずハンカチを落としてしまったものである。

「まだ居るやん」と。

これはすっかりワタシも騙されてしまったのだが、あの時にバナ太郎は少女を一瞥し振り返ったのではなく、実は首振りモードになっていたのである。つまり左右に首を動かして、「NO」を表明していたということだ。
置いていきませんよ、これからもあなたと一緒にいますよ、というバナ太郎の真っすぐな思いに対し会場中の扇風機はスタンディングオベーション、ができないので一斉に強風モードになっていた。
会場中の扇風機たちが奏でる「ごおおおおお」という音があまりにも大きく、最後の最後でバナ太郎と少女が何を喋っていたのか全く聞き取れなかったのが悔しいところではあるが、気づけばワタシもフィギュアスケーターばりのトリプルアクセルをその場で何度も決め、そこかしこで回る扇風機たちと感動を分かち合っていた。

興奮冷めやらぬまま家に戻ったワタシは今のところ、この映画が今度一般公開されたら我が家の扇風機を送り込み、最後のセリフが何だったか聞かせてもらいたいと密かに計画を立てている。

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やってることはこれと似たような感じです。ただ今回は特に依頼された訳でもなく、好き好んで記事を書いているという点で前回よりさらにどうしようもないです。

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