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「ていねいに、きれいに、早く」仕事の段階によって、順番は変わる

今朝NHKを観ていて気になったフレーズを書き留めた。

「ていねいに、きれいに、早く」

唐崎松の雪囲いをしていた職人さんが、
仕事で大切にしていることとして
話していた言葉である。

一本ずつ縄をかけ、
木を傷めないように整えていく。

完成した姿は美しい。

それでいて、作業には無駄がなく、早い。
とても職人らしい言葉だと感じた。

そして同時に、会社の仕事にも通じる言葉だと思った。

ただ、会社の仕事に置き換えてみると、
少し違うことにも気づく。

会社では、ときに順番が変わる。

「早く、ていねいに、きれいに」

そんな順番のほうが、
うまくいく仕事もあるように思う。

まずは70点で出してほしい

会社では、こんな言葉を耳にすることがある。

「まずは70点でいいから出して」
「タタキ案でいいから見せて」
「完成させなくていいから、一度持ってきて」

丁寧に仕上げてから
人に見せたい人にとっては、
少し落ち着かない言葉かもしれない。

もう少し調べたい。
表現を整えたい。
見た目もきれいにしたい。
質問されたときに答えられる
状態にしておきたい。

そう考えているうちに、
時間は過ぎていく。

けれど、その案がそもそも
正しい方向に進んでいるかどうかは、
まだ分からない。

方向が違っていたら、
どれだけ丁寧に仕上げても、
やり直しになる。

だから、
最初から100点を目指すのではなく、
まずは70点、
場合によっては30点でもよいので、
早めに見せたほうがよい場面がある。

そのとき求められているのは、
完成度ではない。

方向が合っているかを、
早く確かめることなのだと思う。

「手書きでいいからね」と言われた

あるとき、
クライアントとの打ち合わせで、
提案を持ってきてほしいと言われた。

そのとき、
クライアントはこう付け加えた。
「きれいに書類にしなくていいからね。」
「手書きでいいからね」

最初に聞いたときは、
こちらの負荷を下げようとして
くれているのだと思った。

資料を整えなくてよい。
デザインしなくてよい。
手書きのメモ程度で構わない。

こちらが時間をかけすぎないように、
気をつかってくれているのだろう。

もちろん、その意図もあったと思う。

しかし、後になって考えると、
あの言葉には

別の意味もあったのではないか


と思うようになった。

きれいな資料は、相手にも仕事を生む

その段階で求められていたのは、
完成した提案書ではなかった。

まだ採用するかどうかも分からない、
初期段階のアイデアである。

それを時間をかけて、
きれいな資料に仕上げて
持っていったらどうなるか。

受け取った側も、簡単には扱えなくなる。

ここまで作ってもらったのだから、
きちんと読まなければならない。

細かな部分まで
確認しなければならない。

丁寧にフィードバックを
返さなければならない。

資料が完成されているほど、
見る側にも
「ちゃんと対応しなければならない」
という負荷が生まれる。

きれいな資料は、作る側だけの仕事ではない。

受け取る側にも、
新しい仕事を生むことがある。

しかし、
その段階で本当に判断したかったのは、
資料の完成度ではなかったはずだ。

そのアイデアは良いのか。
進める価値があるのか。
方向性は合っているのか。

見たいのは、
そこだけだったのではないかと思う。

だから、
手書きのメモや
簡単なタタキ案でよかったのだ。

粗いものは、対話の余白を残す

手書きのメモであれば、
見る側も率直に意見を言いやすい。

「これは良さそう」
「この方向は少し違う」
「ここだけ、もう少し考えたい」
「この二つを組み合わせたらどうだろう」

完成した資料に対しては、
修正を頼むことに遠慮が生まれることがある。

作り込まれているほど、
壊しにくくなる

一方で、最初から未完成だと
分かっているものなら、
意見を出しやすい。

そう考えると、タタキ案とは、
単に完成度の低い資料ではない。

対話を起こすための資料でもある。

その役割は、
相手を納得させることだけではない。
相手の考えを引き出すことにもある。
きれいに仕上げる前に、一緒に方向を決める。

そのほうが、
お互いに余計な時間や労力を
使わずに済む。

そして、
進めると決まったアイデアだけを、
後から具体的な形にしていく。

結果として、そのほうが早く、
質の高いものになることもある。

「きれいにしない」ことも、相手への配慮

以前の私は、
きれいに仕上げて提出することが、
相手への礼儀だと思っていた。

もちろん、
最終的な納品物であれば、
それは大切である。

誤字がない。
読みやすい。
必要な情報が整理されている。
判断しやすい形になっている。

そうしたきれいさは、
相手への思いやりである。

しかし、仕事のすべての段階で、
同じきれいさが必要なわけではない。

むしろ、検討の初期段階では、
あえて作り込まないほうがよいこともある。

仕上げすぎない。
決めすぎない。
変更できる余白を残しておく。

それもまた、
相手への配慮なのかもしれない。

きれいにしないことは、
必ずしも手を抜くことではない。

今の段階で必要なものを見極め、
必要以上の仕事を増やさない
という判断でもある。

丁寧な人ほど、
すべてを丁寧に仕上げようとする。

ただ、その丁寧さが、
かえって相手の判断を重くすることもある。

完成度の高いものを早く出すことが、
優秀さの証明になる仕事もある。

一方で、正解がまだ見えず、
対話しながら形をつくる仕事では、
別の力が求められる。

早く完成させる力ではなく、
早く未完成を共有する力である。

大切なのは、三つの順番を見極めること

職人さんの言う、
「ていねいに、きれいに、早く」
この三つは、どれも大切である。

ただし、いつも同じ順番でよいとは限らない。

雪囲いのように、
一度の作業で仕上がりまで
求められる仕事では、

ていねいに、きれいに、早く。

一方で、アイデアを出し合い、
対話をしながら形にしていく仕事では、

早く、ていねいに、最後にきれいに。

まずは早く出す。
方向性を丁寧に確認する。
進むと決まったものを、きれいに仕上げる。

最初からきれいに作り込むと、
時間をかけた後で方向転換が必要になり、
自分にも相手にも大きな負担が
かかることがある。

仕事ができる人とは、
三つすべてを常に完璧にできる人
ではないのかもしれない。

今はどれを優先すべきかを、
その都度考えられる人なのだと思う。

その資料は、何を判断するためのものか

資料を作るとき、
つい完成度ばかりを気にしてしまう。

けれど、その前に考えておきたいことがある。

この資料は、
何を判断するためのものなのか。
アイデアの良し悪しを相談するためなのか。
方向性を決めるためなのか。
社内で承認を得るためなのか。
最終的にクライアントへ納品するためなのか。

目的が違えば、求められる完成度も違う。

相談のための資料なら、
手書きでもよいかもしれない。

判断のための資料なら、
比較できる形であれば十分かもしれない。

納品する資料なら、
細部まできれいに整える必要がある。

全部を同じ完成度で作る必要はない。

必要なところに、必要なだけ力をかける。

それが、結果として
「早く、ていねいに、きれいに」
仕事をすることにつながるのだと思う。

これから仕事を始めるときは、
まずこう問いかけてみたい。

今は、何を判断してもらう段階なのか。

アイデアの良し悪しだけを見てもらうなら、
まずは早く出す。

方向性を確認する段階なら、
修正しやすい形にしておく。

最終段階まで来たら、
丁寧に、きれいに仕上げる。

早く出すことは、
雑にすることではない。
きれいにしないことは、
手を抜くことではない。

それは、
お互いの時間と労力を使いすぎず、
一緒に良いものをつくるための工夫なのだと思う。

最後までお読みいただき
ありがとうございます。

さて、あなたの仕事はどの順番がよいですか?
僕は「早く・ていねいに・きれいに」にです。


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