『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ 人生の後半に後悔しない必要な3つの準備』第1章・無料全文公開
2025年8月5日発売の書籍『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ 人生の後半に後悔しない必要な3つの準備』から、第1章「50代おひとりさま 『自分らしい生き方』の扉を開く」を全文公開!
私の気づきの物語 ~立ち止まることから見えてきたもの~
誰にでも人生の転機となる出来事があります。私の場合、それは予期せぬ病気からのはじまりでした。「自分らしい生き方」に必要な3つの準備についてお話しする前に、それに気づくきっかけとなった、必然ともいえる、そして誰にでも起こり得るような私の体験についてお話しさせてください。
40代後半だった私は息子とふたり暮らしで、仕事に追われる毎日を送っていました。当時勤めていた会社は自宅から遠く、往復4時間かけて通勤。そのため自宅と会社を往復するだけの生活を十数年続けていました。休日は家のことに追われるか、疲れ果ててただただ休息するか、いま思うとよくやっていたなと思う生活スタイル。睡眠時間は毎日4~5時間ほどでした。
ちょうど息子の大学卒業を間近に控え、教育費用のおわりが見えはじめてきた頃。私はまもなく50歳という節目を迎え、ふと人生の折り返し地点にきたような気持ちになりました。
山登りでたとえると、見えない山頂を目指していたと思っていたのが「あれ? もしかして、下山している?」と、登りではなく下っていると感じ、その道のりの長さも見えてきたような気がしたのです。これが「人生の折り返し」を意識する、ということなのかもしれません。
そうして「老後資金も、そろそろちゃんと考えないと」と思いはじめるようになりました。それまで30年近く会社勤めを続けてきたなかで、「定年」という言葉がようやく自分事として考えられるようになってきたのです。すると両親の介護も気になります。まだまだ先のことだと思っていた「自分の老後」がリアルなものになってきました。
「定年まであと何年だっけ……そもそも定年まで働くの? 定年まで体力もつかな……」と自問自答するようになりました。
子育ても一段落し、キャリアを積み重ねることが生きがいだった時期でもあります。一方で、振り返るとこれまで仕事と子育て中心で「自分の人生」はいつも二の次でした。年末年始やお盆休みに学生時代の友人と会うことはありましたが、趣味らしい趣味をもつこともなく、地域活動に参加する余裕もありません。会社のつながり以外で新しい人と出会う接点も少なく、同年代の定年を迎える世代の女性と話をする機会もほとんどありませんでした。
これから先どう生きたいかを考えてこなかった自分に対し、焦る気持ちが出てきました。心のどこかで漠然とした不安を抱えていました。
「このまま働き続けられるのかな……」
「息子が家を出たあと、私はひとり暮らしをしていけるのかな……」
そんな想いはあっても、何か行動するでもなく、日々のいろいろな締め切りに追われるなかで、いつも後回しにしてきました。
しかし転機は50代前半で訪れました。息子が就職のため家を出て、私はいよいよひとり暮らしになった年のことです。
ある日突然の体調不良、原因は重度の頚椎椎間板ヘルニアでした。検査の結果「このままだと、次に衝撃を受けたとき、全身不随になる可能性がある悪化した状態。すぐに手術と入院が必要です」とドクターに告げられました。手術をしても症状は取りきれない可能性があること、首を前方から切開する術式のため、合併症で声が出なくなったり、最悪の場合は死に至ったりするリスクもあるとのことで、術後に元どおりの健康な体に戻る確率は2分の1との説明を受けました。
あまりの突然の出来事に「なんで、私がこんなことに……」という驚きとショックは隠せませんでした。信じられずサードオピニオンまでしたくらいです。いろいろな角度から不安が襲いました。
「手術はうまくいくだろうか……うまくいったとしても、どこまで回復できるだろうか」「術後に元の生活に戻れるのだろうか? もし戻れなかったら、仕事は、生活は、私のこれからの人生は、どうなるのだろうか」見えない将来への不安で押しつぶされそうになりました。まわりを見る余裕がなくなり、孤独感でいっぱいでした。まさしく負のスパイラルです。心を閉ざして苦しい時間を過ごし、眠れない日が続きました。
これまで当たり前だった「健康」を突然失うかもしれない恐怖とともに、「健康」という土台のうえに「私の人生」があることを思い知る出来事になりました。
発症してから2か月後、私は手術を受けます。「手術はうまくいきましたから、もう大丈夫!」とドクターに言われたときは、うれしくて涙が出ました。ラッキーなことに、術後はわずかの痛みや不調も残らず、合併症もなく、日に日に回復。術前の不安は見事に消えて、感謝という言葉だけでは言い表せない幸せな気持ちで毎日を過ごしました。
この経験がなければ、これまで当たり前だった「健康」をこれほど意識することはなかったと思います。「健康」だからこそ、やりたいことができていることに初めて気づけました。失って気づくとはよくいいますが、私の場合は失いそうになって気づけたので、そういう意味でもラッキーなほうだと思えます。普段から、自分の体からのSOSに敏感でいれば、運動や生活習慣など気にしていれば、未病ケアや予防もできていたのかもしれなかったと反省しました。
健康であるために、無理をしすぎない、ストレスを抱えない、よく眠る、バランスよく食事をする、適度に運動する、など健康によいといわれる生活を送るために必要なことは頭でわかっていても、できるほうが難しいのではないかと思っていました。仕事や子育てをしている期間は、とくに自分のことが後回しになってしまいがちです。働く皆さんは、どうでしょうか? 大なり小なり自分を後回しにした経験をもっている人がいるのではないかなと思います。ですが、こうしてそのツケが訪れるときがくることもあります。
これから先の人生を考えたとき、まずは健康であり続けること。やはりこれが生きていくうえですべての土台であり、必要不可欠なことだと実感しました。これは年齢に関係なく、すべての人にいえることではないでしょうか。私のようにひとり暮らしだと、より一層、生きていくうえで根幹になります。健康であって初めて自分らしく人生を楽しめる、やりたいことも好きなようにやれる、なんなら文句のひとつだって言えるのだと思います。
3か月の休職期間を経て無事に復職した私は、以前と同じようにハードワークの日々に戻っていったのですが、何かが違いました。そこには体調の変化に、より敏感になった自分がいたのです。これまでの習慣からどうしても仕事中心の生活に戻ってしまうなか、「このままでいいのだろうか」という問いが、より大きな声で心のなかで響くようになっていました。
そして私はほどなく退職を決意することになります。これから先、仕事をしたくないわけではありませんし、仕事をしなくていいわけでもありません。ただ、いまの仕事環境と自分のあり方はこれまでと変わっておらず、せっかく病気をして気づいた大切なことを生かせないまま過ごしていることに、このままではまた同じことを繰り返してしまうのではないか、本当にこのままでいいのか……と切羽詰まって苦しい気持ちになりました。
その苦しい気持ちに気づいた瞬間、「いまがちょうど人生を見直す仕切り直しのタイミング」だと確信した私は、自分の心の声に素直に従い、次の仕事が決まらないまま思い切って仕事を辞めることを決めたのです。そして「自分と向き合う時間」をもつことを選択しました。
その期間を決めていたわけではありませんでしたが、「見直しがおわった」と感じたときには、すでに5か月が経っていました。俯瞰的に自分のこれまでを振り返り、自分とたくさん対話をしたと思います。この期間を終える頃、私はこれから先の人生に対して不安なく、むしろワクワクする気持ちでいっぱいになっていました。「自分と向き合う時間」を過ごした結果として、自分の心の奥底から湧いてくる「やりたいこと」があることに気づき、その準備を整えられたのです。
病気をしたことも、離職期間をつくったことも、私にはプラスでしかなかったと、いまはそう思えます。私はいくつもの新たな気づきを得て、次の新しい道に進むことができました。勇気を出して立ち止まることは必要だったと確信しています。
定年が気になりはじめた女性たちのリアル
私個人の経験は、シーンは違っても実は多くの50代女性が同じように思い悩んだり、考えたりしながら、前を向いて意欲的に生きていく日々のなかで直面する状況と重なっているのではないかと思ったりします。
私と同じように会社勤めをしている友人や知人に「これから」について聞いてみたところ、次の答えが返ってきました。
「自分の生活は自分で守らないといけないと常々思っていますが、この先、健康でいられなくなったら生活が立ちいかなくなるかも……と考えるとこわいです」
「定年で退職するとなると、その後の生活がとても不安。できれば再雇用制度を使って、体力が続く限り会社で働き続けたい。賃貸マンションで暮らしているので、仕事を失うことへの不安があります」
健康やお金の不安、とてもよくわかります。それくらい、生きていくうえで重要なテーマなのでしょう。なかには「考えるとおそろしいから考えない」と言う人もいましたが、その言葉をそのまま受け取ると、それはそれでおそろしいと私は思ってしまいます。
別の友人は生涯年収を考えて早期退職を選択しました。
「退職金に少しでも上乗せがあるならいいかと、50歳で早期退職制度を使い、思い切って退職しました。切羽詰まって働かないといけないわけではないけれど、老親の生活補助のため、いくばくかのお金を渡してあげたいから、転職して仕事をはじめました。けれど、いまの仕事はきついから続けられるか不安です。かといって、また転職するのは年齢的にも苦しいし……」
50代というミドルシニアでの転職を不安に思う気持ちも、よくわかります。採用担当者の気持ちになってみると、「そりゃ若い人のほうがいいに決まってる」と思いたくなります。それに体力面でも若い頃のような働き方ができなくなり、きつく感じることもあるでしょう。慣れない職場ならなおのことです。彼女に「お金に余裕があるなら週5日就労の会社員でなくてもよいのでは」と尋ねたら「性分なのか、まとまったお給料が定期的に入ってくるいまの働き方がいい」と話していました。健康やお金の使い方も、家庭の事情も、当然ですが人それぞれです。
一方で、早期退職したあとにセカンドキャリアを見つけた人もいます。
「40代半ば頃から、趣味の幅を広げてきました。定年まで勤める気でいましたが、これまでのキャリアとは畑違いの部署に異動になったことを機に、55歳で早期退職制度を使って辞めました。いまは15年続けてきた趣味が仕事になりつつあり、楽しい生活を送っています」
このように、好きなことを仕事につなげて、やりたいことをできるようになれたら素敵です。ほかにも、自分だけの新しい道に歩みを進めた人もいます。
「定年後を見据えて、週末は地域の子ども食堂でボランティアをはじめました。これまでは会社関係のお付き合いが中心でしたが、いまは新しい居場所ができ、生きがいにもなっています」
「会社員を20年続けたあと、得意な経理の知識を生かして独立しました。複数の仕事をかけもちできているので、収入と自分の時間のバランスが取れるようになりました。自分のペースでいられることが私の健康の秘訣です」
「週3日、業務委託で仕事をして、それ以外の日はオンラインで語学学習をしています。将来は通訳ガイドの資格も取得して、地元で観光ガイドをしていきたいと思っています」
生活スタイルや価値観は千差万別です。50代から何か新しい選択をすることは、不安と希望が入り混じります。けれど自分のペースで少しずつ変化を重ねることで、新しい可能性が開けていくことも事実ではないでしょうか。
自分の「これから」を考え、いろいろ実践していて素敵だと思う女性のひとりが、お笑い芸人の光浦靖子さんです。50歳で仕事を休み、念願だったカナダ留学を実現しました。現地での暮らしぶりをSNS(ソーシャルネットワークサービス)で発信しています。私も光浦さんのフォロワーのひとりです。留学前に出版された彼女の著書『50歳になりまして』(文藝春秋)のなかに次の一文があります。
〝今の私は仕事もあるし、健康だし、気力もあるし、幸い親も元気で、全ての時間を自分のためだけに使えます。これから始まる後半の人生の中で、今が一番強いんです。無敵なんです。無敵の私が未来の私を育ててやろうと思ったんです。将来、このおばあちゃんが笑って生きてゆけるレールを、これからの5年?10年?で敷いてやろうと思ったんです。18歳まで親が私にしてくれたことを私にしてやる感じ?子育てならぬ、おばあちゃん育てです。〟
何事もできない理由を見つけるのは簡単ですが、光浦さんのように客観的に自分の状況を見つめ「無敵の私が未来の私を育てる」と言い切る言葉にパンチを食らった気分でした。
光浦さんが一時帰国し、テレビ番組に出演した際に「若返った」「かわいくなった」と話題になっていました。私には「自分らしさ」があふれ出ている姿がまぶしく感じられました。まさしく、一度きりの人生を自ら行動に移すことで価値あるものにする「自分らしい生き方」のお手本、といえると思います。
定年が気になりはじめた女性たちのこれから
人生後半も社会で活躍する意欲は尽きない
「『自分らしく』できたらいいけれど」と思ってはみるものの、50代女性の日々は仕事や家庭生活に忙しく、自分のことはどうしても後回しになりがちです。
そもそも女性は結婚・出産・育児などライフイベントの影響を受けやすく、自分を優先しづらい時期もあります。
しかし、この20~30年の間にも社会は大きく変化し、その荒波にもまれながらも、仕事においても、生活においても、たくましくしなやかに乗り越えてきた経験や喜びなどの多彩な経験をもつ、人生経験豊かな年代でもあります。いまの50代女性にとって働くことは当たり前のことであり、また、働く目的と自分の生き方をうまく重ねながら柔軟に進化できるのも特徴といえるのではないでしょうか。
ハルメク 生きかた上手研究所の「50~70代女性の仕事・ボランティアに関する調査」によると、次のような調査結果が出ています。
●過去仕事経験率:98.0% ※50代女性のみは100%
●現在の就業率:48.1% ※50代女性のみは74.7%
●現在もしくは過去就業しことのある人の転職経験:76.6% ※50代女性のみは82.8%
●転職平均回数2.7回 ※50代女性のみは3.4回
●現在のボランティア実施率:50.9% ※50代女性のみは50.5%
https://www.halmek-holdings.co.jp/news/press/2024/y8ncen1r4tb/
65歳を超えても働きたいと思っている人の割合は86.7%あり、仕事をする理由として上位に挙がったのは「社会との関わりを得たいから」「人とのコミュニケーションを得たいから」「仕事を通じて自分が役立っていると実感できるから」という結果に。一方で「老後の資金を確保したいから」「日々の生活費を得たいから」は低位で、お金を稼ぐことよりも社会とのつながりを理由に挙げている割合が高い結果のようです。
また、回答者のうち現在も仕事をしている人の「新しい仕事への就業意向」は36.1%あり、働く50代以降の女性の3人に1人が、新しい仕事へのチャレンジ意欲があることがうかがえました。
仕事をする理由と同じく、ボランティア実施上位の理由が「社会に対して貢献したいと思うため」「社会との関わりを得たいから」「活動を通じて自分が役立っていると実感できるから」という結果を受け、ハルメク 生きかた上手研究所 所長の梅津順江(うめづゆきえ)さんは〝年を重ねるとより一層、『自分の喜び』と『人・社会の喜び』が重なってくるということなのかもしれません。〟と回答しています。
また〝酸いも甘いも含めた豊かな人間関係や社会経験をしてきた世代だからこそ、新たな人や社会とのつながりや学びにも前向きなのかもしれません。〟とコメントしています。
忙しい日々のなかにも、キャリアをしっかり積んできたこと、将来を見据えて仕事と向き合い、仕事以外の活動にも積極的な同世代の姿に勇気づけられます。
50代~70代の就業率の割合は48.1%」
後半の人生は「おひとりさま」に
人生の選択肢が増え、多様化する女性の生き方に関して次のようなデータがあります。男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」によると、50歳時点で「未婚」「離別」「死別」などの理由により配偶者がいない人の割合は、令和2(2020)年時点では約3割という結果に。私自身もその1人に入るのですが、実感として3人に1人を多く感じるのは、私が昭和世代の人だからでしょうか。ただ、友人や知人を思い浮かべてみると、たしかに私のまわりはそれくらいの割合のような気がします。
また、女性の50歳時の「未婚」の割合を見てみると、昭和45(1970)年時点では3.33%であったのに対し、50年後の令和2(2020)年では17.81%に上昇。50歳女性の約6人に1人は結婚をしていません。男性のほうがより深刻で、50歳の男性の約4人に1人は結婚経験がないのが実態のようです。
背景として、女性が働きやすい社会になっていくと同時に、経済的な自立ができるようになったことも大きいと感じます。昭和61(1986)年に「男女雇用機会均等法」が施行、男性と女性が同じように働けるようになりました。平成4(1992)年には「育児休業法」が施行され、子育てしながら仕事を続けられる環境が整ってきました。私も産休や育休を使って働き続け、人並みの暮らしをしてきたと思います。
世の中は現在も加速度的に変化し続け、結婚や家族のスタイルもさまざまです。私がまだ子どもだった昭和の時代は、祖父母との3世代同居も見られました。現在ではひとり世帯が増え、結婚せずに独身でいる人、結婚後に離婚する人、離婚後に再婚する人、結婚というかたちを取らずに家族をもつ人、親と暮らす人、配偶者や親を看取ったあとにひとり暮らしをする人、など多様化しています。
平均寿命ではなく、死亡年齢最頻値で見ると、令和2(2020)年時点で、女性は93歳、男性は88歳になっていて、健康かどうかはさておき、いまや女性の半数は90歳以上まで生きる時代というわけです。少し長い目で見ると、女性の場合は後半の人生をひとりで暮らしていく時間が長くあることが明白です。
私がまだ20代だった当時は、大人になれば結婚するのが当たり前、という時代だったように思います。ですが現在は、女性がひとりで生きていくのも当たり前の世の中になってきたと感じると同時に、否が応でもおばあちゃんになる頃にはひとりで生きる時代だと、時代の変化を実感します。
「おひとりさま」であること、「おひとりさま」になることを、元気なときは楽観的に構えられても、私が経験したように健康面に不安が出ると、いろいろなことが前向きに考えにくくなってしまい、とても楽観的にはいられないと思うのです。
人生の後半では、現在「おひとりさま」はもちろん、いずれ「おひとりさま」になっていく多くの女性は、意識しはじめたときから少しずつ自分の「これから」を考えはじめること、やれることをやっておくことを私はおすすめしたいと思います。
必要な3つの準備
では、これからの人生の後半を考え、50代の私たちは何を意識して、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。この節では、私自身の経験を踏まえ、これは必要だと思うことを3つお伝えします。
健康の準備
1つ目は「健康資産を育てる」です。失ってからありがたみがわかっても遅いと思うのが「健康」です。繰り返しいいますが、健康でいられることは決して当たり前のことではありません。
厚生労働省が2023年7月に発表した「国民生活基礎調査の概況」の年代別通院者率を見てみると、年代が上がるほど通院者率は増えていくのですが、なかでも50代は40代のおよそ1.5倍に急増します。なお、通院する人の理由の上位は「高血圧症」「脂質異常症(高コレステロール血症等)」「眼の病気」「歯の病気」「腰痛症」となっています
参考 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」 Ⅲ 世帯員の健康状況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/04.pdf
表13、図18参照
女性としては、50代は更年期といわれる変わり目の年代です。近年では更年期症状が原因で仕事が続けられなくなる人も増えており、深刻な社会問題としてニュースになることもあります。私も50代になってから、めまいや耳鳴り、汗が止まらないホットフラッシュに悩まされる時期がありました。「このままでは仕事が続けられないかも……」と思うほどでした。最初は市販薬を服用していましたが、体にあわなくなり、病院に通い漢方薬を処方してもらったこともありました。
ある60代の女性に「50代ってこわいです」と話したことがあります。すると「60代はもっといろいろなことが起きます。くれぐれも筋力強化に努めてくださいね」と言われ、先行きがさらに不安になったこともありました。別の人は「50代のとき仕事中に汗が止まらず、立ち上がると自分の汗がイスに染みているのではないかと思い、こわくて立ち上がれないときもあったけど、60代になると楽になるよ」と話してくれました。
体には個人差があります。一般的に「これがいい」といわれているものを試してみても、同じように効果が得られないと感じた経験は、私だけではないと思います。だからこそ、自分にあった健康維持の方法を見つけるには、まずは自分の体をよく知ることが大切です。
本来、自分の体のことは誰よりも自分が一番よくわかっているはずです。にもかかわらず無理をするのは、車の運転にたとえるなら、壊れかけた車にガソリンも入れず、猛スピードで走り続けているのと同じこと。それではいつか壊れてしまいます。体からのSOSを逃さず、自分でできるケアを実践していくことが重要です。(詳しくは第2章にて)
おひとりさまならなおのこと。定期的な健康診断の受診、体調変化への早めの対応、予防的な健康管理、などがとても大切だと思います。
仕事の準備
2つ目は「人生最後の仕事を考える」です。働く目的に「生活をするためにお金を稼ぐ」と考えるのは当然で、大切なことだと思います。そこに不安がないよう準備することは必要です。教育資金・住宅資金・老後資金は「人生の3大資金」といわれています。50代になると、「老後資金」のことをいよいよ考えるようになります。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和5年)」の結果によると、金融資産を保有している60代おひとりさまの保有額は、貯蓄額平均2,240万円、中央値は1,100万円です。金融資産を保有していない割合は33.3%で、3人に1人は貯蓄がゼロ、という結果です。
この結果に対し、平均以上と安心する人、平均以下と不安になる人、いろいろだと思いますが、これはあくまで平均した数字にすぎません。老後に必要と考えられるお金は、実は人それぞれです。大事なのは、自分の現在地と必要に応じた対応を計画し行動することです。50代からの資産形成は決して遅すぎることはありません。むしろ具体的な行動を考えはじめるのに適した時期だといえます。(詳しくは第3章にて)
老後のことを考えるのは、50代の私たちにとっては切実なテーマです。一方で老前、つまり「現在」はどうでしょう。漠然とした老後生活への不安から、ひたすらお金を稼ぐことを優先してしまい、その結果、無理をしたり、大切な何かを犠牲にしたり、ストレスフルな時間を多く過ごしているとしたら……そして、ようやく老後と思ったときに病気にでもなったら、これはなんだか本末転倒な気がします。
私の場合、病気や離職期間を経て「働くことの意味」を根底から考えることになりました。これまでも会社員という枠組みのなかで好きな仕事をしてきたと思っています。ですが、仕事の目的はどちらかといと「好きだから」よりは「生活のため」のウェイトが大きかったでしょうか。そのため時に無理もしてきたと思います。
介護などの必要がなく健康的に生活できる期間、いわゆる「健康寿命」についてご存知の人も多いと思います。女性の場合、75.45歳(2022年時点)で50代の私たちにとって、この先20~25年です。長いですか? それとも短く感じますか?
60歳が定年だった一昔前なら、50代は定年を控え、第一線から離脱していく年代でした。ですが現在は、年金を受け取る時期も定年の年齢も65歳に伸び、この先さらに伸びる可能性があります。「働く期間が長くなるのなら、自分のやりたい、やりがいのある仕事に就きたい」とセカンドキャリアを考える人が増えてきたのも、そういう社会背景があるからです。
自分に残された「健康で働ける時間」をどのように過ごしたいか。私の場合、必要な老後資金は備えながら、この先を見据えて、より「自分らしく働く」ために、仕事内容や働く環境を見直し、キャリアチェンジを選択しました。漠然と考えるよりも、具体的な計画を立てることで、やりたいことや興味のあることをいまからでも実現できると思えるようになったのです。新しいチャレンジも50代のいまだからできる、そう実感しました。
何かをはじめるのに遅いことはないけれど、早ければ早いほどいいと思います。これまで働き続けてきたからこそ、その集大成となる「人生最後の仕事」について、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。
つながりの準備
3つ目は「人とのつながりを考える」です。スーパーの閉店が「孤立のきっかけ」になる、というニュースに思わず目を引かれてしまったことがあります。ご主人に先立たれ、郊外に住んでいるひとり暮らしの女性が次のように話をしていました。「これまで買いものに行くときは、スーパーでは団地の仲間と世間話をしたり、子育ての悩みを相談したりする情報交換の場でした。それがなくなって、いまでは1日1歩も外に出ない日もあり、誰とも話さない日もあります」と。
「買いもの難民」という社会課題に加え、これでは「つながり難民」ではないかと思いました。長生きする日本人にとって、これまで経験したことがない大きな変化、といえるかもしれません。
年を重ねると足腰が不自由になる、頻尿などの体の不安から外出せず人と会わなくなる、といった深刻な声も聞きます。女性にとって井戸端会議といわれるようなおしゃべりの時間は、周囲と良好な人間関係をつくる大切な時間です。たとえ「おひとりさま」になったとしても、誰かと「つながり」をもつことが必要です。そうすれば、わずかでも会話が生まれ、孤立したり、孤独を感じたりすることは少ないのではないでしょうか。
私にとって家のなかでしか過ごせなかった病気療養期間は、一見すると、体が自由にならなくなった老後生活を疑似体験しているようでした。ですが孤独には陥らず、むしろ世界が広がる経験をしました。それはインターネット、そしてSNSのおかげでした。
オンラインで友だちと会話を楽しみ、SNSを使って多くの新しい出会いに恵まれました。コロナ禍を経てリモート環境が整った恩恵を、このようなかたちで受けるとは思いもよらず、SNSの醍醐味を味わえたことは衝撃的でした。(詳しくは第4章にて)
総務省「通信利用動向調査」によると、いち早く世の中の出来事や動きを知るための利用メディアに、50代は「インターネット」を利用しているのに対し、60代は「テレビ」を最も利用していると回答しています。この結果に世代の分岐を感じました。また、趣味・娯楽に関する情報を得るための利用メディアとして、50代でネットの利用は72.1%と、すでに定着した情報収集手段のひとつとして利用されていることがわかります。
50代のSNS系サービスの利用率を見ると、LINEやYouTubeはほとんどの人が利用しています。とくに女性の利用率が増加傾向のInstagramでは、写真投稿から健康や美容など個人的な体験に基づく情報を参考にしやすいと感じる人も多いのかもしれません。
出典 総務省情報通信政策研究所「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(令和6年6月)https://www.soumu.go.jp/main_content/000953019.pdf
いまから約20年前にX(旧Twitter)やFacebookが日本でリリースされ、いま50代の私たちは当時30代前半あたりで、比較的新しいテクノロジーにも抵抗なく接することができた年代でしょう。アナログとデジタル両方のよさを知っている私たちなら、便利なツールを使いこなして人とつながり、豊かな時間を過ごせると確信しています。
私がおばあちゃんになっても、スーパーが近くになくても、オンラインで友だちとお茶飲み会をし、ネットショッピングで今晩のおかずを買いものし、マッチングアプリで新しいお友だちを見つけているかもしれない。そのように想像しています。
自分らしく生きるために
これまでスタンダードとされてきた生き方が大きく変化しているいまだから、私たちはより自分らしい選択をする自由があると実感します。これまで当たり前だと思っていた価値観や慣習も、時には根っこから疑ってみることも必要かもしれません。そうすることで、新しい発見に出合い、大切なことに気づけたり、心ときめいたり、ワクワクできる気がします。
女性は男性と異なり、身体的に「思春期」と「更年期」の二度生まれ変わると私は考えています。前者は子どもを産み育てる「ひとりの女性」として、後者は自分らしく生きる「ひとりの人間」として。結婚・出産・育児といった大きなライフイベントにおいて、女性は物理的にも精神的にも大きな影響を受けやすいものだと感じています。心身ともに大きく変わることを受け入れ、川の流れのように柔軟にしなやかに、そして逆境にめげず、しなやかさを力に変えて生き抜いていく。女性には女性特有のポジティブさと、風に舞う桜の花びらのような軽やかさ、そして潔さと強さがあるように私は感じます。自分の内なる声に素直に耳を傾け、自分らしい生き方を見つけていくこと。それが後半の人生をより豊かに彩る鍵になるのではないでしょうか。
ここで、本書を手に取ってくださったあなたに質問です。
自分の体の不調に気づけていますか?
老後の資金計画を立てていますか?
仕事以外の人間関係はありますか?
自分の時間の使い方に満足していますか?
もし「いいえ」と答えたなら、そこに「自分らしい生き方」で幸せを感じられるヒントがあるかもしれません。小さな一歩でも十分です。昨日と違う一歩を踏み出すところからはじめてみませんか。あなたの人生の次のステージが、より豊かで、自分らしいものになるよう、次の章から一緒に考えていきたいと思います。
* * *
第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて2025年8月5日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『定年が気になりはじめた50代おひとりさま女子たちのトリセツ 人生の後半に後悔しない必要な3つの準備』
■ペーパーバック版(紙)
■Kindle版(電子書籍)
■書籍情報
50代のいまだからこそ必要なこと・いまだからできること。
年齢を重ねることを楽しむ!
「定年って、まだ先の話だと思ってた」「老後は公的年金だけでやっていけない」「更年期の体調変化に戸惑う」「後半の人生、ひとりぼっちになるかと思うと寂しい」
ーーこのような思いを抱えていませんか?
そんな思いにモヤモヤする50代おひとりさま女子は、あなただけではありません。
これまで、定年まで仕事を続けてきた女性たちはまだまだ少数派。定年後のセカンドライフのロールモデルを見つけるのは簡単ではありません。さらには、いま日本ではおひとりさま世帯が3世帯に1世帯を占める時代になりました。たとえパートナーがいても、女性の場合、長寿化により人生の後半をひとりで暮らす期間が長くなる可能性があります。「人生の後半はひとりで生きる」そのような女性の生き方も当たり前の時代なのです。
著者も離婚・転職を経験し、「50代おひとりさま」として第2の人生をスタートさせました。最初は先の見えない不安を抱えていましたが、ある出来事をきっかけに「人生の仕切り直し」を決意。自分自身と向き合い、これからの生き方を見つめ直すことで、長生きリスクへの不安を解消し、充実した日々を送れるようになったのです。
本書では、著者が実体験を通して学んだ「健康」「お金と仕事」「つながり」「人生の余白」の4つのテーマについて、具体的で実践的なアドバイスを掲載。更年期の体調変化との付き合い方から、経済的な備え、後半の人生を豊かにする人間関係の築き方、自分らしくあるための時間の過ごし方まで、50代だからこそ準備できることを丁寧に解説しています。同世代女性の等身大の経験から生まれた、不安を軽くし前向きな気持ちになれる1冊です。
【目次】
第1章 50代おひとりさま 「自分らしい生き方」の扉を開く
第2章 健康資産を育てる!
第3章 お金の不安を解消! ワクワクする人生をデザインしよう!
第4章 おひとりさまも寂しくない!「つながり」のヒント
第5章 不安にならない余白のつくり方
■著者プロフィール
獅子にひれ
1970年京都市生まれ。大学卒業後、神戸のアパレルメーカーに入社。29歳で結婚・出産後、往復4時間の通勤と子育てを両立しながら約20年間、平均睡眠時間4時間のハードな日々を過ごす。育児休暇や短時間勤務制度を活用し、ファイナンシャル・プランナー(AFP)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得。仕事と家庭のバランスに悩み続けた末、離婚を経験。50歳を前に「人生は有限」と強く意識し、28年間勤めた会社を退職。転職を重ねるなかで「これからの人生は、もっと自由に、もっと自分を大切に」という思いを抱くように。現在は「後半の人生こそ、もっと自由に、自分らしく」をモットーに、おひとりさまの新たな生き方を模索中。
