「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖 第二十八話
すると佐々木刑事が、
「教授、慌ててどうされたのですか。」
「色々と分かりました。加藤刑事。弥刀井緑郎さんに心当たりがあるのですか。」
「はい。弥刀井と言えば、銀座でいくつもビルを持っている大金持ちです。」
佐々木刑事が、
「そうか、あそこか。ところで、緑郎って」
「確か孫だと思います。子供は娘だけであったため婿をとり、一人息子を生んだ後亡くなったはずです。今はまだカナダ在住ですが、この前、一時帰国した際に立候補の予定だと言ってネットに出ていました。」
「お前詳しいな。」
「たまたま。別の検索をしていた際に目にしたんです。」
「ところで教授、なぜこの話をあのおばあさんに聞かせたくなかったのですか。」
「もしかすると、私たちが分かった時点で犯行を早めるかも。ただ既に遅いかもしれませんが。直ぐに調べましょう。」
「もしや、この緑郎がターゲットですか。」
「多分そうでしょう。緑朗さんが亡くなれば血筋が絶えるからです。」
「先に電話で緑郎の居場所を突き止めてもらいます。ついでに父親も名前と場所を確認してもらいます。」と言って本部に電話を入れ確認後、折り返しがあるとのことであった。
しばらくすると佐々木刑事の携帯電話がなった。本部からであった。話の内容から安堵しているようであった。
「緑郎は、今はアメリカに留学中ですが、今年の三月に二十五歳になったので、帰国後選挙運動の準備をするとのこと。そして帰国は五月十五日なので無事のようだと、また、祖父は白朗と言い、現在箱根の別荘にいて無事とのことであった。
「取り敢えず、捜査会議の報告は佐々木刑事からお願いします。そして、補足として話しをさせて下さい。」
「分かりました。」
車は西青梅署に着いた。佐々木刑事は前回挨拶ができなかったので、署長に挨拶してから帰りましょうと言い中へ入って行った。三枝巡査が署長室へ案内した。ドアを軽くノックし佐々木だと言って、署長の返事を待つ間(ま)もなくドアを開けた。
全員驚いていた。上席の部屋に入るのに返事もなくあけることはありえない。後ろから恐る恐る付いて行くと、署長が席から立ち上がり、にこやかな顔でこちらに歩いてきた。
「佐々木、久しぶりじゃないか。お前は今回特別班とかで、あの天才の教授と一緒って聞いていたが。もしやそちら様は。」
「その通り、こちらが帝央大の天才、早乙女教授様だ。」
「そのような紹介は恐縮致します。天才だなんておこがましいです。」
「本当の話と聞いております。すみません。ご挨拶が遅れました。署長の正木です。ところで、こいつを本庁に戻していただいたのは、友達としてお礼を申し上げます。でもまあ、よくこんな奴と捜査ができますね。失礼なことをいっぱいしているのではないでしょうか。」
見ると、加藤刑事が佐々木刑事の袖を引っ張っていた。
「すまん。紹介するのを忘れていた。教授の後ろにおられるのが講師兼助手の伊藤さん。こっちが俺の相棒で加藤だ。」
あまりのぞんざいな言葉に、加藤刑事が、
「先輩、こちらは署長でらっしゃるのですから階級が・・。」
「ああ、こいつは警視正だからな。変わったやつで一回地方に行ってみたいとか言って西青梅署に赴任したキャリアだ。ゆくゆくは警視総監も夢ではないやつだ。」
「先輩、いい加減にタメ口はやめてください。」
「心配せんでも、TPOぐらいは分かっとるわ。こいつの部下の前では敬語を使う。」
「その部下が、今、ドアの傍に立っていますが。」
「ああ、こいつは大丈夫。今は俺の部下だから。なっ正木。」
署長が、
「本庁からそう聞いている。精一杯頑張れ。足手纏いにならないようにな。佐々木の元で勉強してこい。」
三枝巡査の「はい。」という大きな声が響いた。佐々木刑事が、それではこれで帰るわと言って、署長室を出て行った。
佐々木刑事は三枝巡査に最小限の身の回り品を持って車まで来いと言った。車で待っていると三枝巡査がやってきた。すごい荷物を抱えていた。
バカやろう最小限と言っただろうと、言われていたが、これでも最小限ですと返していた。取り敢えずトランクに詰めて全員乗った。
動くなり、伊藤さんは独身ですかと聞いてきた。はいと答えていたが、佐々木刑事に、教授の彼女に手を出したら承知せんぞと怒られていた。やっぱりそうか、寄り添い方が違うものな。諦めますと言った。
「私は、いや、それは。」と言ったが、伊藤さんはそれ以上何も話さなかった。と言うことは・・。いやいや。
道中は、私と佐々木刑事の馴れ初めの話で盛り上がった。
途中、食事のためにファミリーレストランに寄った。
三枝巡査が、
「何もないところですみません。唯一あるのがこのファミレスなので、マズくっても勘弁してください。」
するとウエイトレスの女性が、
「しんちゃん営業妨害はやめて。まずいはないでしょ。」
三枝巡査は平謝りで、両手を顔の前に合わせて何度も頭を下げていた。次はしんちゃんのおごりだからと話していた。彼女に近い存在か。
みんなお腹が空いていたのか、食べている時は無言だった。時間があるため食後に飲み物を頼んだ。少し落ち着いてきた。
すると三枝巡査が、今日の(モリノイチ・・)と話し出した瞬間、佐々木刑事からバカもんと怒鳴った。なぜ怒られたのかが分からなかったようだが、そのあと、
「こんな所で捜査の話をするな。誰が聞いているか分からないだろう。
ドラマじゃないんだ。話すなら会議室、車、密閉した部屋だけにしろ。巡査は地域との繋がりが必要な役割から、外で話すことがたくさんあるのは分かるが、刑事はそういうわけにはいかん。存在を消して行動することもある。だから街のお巡りさん的な感覚は捨てるようにしろ。分かったか。」
彼は、はいと答えノートを取り出して書き留めていた。
食事も終わり清算した後、少し早いけれど、私たちも一緒に本庁へ行くことにした。
途中、三枝巡査は、私との一連の捜査を佐々木刑事に詳しく聞いていた。
本庁へ着き捜査会議室へ入ると、水野係長から、
「記者クラブからの突き上げがあり、本日4時から記者会見をする。」と聞いた。
一応、今日の捜査会議よりも先にするということだ。
佐々木刑事に取り敢えずは良かったと思ったと話した。今日の捜査内容はまだ、漏らして欲しくないのが本音だからだ。できれば弥刀井親子を保護して欲しいのと、情報が出過ぎると尻尾を掴む前に逃げられるかもしれない。
そして、何年後かに復習が復活するかもしれないからだ。
今日はまだ、三時なので伊藤さんと警視庁を散策しようと話した。
見るのはツアー用の場所に限ることは承知であるが、佐々木刑事に無理を言って見学させてもらった。
まず、ふれあいひろばの警視庁教室に行ってみた。ここではクイズ形式などで警視庁の活動などを説明するところである。しかし上映時間は既に終わっていた。
次に警察参考室と言って、警視庁の歴史を語る上で重要な部屋に入った。
伊藤さんが、
「色々な事件があったのですね。この事件は覚えています。警察官も犠牲になった凄惨な事件でした。」と言って、長い間、資料を一つ一つ熱心に見ていた。
最後に通信指令センターにやってきた。
「ここはドラマのセットと同じですね。」
「ここは公開されているから、ドラマでもリアルに作られているのだろう。」
一通り見た私たちは、会議室へ向かった。
その時伊藤さんが、
「小学校六年生に消防博物館に行ったことがあるのですが、その時に感じた気持ちと同じ気持ちになりました。」
「どういう気持ち。」
「初めて資料とかを見ましたが、自分を犠牲にしても、いつも国民の命を守っている姿が目に浮かびました。」
「佐々木刑事が聞いたら、泣いて喜ぶよ。」
本当の気持ちですと言っていた。会議室に着くとみんなテレビの前に集まっていた。これから記者会見が始まるみたいだ。
箕島刑事部長、後藤捜査一課長、崎島管理官が着席して始まった。
最初はフラッシュが焚かれしばらく経つと、一瞬静寂が支配し、後藤捜査一課長がマイクを握り説明を始めた。
被害者の神崎さんの名前等の説明後、死因から殺害方法と細かな描写まで話されていた。また、二人目の被害者の太田さんも同じく詳細に説明していた。
そしてこの二つの殺人にはある共通項があるため、連続殺人となったことを話された。
記者達は、その共通項を問いただしたが、それはその人の生命が脅かされる可能性があるため、現在は口外できない。もしも取材で知ることになっても報道は控えて頂きたい。ただ、犯人が捕まれば動機などを解明しなければならないので、その繋がりを説明することになると思うと言われた。
現在も犯人の動機やその犯人の手がかりは分かっていない。現状ではこれ以上の発表はできない。以上で会見を打ち切ると言った。
会場では、捜査はどこまで進んでいるのですか、本当に犯人の目星は付いていないのですかという怒号にも似た声が飛び交っていた。フラッシュが焚かれる中、三人が退場していった。
終了後しばらくして、水野係長が入ってきてマイクを握り、会見がずれ込んだ為、本日の会議は六時半からと発表があった。
佐々木刑事が、
「教授の思惑通り、中途半端な内容で終わったのはよかったですね。」
「そうですね。やっと犯人より一歩先を行くチャンスが来ました。」
