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スマホの写真、消そうと思ったら消せなくなった話

 日曜の昼下がり。
 湿気を避けてカフェに避難し、冷たいアイスティーを飲みながら、
 私はふと決意した。

「スマホの写真、整理しよう」

 空き容量が限界に近づいていた。
 アプリのアップデートもできない。
 通知が出るたびに、「そのうちやる」と思っていた。

 今日こそ、その“そのうち”だ。

 ~第一章:写真、10,484枚~
 ギャラリーを開いた瞬間、絶望。

「総枚数:10,484枚」

 自分でも引いた。
 そんなに何を撮ってたのか。

 思い返すと、
 ・食べ物
 ・猫
 ・空
 ・スクショ
 ・なんかのQRコード
 ・消し忘れた失敗自撮り(なぜ笑顔が引きつってる)

 私のスマホは、人生のログではなく“迷子の迷宮”と化していた。

 ~第二章:QRコードとホットケーキの海~
 まずは削除しやすそうなやつから。

 スクショフォルダを見ると、
 ・期間限定のスタバのメニュー(去年の秋)
 ・美容院の割引クーポン(期限切れ)
 ・「絶対痩せるスクワット」画像(やってない)
 ・何かのレシピ(材料全部忘れた)

 全削除!
 ……のはずが、なぜかひとつだけ残す。

「いや、スクワット、明日からやるかもだし…」
 そういうとこだぞ、自分。

 ~第三章:同じ構図、何枚撮るの~
 次に「猫フォルダ」。
 愛猫のまめ太(3歳)のフォルダを開くと──

 同じ顔の写真が17枚並んでいる。

 いや、どう見ても「寝てる→ちょっと動く→寝てる」だけの繰り返し。

「これは目が1ミリ開いてるから貴重」
「これは肉球が映ってるから残す」

 ──結果、1枚も消せない。

 猫、恐ろしいコンテンツ力。

 ~第四章:自分の顔と向き合う地獄~
 そして、やってきた。

「自撮り」フォルダ。

 旅行中の笑顔、
 フィルター盛りすぎたやつ、
「なんでこれ保存した?」っていう謎の角度のやつ。
 中には目を半開きにした顔もある。完全に事故。

「これはもう消そう……」

 と思ったが、削除ボタンに指がかかる直前にこう思う。

「これ、将来“若かったな〜”って思う日が来るかも」

 謎のノスタルジーが発動して、削除不能。

 ~第五章:食べ物の写真、誰にも見せてない~
 圧倒的に多いのが、「食べ物」の写真。

 ・ランチ
 ・夜ごはん
 ・カフェラテ
 ・謎に撮ったお菓子のパッケージ(記憶にない)

 見返して思う。
 これ、誰にも見せてない。

 SNSに上げるわけでもない、家族に送るわけでもない。
 ただ、「なんか良さそう」と思って撮って、保存したまま。

 食べた直後に、「データとしての価値」ゼロ。

 でも、「あ、このパフェうまかったなぁ……」と記憶がよみがえる。
 そしてまた、消せない。

 ~第六章:意図不明フォルダたち~
「無題」フォルダには、
 ・天井の写真(多分誤操作)
 ・ポケットの中で勝手に撮られた黒い画像
 ・何かの会議メモ(手書き、解読不能)
 ・友人の足元(意図不明)

「なんでこれ撮った!?」という写真の宝庫。
 これは比較的消しやすい。

 が、1枚だけ謎に怖いのがある。
 真夜中にテレビに反射する自分のシルエット。

「これ……なんで保存した? 誰?」
 即削除。二度と開きたくない。

 ~第七章:カメラロールは人生のログだった~
 数時間経過。

 削除できたのは、たったの「84枚」。

 10,400枚は、依然として鎮座している。

 でも、思った。
 この中には、
 ・どうでもいいご飯の写真
 ・失敗した自撮り
 ・意味不明なQRコード
 全部入ってるけど、「あの時こうだったな」という証拠でもある。

 人生って、削除しづらいログの集積なんだな……。

 結論:
 写真は「その場では捨てられない」

 スクショとQRコードは増殖する

 猫は全部神

 自撮りは「未来の自分への手紙(黒歴史付き)」

 スマホはポケットの中のアルバム兼カオス

 ~最終章:明日もまた、撮る~
 アイスティーを飲み干し、スマホを閉じる。

「まぁ、いっか」

 その瞬間、横の席のパフェが到着。
 キラキラしてる。
 映える。

 私は、無意識でスマホを構えていた。

 ──そして、また1枚、消せない写真が増えた。

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