スマホを失った私が、もう一度人と繋がるまで
スマホが使えなくなったのは、ちょうど自己破産の手続きを始める直前の頃のことでした。
それ以前からスマホの料金滞納を繰り返していて、何回もスマホの契約を新しく結びなおしましたがそれも限界がきて、
もう電話は使えなくなっていて、
その後は、別契約のモバイルWi-Fiだけはかろうじて使えていたので、それを頼りに生活していました。
当時のわたしは、電話が使えなくなるということ自体には、焦りや不便さへの不満と同時に、とてもほっとする気持ちも感じていました。
電話が使えなくなる前から、電話が鳴ること自体が憂鬱になっていたからです。
スマホ料金の滞納をはじめとして、もっとずっと前から滞納しているその他の借金などについても督促の連絡がくることはわかっていたので、
当時は知らない番号を見るだけで身構えてしまうような状態で、着信音そのものが怖くなっていました。
だから電話が使えなくなったこと自体はもういいやと完全に開き直っている時期もありました。
けれど、モバイルWi-Fiすら使えなくなるとなると思うと、焦りのほうが大きかったので
どうにかモバイルWi-Fiの料金は払おうとしたけれど、
そうこうしているうちに、銀行の口座が差し押さえで凍結されて、口座からの支払い自体が困難になりました。
モバイルWi-Fiも使えなくなってしまう、それはさすがに困るし、
なにより銀行の口座が使えないという、人生で初めての経験で、恐怖でパニックになってしまいました。
それまでは、周囲の人たちから自己破産の手続きを勧められても拒否していたのですが、
もうそうも言ってられないと思い、自己破産の手続きを始めました。
電話を再度使えるようにしよう、と思い始めたのは、この自己破産の手続きがきっかけです。
というのも、破産の手続きには細かい確認が必要なこともあって、電話が使えないと手続きが進められません。
電話も怖いけれど、督促に怯える日々も限界だったので
自己破産の手続きをしてくれる法律事務所の方とどうにかして連絡を取らなければ、と思いながら
どうやって電話を復活させればよいか、最初は途方に暮れていました。
かなり精神的にいっぱいいっぱいだったので、その精神状態も含めてどうしたらよいかわからなかったのですが、
以前からお世話になっている生活保護のケースワーカーから、以前、「『誰でもスマホ』という審査は関係なく契約できるスマホ会社がある」と聞いていたことを思い出しました。
最初にその話を聞いたときは、やはり電話が鳴るのが怖い時期だったので聞き流していたのですが、
今は電話が必要だと思い直し、勇気を出して再びそのケースワーカーに頼ってみたところ
そのケースワーカーはとても親切な方で、契約手続きも手伝ってくれました。
わたしはその時、非常に疲れていて、自力で申し込みまでできそうになかったので、
区役所に足を運んで、
ケースワーカーにパソコンの画面で『誰でもスマホ』のホームページを開いてもらい、
「この料金設定だと、3GBなどのプランよりも、きっと30GB以上がお得だよね」など相談しながら2人でプランを決めて、
そのまま、ケースワーカーのパソコンで契約の申し込みをしてもらいました。
初期手数料を自分でコンビニで払い込んだあとは、程なくして電話が使えるようになったと記憶しています。
その時は、番号が持てたというだけで、生活の見え方と、実際の生活のあり方が大きく変わりました。
まず、法律事務所と連絡をスムーズに取ることができるようになったのが、大きかったです。
破産手続きを始めたことで、督促の電話はなくなり、精神的に非常に楽になりました。
電話番号を持てたことで、凍結された口座とはべつの口座を開設できたので生活上の不便もなくなり、
やがて元の凍結口座の差し押さえも解除されました。
それでも、
料金滞納を繰り返してしまう金銭管理能力の低さや、生活の経済状況そのものが、
電話を持っただけですぐに改善するわけでもなく、
破産の手続き自体も続いていたので、気持ちの揺れはそのまま残っていました。
びくびくしつつも手続きを一つ一つ進めていく毎日は
生活がまとめて順調に整っていくというよりは、ばらばらの要素を一つずつ処理していくような毎日でした。
お金のこと、これからのこと、人に頼ったり何かを質問したりするのが苦手な自分の性格。
それぞれが別々に存在していて、どれも一気に片付くものではない状態でした。
そんな中でも、連絡が取れるという一点は、わたしが自分で自覚している以上に、とても心強いことだったようだと、今は思います。
携帯が持てなかった間は、世界から切り離されているような感覚が強かったのですが、番号があるだけで、その感覚が少しだけ薄れていきました。
自己破産という、誰かに頼らずにはもう先に進めないような状況で、電話で連絡すればいつでも助けてくれる人がいる。
そのことが、わたしのメンタルを上向きにさせてくれていたような気がします。
免責が確定するまでは完全に安心できたわけではないけれど、「連絡がつく」という状態が、次の段階へ移るための最低限の足場になっていました。

近所の植物などを見ていました
その後も手続きが続くなかで、孤立している感じは徐々に弱くなっていきました。
法律事務所の方に伴走していただいて家計簿などをつけることで、自然に家計も整っていって無駄な出費も減り、
そうした改善傾向も認められて、破産手続き開始から半年ほどで免責が確定して、借金や料金滞納の一切ない、落ち着いた生活を初めて送れるようになりました。
破産にかかった期間は、最初に法テラスに相談しに行ったときからおよそ1年弱、
費用は生活保護受給者のため全額免除でした。
わからないことに関しては、法律事務所の方々や破産管財人の方も非常に親切に教えてくれたので、
手続きが無事に済むかは不安だったけれども、破産開始前に恐れていたほど、怖い場面はひとつもなかったように思います。
破産開始以前とは違って家計の管理もできるようになり、督促などにもびくびくせずに済むようになったことで、
以前はほとんど引きこもってどこにも出かけなかったけれど
いまでは趣味の喫茶店巡りなど、ささやかな楽しみも取り戻すことができました。


ほっとして、写真を撮る前に手を付けてしまいました
もしかしたら当時のわたしは、お金で困っていたというよりも人との繋がり方がわからなくて困っていたのかもしれません。
他の人との繋がりが怖い、という気持ちと矛盾するようだけれども、
お金で問題を抱えることで、結果的に人との繋がりを求めていたような、
こじれた悪循環の中にいたのかもしれません。
そう思うと、あの当時、ケースワーカーや法律事務所の方たちに伴走してもらいながら、
「ひとりでなんとかするため」ではなく「外界と再度繋がるため」に携帯を再契約できた、ということが
わたしにとってのリスタートの、いちばん決定的なきっかけだったのかもしれない、と思うのです。
