大島紬の証紙あれこれ
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本日のお題:大島紬の証紙あれこれ
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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毎年5月ってこんなに暑かったっけ…。昨日なんて地域によっては30度を超えてたところもあるとか…。5月でこんなに暑かったら12月になったらどうなるんやろ…って毎年このネタ書いてますよね、すいません汗
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追記:このセールは終了しております。
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■大島紬の証紙あれこれ
今週のお題は「大島紬の証紙あれこれ」です。
大島紬、憧れですよね、特に今の季節は真綿の紬を着るのはちょっと暑苦しく見えるので大島紬のような生糸を使ったすべすべした風合い(語彙)の紬がとても肌触りが良くお勧めです。今年は特に5月でもまだ下旬だというのに30度近いような気温ですから少しでも涼しそうな風合いの生地を選びたくなってしまいますよね。
最近ではあまり聞きませんけれど、6月の単衣の時期は大島紬、9月の単衣の時期は結城紬などという方がおられました。6月はすべすべした風合いの涼しげな大島紬、そして9月は空気を含んで暖かくなる結城紬…と言いたかったんでしょうけれど、最近は残暑が厳しくて9月でも汗ばむくらいですから生糸の大島だの真綿の結城だのでごちゃごちゃ言ってるんじゃなくて、もう夏物を着ていいんじゃない?という風潮になってきたからでしょうか。
ところで先ほどからサラッと書いていますが、実は大島紬は生糸で作られておりますので「紬」ではございません。正確にいうと「大島絣」というべき織物です。このメルマガを読んでおられる方でしたら大島紬の生地を触ったことがある方がほとんどだと思いますが、一般的な紬の風合い…節のあるざらざらした生地とは全く違いますよね。
実は大島紬は今でこそ生糸を使った織物ですが、昔はその名前の通り紬糸を使っておりました。かなり昔のことなのでリアルタイムで見てきたわけではないのですが、いろんな話を総合いたしますと、大島紬は非常に緻密な絣を縦横で合わせるので紬糸では大量に生産できない為、均一な太さで絣を合わせやすい生糸に変えたらしいです。しかしながら「大島紬」という名前はそのまま残った為、紬糸を使っていないのに紬という名前の謎の織物が出来上がりました。
今でもリサイクル市場にごくたまーに出てくるかなり古い大島ですと紬生地のものを目にすることがあります。この辺の時代のものはもう糸が朽ちて袖に手を通すとバラバラになってしまいそうな気がするので仕入れは敬遠してしまいますので当店ではほとんど置いていないですが、もし他のリサイクル屋さんで見かけた時にはちょっと引っ張って生地が弱っていないか確認してから購入してください…って売り物にそんなことしちゃダメですよ。
大島紬は組合が非常にしっかりとしていてしっかり検品をして一定の要件を満たした反物に証紙が添付されます。これは不正防止のために一切再発行はしてもらえません。呉服店で在庫として保管している間に何らかの理由で証紙が剥がれて無くなった、なんて場合でも問答無用で再発行なんてしてもらえません。
この大島紬の証紙は大きく分けて3種類あります。地球印の本場奄美大島産、旗印の鹿児島産、そしてちょっとマイナーではあるんですが鶴印の宮崎産。元々は本場奄美大島の地球印から旗印が派生したと誤解されていることが多いのですが、実は旗印がオリジナルです。
第二次世界大戦で連合軍はソロモン諸島、フィリピンなどを経て沖縄に攻め入りました。当時は飛行機の航続距離が短かったためニューギニアから北上して飛び石のように島に基地を作って補給しながらでないと日本に到達しなかったのです。そして本土決戦への足がかりになったのが沖縄で、大激戦地になったのはみなさんご存知だと思います。
奄美大島も上陸作戦こそなかったようですが艦砲射撃と空襲で甚大の被害を受けました。当然大島紬の織元も無事な訳はなく、奄美大島を離れて鹿児島(九州南端)に疎開した方も多く、そこで大島紬の火を消すまいと細々と作られていました。
そして終戦。
奄美大島は激しい攻撃によりボロボロになりましたが、島の人々の粘り強い努力で少しずつ大島紬は生産されるようになります。しかしながら連合軍の占領下、日本国旗を使う旗印の証紙を使うことを禁じられたため、地球印の証紙を作って新たに「本場奄美大島紬協同組合」が発足し現在に至ります。
大島紬は日本全国の紬の組合の中でもトップクラスにしっかりとした組織になっており、その証紙も厳格な検査を経て貼付されますので消費者としては安心して購入できる織物の一つと言えるでしょう。検査員が反物幅から長さ、その他いろんな要件をチェックして合格して初めて証紙が貼付されて出荷されます。この証紙は厳密に管理されており、先ほど書いたようにたとえ在庫の大島紬の証紙が何かの不注意で破れてしまっても再発行はしてもらえません。
証紙と反物で貼り替えの不正ができないように、証紙が貼られたらパンチ穴を空けられて、証紙と反物のパンチ穴が揃っていなければ貼り替えられたと見なされるぐらい厳密に管理されています。
近年では奄美大島産の地球印のものは大島紬商品履歴システムが作られ、証紙についている製品のシリアルナンバーを入力すると製造履歴や生産に携わった人の写真入りプロフィールなどが閲覧されるようになっています。これ、すごくいいシステムだと思うのですが、なぜか本場奄美大島紬のサイトにはリンクが貼られていなくて、当然表示もされていなくて多分呉服屋でもほとんど知られていない謎のシステムなんですよね…。もうちょっとアピールして生産者の顔の見える紬として売り出せば面白いと思うんですが…。気になる方は「大島紬商品履歴システム」で検索していただければトップに出てきます。この10年ぐらいの間に作られた大島紬をお持ちの方は証紙についているシリアルナンバーを入力してくださったら面白いですよ。
ところで大島紬として認定される要件ってどんなものがあるかご存知でしょうか。実は「大島紬」の要件は意外と少なく「絹100%で平織りの先染織物」ということだけらしいです(注)。平織りってのは一番単純な縦横で織られてるもの、先染は糸の段階で染められてから布にするというものです。ですので紬糸を使おうが生糸を使おうが「大島紬」として認定されますし、撚りの強い糸を使った、ザラザラとしたかなり変わった風合いの「リング大島」なんてのも流通しています。大島紬で花織や綾織など地模様の入っているものは存在しないのはそういうわけなんですね。
注:20年以上前に大島紬の職人さんから聞いた話なので、もしかしたら今は変わってる可能性もゼロではありません。
いやいや、ちょっと待って、大島紬の証紙がついた後染の訪問着ってあるよね?あれは偽物?と思った方、鋭いです。はい、確かに後染の大島紬はたくさん販売されてますよね。確かに大島紬の証紙が貼られているから偽物でもなさそうです。
解説いたしますと、大島紬の訪問着などに代表される後染の大島紬は白生地で出荷されて京都などで染められていますが、この白生地は完全な真っ白ではなく、あとで別の色を載せても影響が出ない程度のほんの少し薄ベージュに「先染」されています。「絹100%で平織りの先染織物」という要件はクリアしているのでその段階で証紙が貼付されて「白生地」として出荷され、京都などでもう一度染められて消費者の手元に届きます。
うーん、なんだか抜け道というか変化球というか…。まあでもあの証紙に価値を見出す方は多いので販売戦略上仕方のないことかもしれませんね。
ところで先ほど「大島紬の証紙は貼り替え防止のためにパンチ穴が空けられています」と書きましたが、後染の大島紬に限ってはほぼ100%貼り替えられているのをご存知でしょうか。
京都の染屋さんが白生地のメーカーから生地を大量に仕入れて1反ずつ染めるのですが、染める時には大量の染料や水をくぐるため、証紙がついたままで染めるとボロボロになってしまいます。ですのでやむなく一旦証紙を外して大切に保管、染め上がった後に再度貼付して出荷されます。ただ、この反物についていた証紙はこれ、あの反物についていた証紙はこれ、なんていちいち元の組み合わせで合わせてられないので、同じメーカーから仕入れたもので証紙の内容は全く同じなので元の組み合わせは関係なく貼り付けられます。
ですのでもし後染の大島紬の証紙をお持ちでしたら確認してみてください。おそらく高い確率で証紙と反物のパンチ穴があっていない=一旦剥がされて別の生地についていた証紙がつけられているはずです。
地球印の奄美大島産の大島紬は後染のものは存在せずおそらく全て先染、鹿児島産のものはブルーラベルが手織り、オレンジラベルが機械織りになります。今回お話しした後染のものは手織りのような手間をかけても仕方ないのでオレンジラベルの機械織のものが使われます。後染の大島紬はおそらく100%オレンジラベルですので機会があれば注意してみてくださいね。
最後になりますが、本場奄美大島紬のサイトによりますと令和5年の生産反数(鹿児島県産を含まず)は2633反、令和6年は2357反と年々減っています。昭和の時代にかなり大量に作られたため、リサイクル市場では他の紬に比べて手に入りやすい価格になっていますがこの生産反数を見るとこれから先も安価で手に入るかといえば決してそうは言えず、希少織物の仲間入りをするのもそう遠い話ではないように思います。
新しいものを買って頂いて産地を応援していただきたいのは当然ではありますが、決して安くはないものですしなかなかそうはいかないと思いますので、もし大島紬をお持ちであればぜひとも大切にしていただければ嬉しいなぁ、と思います。あれほど緻密で素晴らしい織物、世界中でも珍しい逸品だと思うんですよね。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
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