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「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖    第十五話

午後二時

 被害者の神崎さんの自宅前で三人は落ち合った。

 さっそく真向かいの家に聞き込みに行った。一人の初老の男性が現れ、「佐々木さん」まだ何か話が、と少し不機嫌に言った。
 ここは佐々木刑事がうまくとりなしてくれた。

 ここが突破口と思い、直球勝負に出た。

「すみません、私は帝央大学で教鞭をとる早乙女と申します。」と名刺を差し出した。

 彼は、名刺を貰った後、顔を上げて私を斜に見ながら樋口ですと言い、それで何か追加の質問ですかと聞いてきた。

「昨日、こちらの刑事さんが頂いた録画のUSBですが、それに映っていたのは犯行当日の録画に間違いはありませんか。」

「間違いはないよ。犯行当日の録画です。佐々木さんもコピーするところを見てたよね。」

 そうですか、ご協力ありがとうございましたと言い、その場を後にした。
 
 道路に出てロダンになった。この時はすぐに気が付き加藤刑事が次はどこでしょうと言うので、念のために確認のためにと言い、地図を出して被害者宅の南へ下った道のつき当たりのアナログ式防犯カメラの家を指差した。

 歩いて行くと、二・三分ぐらいの距離であった。チャイムを鳴らすと初老の方が不機嫌そうに出てきた。
「刑事さん一昨日来たばかりじゃないですか。まだ何か。」と言った。

 しかし、同じ内容の質問に決定的な差がある回答を得た。私は二人に早々に引き上げましょうと言った。

 三人が車に乗り、すぐに動き出した。その場を離れた途端、佐々木刑事が話した。
「教授、先ほどロダンになっていましたよね。」

「そうですね。よくおわかりで。」

「伊藤さんほどではないですが、教授のことはそれなりに。」

「では、失礼を承知でお聞きします。」

「何でしょう。」

「当然、聞き込みで捜査の情報を話すはずはないですよね。」

「もちろんありません。世間に知れているのであればいざ知らず、全くと言っていいほど内容には触れずに聞き込みをします。」

「すると、神崎さんが誘拐されて殺されたことなどは言いませんよね。」

「それはありえません。神崎さんの捜査は知事直々の案件でもありますし、新聞報道は控えてもらっていますから、世間では知られていないはずです。知っているのは家族だけであり、当日の朝のヘルパーさんもまだ知りません。誰が犯人かわかりませんので、ホームヘルパーの会社には入院するので休みますと言ってもらっています。

 先生に言われていたので、鑑識の捜査も少し離れた場所に車を止めて家に入ってもらいました。だから一般の人が知る由もありません。もしも何かを感づいたとしても、詳細を知ることは決してありません。」

「やはりそうでしたか。たぶん、いや、確実に真向かいの家の方は何らかの役目を果たしている人だと思います。」

 二人とも、驚いた。

 佐々木刑事は、
「あの樋口さんがどうしてですか。とても親切で、録画を自ら提供してくれていたのに。それに、何も映っていませんでした。」と言った。

「そこですよ。普通、何の事件かも分からないのに家まで上げて、アナログ式でハッキングできないことを知っているかのように録画を見せている。

 そして何もないことを確認させて、USBに保存までして渡している。これは私達をミスリードするためのものでしょう。

 それだけではなく、犯行当日の録画と聞いた後、犯行当日の録画ですと言い返しました。

 しかしその後の聞き込みで他の人は、犯行当日の件をもう一度聞かせて下さいと話すと、犯行って何があったのですかと聞いていました。普通は犯行当日と聞かされたら何の事件があったかと聞くものです。」

「そうか、初めから知っていたのか。私はまんまとミスリードされていたのか。じゃ、引っ張りましょう。引き返します。」

 私は、慌てて制止した。というのも、樋口さんが全貌を知る仲間であればいいのだが、単に指図されているだけの気がしたからだ。

 少なくとも利用されている可能性が高い。考えられるのは、お金か何かそれに準ずるものに左右されていると思うと話した。

 だから、事情聴取でもされれば真犯人に知られることになり、逮捕が遠のくことになる。その事を佐々木刑事に話し、事情聴取しなくとも逃走経路は分かりましたと言った。

「みなさん、一旦大学に戻りましょう。」と言うと、二人は頷いていた。

 車は大学へ向かった。佐々木刑事は大学に着くと、駐車場に停めに行きますと言い、二人を校門の前で降ろし、大学の駐車場に向かった。

 二人でキャンバスを歩いていると、前方でビラを配っている学生がいた。

 篠山君だ。私と目が合ったが、土曜日の午後に私がいるとはという様子で、顔を下に向けたまま足早に中央棟の校舎の方へ消えて行った。ビラをもらっていた学生が私を見つけてそばにやって来た。

 教授こんなビラを配っていましたよと言って渡してくれた。見ると私の幾つかの論文の言葉を切り取りし、【注意】と赤字で書いて非難とも取れる文章が書いてあった。加藤刑事がそれを覗き込んで読んでいた。

「教授、これは少し度を越していますね。正式に学内で問題提起されてはいかがですか。教授としての立場からも名誉毀損に当たると思いますが。」

 確かに度を越しているかと思うと言い、ロダンになった。

 教授と呼ぶ佐々木刑事の声で戻った。待っていてくれたのですかと言ったが、加藤刑事が先程の件を話した。けしからんやつですねと怒っていた。私は少し考えさせて下さいと言い、それよりも、さあ研究棟へ行きましょうと言った。

 部屋に入るとホワイトボードに行き、
⑭番目に、被害者自宅の真向かいの樋口さんは仲間なのか、それとも踊らされているのか。
⑮番目に、なぜ佐々木刑事をミスリードしたのか。
と書いた。

 佐々木刑事が、
「教授、⑭番目は分かりますが、⑮番目の私をミスリードしたのは、なぜというのはどういうことでしょうか。」

「それは樋口さんが佐々木さんを見つけた時に、刑事さんやお巡りさんと言わずに、佐々木さんと言ったのを覚えていますか。

 あらかじめ佐々木刑事が佐々木刑事だと刷り込まれていなければ、一回あったぐらいの刑事さんを苗字で呼ぶことはありません。

 多分、私とタッグを組むのは佐々木刑事しかいないと読んでいたのでしょう。だから、佐々木刑事の顔が頭の中にあったのだと思います。」

 加藤刑事が、
「だからあの時、二番目に聞き込みした家は、念のためと言われたのですか。」

「これで教授と一緒に解決していく気になっただろう。」

「佐々木先輩の言う通りでした。奥底に眠る、えっと・・。」

「深層心理だ。」

 加藤刑事は勉強になりますと言っていた。また、教授の深層心理を読み解く方法も今後の捜査に取り入れるべきですと言ってくれた。

 私は、一人でも理解していただける人が増えて嬉しかった。その後、三人はソフアに座り、テーブルに地図を広げた。

 佐々木刑事が、
「ところで教授、逃走経路が分かったとのことでしたが。」

「分かりました。まず、車は神崎さんを誘拐した後、北へ向かい、どんつきを右へ進んだ後、二筋目の四つ角を右へ。そして、一筋目の四つ角を今度は左へ行き、そのまま真っ直ぐに国道へ出たはずです。」

「でも教授。二筋目の四つ角を曲がらなくても真っ直ぐ行けば、全てネットワーク式の防犯カメラですが。」

 しかしと言い、その先の国道の手前に新聞屋さんがあることを話した。すると、そこもネットワーク式ですが、と言ったので、新聞屋さんの朝は早いですと言ったとたんに気付いたようだ。

 そう、人に見られる可能性がその道にはあるからだ。理解できた佐々木刑事はさすが天才早乙女教授と言った。

「ところで、ここから国道に出たと思われるので、ブロックの外の向かいの右側と左側のアナログ式防犯カメラをチェックして下さい。よろしいでしょうか。」

 二人は、分かりましたと言うと、急いで部屋を出て行こうとした。出て行く前に、次の会議は、明日日曜日の十時でお願いできないかと言い、伊藤さんには私から伝えますと話した。二人もその時間を承諾し、それじゃ私たちはこれでと言って部屋を出て行った。


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