弱みは、直さなくていい
「対象別・学びの階段」、第4回。
前回は、「できない」の後ろに「まだ」をつける、というマインドセットの話だった。今日は、その「まだ」を、もう一歩、明るい側から捉え直したい。つまり、「直すべき弱み」ではなく、「もともと持っている強み」の話だ。取り上げるのは、マーカス・バッキンガムさんとドナルド・クリフトンさんの『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』。いわゆるストレングスファインダーの本だ。
私たちは、子どものころからずっと、「苦手を克服しなさい」と言われて育つ。通信簿でも、5が並ぶ教科より、2がついた教科のことばかり話題になる。だから社会に出てからも、つい、自分の欠けているところばかりを見て、そこを埋めようとしてしまう。
でも、この本は、はっきりと逆のことを言う。弱みを一生けんめい直しても、たどり着けるのは、せいぜい「人並み」まで。それよりも、もともと持っている強みに時間を注いだほうが、ずっと遠くまで行ける、と。
ここで言う「才能」は、きらびやかなものではない。自分では意識もせず、つい繰り返してしまう、考え方や感じ方のクセのこと。放っておいてもやってしまうこと。やっていて、時間を忘れること。人には難しそうに見えるのに、自分には妙に簡単にできてしまうこと。それが、才能のありかを教えてくれるサインだ。
じつは私自身、この考え方に、ずいぶん助けられた一人だ。
前にも少し書いたけれど、私は長いあいだ、自分の内向的な性格を、恥ずかしい弱みだと思っていた。飲み会で場を盛り上げるのも苦手だし、大人数の中では、いつも居心地が悪い。「社会人なら、もっと社交的にならなければ」と、ずっと自分を責めていた。
ところが、ストレングスファインダーを受けてみると、私の上位には「内省」や「戦略性」といった、考えることにまつわる資質が並んでいた。診断結果には、こんなことまで書いてあった。あなたは静かに一人で考えるのが自然な人だから、まわりからは「孤立している」「無関心だ」と誤解されることがある、と。
その一文を読んだとき、正直、ほっとした。誤解されていたのは、私の欠陥のせいではなかった。ただ、自分の頭のつくりが、そういうふうにできていただけだ。そして、その「一人で深く考える」性質こそが、じっくり本を読み、こうして書き、経営者と一対一で深く向き合う――今の私の仕事の、いちばんの土台になっている。
弱みだと思って隠していたものが、じつは、いちばんの強みの入り口だった。順番を、まるごと取り違えていたのだ。
だから、新入社員や、若手のあなたに伝えたい。
配属された部署で、まわりの同期がやすやすとこなしていることが、自分にはうまくできない――そういう場面は、これからいくらでも来る。そのとき、その一点を血眼になって直そうとする前に、一度、逆を向いてみてほしい。「自分が、苦もなくやれてしまうことは、何だろう」と。
数字を眺めているのが好きな人もいれば、人の話を聞くと、なぜか安心するという人もいる。段取りを組みはじめると燃える人もいる。地味で、当たり前すぎて、自分では価値に気づいてすらいないもの。それこそが、あなたの「才能」かもしれない。
もちろん、弱みを完全に無視していい、という話ではない。仕事に致命的に差し支えるものは、人の力を借りたり、仕組みでカバーしたりして、「足を引っぱらない」程度には整えておく。でも、そこに人生の大半の時間を注ぎ込むのは、もったいない。その時間は、あなたにしかない持ち味を、もっと尖らせることに使ったほうがいい。
この本には、巻末のコードで実際に自分の資質を診断できる仕掛けがついている。新入社員のうちに一度、自分の「得意の輪郭」を知っておくと、この先のキャリアで、無理に別の自分になろうとして消耗することが、ずいぶん減るはずだ。
かつて、内向的な自分を「直すべき欠陥」だと思い込んでいた私が言うのだから、たぶん、間違いない。あなたが、ごく当たり前にやってのけてしまうこと。そこに、まだ自分でも気づいていない、いちばんの武器が眠っている。
――「対象別・学びの階段」第4回。ここまでの土台編は、心・不安・成長・強みと、いわば「自分との付き合い方」をめぐってきた。次回からは、それを土台に、「人との関わり方」の一冊へ入っていきます。
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