人類とテクノロジーの調和が完成する日
2023年のお正月、南の国で家族と過ごしている。
去年を振り返ってみれば、私だけでなく、全人類にとって充実した一年だったと言えるだろう。
2022年の今年の漢字は、「菌」だった。
発酵テクノロジーと自然循環の活用による、フリーエネルギーが世界中で解禁となったのが最も大きな出来事の1つである。
光熱費など、生活にかかるお金を支払う必要がなくなってしまったのだ。
電氣代はもちろんのこと、交通機関、インターネットなどが無料になった。
実はその「フリーエネルギー」というのは、かなり昔から開発が進められていたようだ。
そして遂に2022年、全世界で石油やガスなどの微生物たちが長い間かけて創り上げてきた限りある資源からの脱却を図ったのだ。
今までも、発酵食品を生活の中に取り入れ、身体の中で良い菌を育てる「菌活」もブームになったが、微生物の「発酵」という作用は、私たちを健康にしてくれるだけのものではなかった。
地球環境の浄化や、現代のテクノロジーの発達に大きく貢献し、私たちの生活を豊かにする素晴らしい作用だということが、改めて人々に広く知れ渡ることとなった。
「微生物たちとの共存こそが、私たちが地球で豊かに生き続けるのに最も重要なことである」と、メディアたちは大きく取り上げたのだ。
そしてもう一つの大きな出来事といえば、
人工知能を持ったロボットが導入されたことだ。
去年3月に、大手企業が次々とAIロボットの導入を図り、働き方改革とともに、大きな反響を受けた。
効率姓や生産性を必要とする労働力は、すべて人からAIロボットへと移行していくということだった。
ロボットの導入は、私たちの働き口を奪ってしまうものだと、労働者によるストライキが各地で起こることとなったが、それも長くは続かなかった。
日本政府は、海外に遅れを取る形にはなったが、「ベーシックインカム」が全国的に導入されることになったのが、そのすぐ後のこと。
職を失った多くの労働者たちは、収入を確保したことで、「お金にはならないから」と諦めていたそれぞれの夢に向かって、新たなスタートを切ることができた。
私の母も、趣味だった着物のリメイクの事業を立ち上げ、姉と一緒に毎日生き生きと活動している。
「お金のために働く」という仕事の概念はもう古い。
「自分のために人は動く」のだ。
父は、会社務めが性に合っていたのだろう。
「営業をAIロボットになんて任せてられるか!」
と、今までの功績も認められ、指導役として残ることになった。
それでも、週に1、2度ほどの出勤なので、それ以外は趣味のゴルフや日曜大工、孫たちと遊ぶなどして充実した日々を送っている。
海外では、ベーシックインカムの導入より以前から、仕事だけでなく、趣味や自己実現の時間を大切にしていたので、難なくこの新しいシステムに流れていくことになったが、日本ではそうはいかなかった。
毎日真面目に働き、たまの休暇に趣味や娯楽を楽しむ生活に慣れてしまっていたところへ、「働かなくて良い」と、有り余る時間を与えられたのだ。
「自活(自分活動)のススメ」という電子書籍が発売され、ペーパーレスの書籍でベストセラーを記録した。
「”会社のため”でなく”自分のため”に生きる」ということが書かれている内容のものだ。
“自分のために生きる”なんて、当たり前だと思っていたが、似たような書籍ばかりを集め、特設コーナーができる程の人氣を集めていた。
「自活」という言葉が去年の流行語に選ばれたことは言うまでもない。
習い事教室が趣味の枠を超え、大人から子ども、お年寄りまでもオンライン講座を受けるまでになり、新しいムーブメントを引き起こした。
自由な時間を過ごすことに慣れず、抵抗や不安を抱える人たちも多くいたが、もう以前のように毎日働いていたことに肯定や否定もせず、誰もが目の前にある自分の人生を十分に楽しんでいる。
何はともあれ、2022年は働き方が変わったことで、人々の生き方そのものが大きく変わる年となった。
そして、年末年始は家族で南の国へ来ている。
仕事に縛られることなく、行きたい所へ行ける時代になった。
それでも働くことが大好きな母は、伝統工芸の織物を見ては、次の作品づくりの構想に余念がない。
自分の好きなことが働くことと結びつくことで、こんなにも生き生きできるだなんて。
父はすっかり南の国が氣に入ってしまい、毎日孫たちと海辺に出かけて、のんびりと休暇を楽しんでいる。
60歳を過ぎた父が、「サーフィンでも始めようかな。」と、若い子たちに声をかけている。
新しいことを始めるのに、年齢は関係ないようだ。
弟は教師として今も現役で働いていて、兄は日本での事業が軌道にのり、海外移住の計画を立てている。
発酵テクノロジーとAI技術の進歩が、私たちに新しい生き方の選択を与えてくれた。
そして、科学技術の進歩は、新しいものを生み出すだけではなかったということを、強調しておかなければならない。
人間の手によって生み出されてきた、古き良き伝統工芸や発酵食品などの文化の伝承も再重要視された。
各地で「伝統文化保存会」「発酵食品伝承会」という団体が発足され、新たな賑わいを見せてきている。
先人たちの知恵と技術は、未来へ繋がれていくのです。
遂に、人類と科学技術の調和が完成する日がきたのだ。
