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「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖    第二十五話

 私たちは一時間半かけて西青梅署に着いた。

 佐々木刑事が、
「教授の所へ行った件は一応内緒にはしてやりますが、怒ってはおきます。」と言った。

 駐車場に停めてそのまま署内へ向かった。
 佐々木刑事は、入口の警察官に手帳を見せ、本庁の佐々木ですと伝え、中へ入った。

 佐々木刑事が受付で話そうとするまでもなく、三枝巡査がカウンターの向こう側から、教授お待ちしておりましたと大声をだしながら近づいて来た。

「お隣は佐々木刑事ですね。三枝慎吾と申します。西青梅署奥多摩方面課に勤務しております。」

「聞いている。」

「教授、ご指名頂きありがとうございます。今回の捜査に加わるようにと、先程署長より仰せつかりました。何なりと仰って下さい。」

「こちらこそ宜しくお願いします。先だっては力になれなくて申し訳ありませんでした。それでは挨拶はこれぐらいにして、早速、案内して欲しいところがあります。」

「了解しました。車のキーをとってまいります。」

「車なら乗って来たのがあるからいいぞ。」

「いえ、険しい道もありますので四輪駆動でないと無理でございます。署の車で参りましょう。」

 そう言った後、奥に走って行った。戻ってくると、さあ行きましょうと言って車まで案内された。佐々木刑事が助手席で私は後部座席に座った。

「こうやって呼んでいただいたことを思うと、失礼ではありましたが良かったかと。」

「その件だが、教授の所に勝手に行ったことは聞いている。一応内緒にはするが、教授に捜査の件で迷惑をかけることはご法度だぞ。それに勝手な行動もするな。もしも、守れないようだったら、教授が何と言おうと外す。」

 すみません了解いたしましたと言い、エンジンをかけた。

「まず、ダムに向かって下さい。」と言った。

 三枝巡査は、着くまでの間しゃべりっぱなしで、以前あった時とは感じが違っていた。その中で今日の捜査内容を聞かれたが、先入観を持ったままで捜査して欲しくないので最後にお話ししますと言った。道路はS字カーブが多いが、道は舗装されており苦になるような道ではなかった。

 しばらくして車はダムの堤頂部に着いた。ご遺体があったあたりまで行って下さいと頼んだ。車が停まり私はドアを開けて表に出た。ご遺体の格好は把握しているが、写真ではみることのできない、生の感覚を知りたいと思い一つ一つ思いだしながら正確に教えてほしいと話した。

「まず道路の真ん中あたりで、湖の方を頭にして右向きに横たわっていました。左手は折り曲げて顔のあたりにあり、右手はお腹の方にありました。
 しかし、右手は脈を見たあとにそのように置いたと言っており、本当は、右手は斜め上を人差し指で指差すようにまっすぐ伸ばしてあったそうです。」

「佐々木刑事、報告書にはその記述はなかったですね。」

「ありませんでした。三枝はなぜ知っている。」

「それは。」

「いいから話せ。」

「はい。捜査から外れたあと。自分なりに検証し発見者に聞き込みをしておりました。」

「おまえ、それじゃ分かったのに、報告はしていないということか。」

「申し訳ありません。話していいものかどうかわからなかったので。」

「佐々木刑事、それは仕方ないと思います。捜査に参加していないことから、そのようなことは言えないでしょう。それを聞いて確信に変わりました。」

「何か分かったのですか。」

「全体像が見えただけですが、道筋は分かりました。やっと外堀への進入路が見えました。」

「霧が晴れましたか。」

「晴れました。これから本格的な城攻めです。」と言った。

 三枝巡査は何を言っているのか分からないというふうに横でキョトンとしていた。

「三枝巡査。この辺で一番古くからある村は残っていませんか。」

「小さい村ですが、ございます。」

 佐々木刑事が、「その村が怪しいのですか。」と聞いたが、まだ分かりませんとだけ言った。三枝巡査にそこまで連れて行って下さいと言い、三人はその村に向かった。十五分ほど行くと数軒がまばらにある村に着いた。
 早速聞き込みをしたが、どこの家も水没した二つの村のことは知らないと言うことで、有益な情報は得られなかった。確かに立ち退きから七十年ほど経つ村のことを知っている人はなかなかいないだろう。

「はあ、ダメか。無理か。」と呟いた。

 すると三枝巡査が、村ではないですが小高い山の頂上辺りに五、六軒が塊った集落がありましたと話した。そこは車で行けるのですかと尋ねると、家の前までは舗装されていますので普通車でも大丈夫です。だから四駆であれば十分ですと言われた。三人は車に戻ってその集落を目指した。

 確かに舗装されているが、かなり急な坂を上がって行った。すると道が行き止まりになった。その先は大きな三本の木が立ちはだかり、それぞれの枝が手をつなぎ、この先進入するべからずと言っているようであった。集落はそこで車を止め、左の坂を上がったところにあった。
 ここはまだ、東京都なのにこんな集落があるのかと思った。家は五軒あった。入口から一軒目は、長い間誰も住んでいないかのように障子がところどころ破れており、扉の下の方に蜘蛛の巣が張っていた。

 留守なのか住んでいないのかは分からないが、入口から三軒とも返事はなかった。応対されたのは奥から二軒目であった。子供はみんな都会に出ていき私だけが残ったと話していた。

 私は国立国会図書館で取ってもらったコピーを見せた。この人を知りませんかと尋ねると、おばあさんは、返ってくれと言い、私たちを押し出した。

 車に戻ると三枝巡査が、
「すみません、教授。今写真が見えたのですが、私、その子を知っています」と言った。

 私は、知っているはずがないのですが、と言ったがもしやと思い、
「三枝巡査は、角一神さんを知っているのですか。」

「はい、知っております。高校生の頃なのでもう十五年ぐらい前になるでしょうか。父の駐在所にお母さんと一緒に来られたことがありました。彼女も高校生ぐらいかと。」

「でも、この人はあなたが知っている角一神さんではありません。」

「でもそっくりですが。」

 佐々木刑事が、
「何が何だか分かりません。教授詳しく教えて下さい。」と聞いてきた。

 私は、この写真は約七十年前に撮られたものですと。そしてこの人は、あのダム湖に沈んだ村人で、私の予想では角一神さんのおばあさんじゃないかと思います。そうでなければここまで似ていることはないでしょうと話した。

 そして先程お会いした人は、ダム湖に沈んだ村の子孫かと思うとも話した。

 佐々木刑事が、
「すると、今回一連の関係者は、そのダム湖に沈んだ村の関係者ですか。」

「まだ推測なので断定はできませんが、先程の態度は無意識が表された結果と思います。三枝巡査、この辺りに他に村はありませんか。」

「ありません。」

「では、ダム湖に沈んだ村のことをよく知る人物に心当たりはありませんか。」

「一人おります。」

「お会いできますか。」

「大丈夫です。その人は、自分のじいちゃんですから。」

「それは良かった。すぐに会わせて下さい。」
 
 彼をチームに入れた甲斐があった。


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