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【読書録】ハン・ガン『すべての、白いものたちの』

ハン・ガンがノーベル文学賞を受賞した。
仕事から帰宅して、急いで本棚から『菜食主義者』(きむ ふな[訳]、CUON)を引っ張り出し、表紙を撫でた。とても嬉しかった。妻に「ノーベル文学賞を受賞したの、この本の著者なんだよ」と伝えたが、彼女は文学にあまり興味がないので喜びを分かち合えなかった。

翌日、話題の種にしようと職場にその『菜食主義者』を持っていくと、向かいのデスクの同僚が「誰か興味あるかなと思って」と『すべての、白いものたちの』(斎藤真理子[訳]、河出書房新社)の単行本を持ってきていた。
週が変わって、出張校正でしばらく不在だった隣のデスクの同僚は「ちょうど読んでいたところだった」と『ギリシャ語の時間』(斎藤真理子[訳]、晶文社)を携えていた。良い職場に恵まれたな、と思った。

흰(THE WHITE BOOK)

向かいのデスクの同僚から『すべての、白いものたちの』を借りた。傷つかないように、不要となったコピー用紙をブックカバーにした。真っ白になった。仕事帰りの電車に揺られながら読んだ。白い栞紐も揺れていた。

作中に登場する、「しなないでおねがい」という言葉が何度も頭のなかでリフレインする。漢字を使わない韓国語、原作ではハングルのみで書かれているだろうこの言葉が、日本語に訳されひらがなとなって、悲しく、優しく、白く、心に突き刺さる。

日本と韓国、韓国と日本。彼此の歴史的/政治的な軋轢がこういった普遍的な悲しみを湛えた作品と繊細な訳業の力により、文化的に乗り越えられたらな、と夢想する。全ての翻訳者に敬意を表す。

ハン・ガン[著]斎藤真理子[訳]『すべての、白いものたちの』(河出書房新社;2018)

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