爆発するまでがチェーンメールです
金曜日の朝、僕のスマホに奇妙な通知が来た。
【警告】このメッセージを10人に回さないと、あなたの机が爆発します。
(残り23時間58分)
僕は一瞬で高校時代の記憶をフラッシュバックした。
あったなあ、チェーンメール。
「○○ちゃんが消えました」から始まり、「回さないと呪われる」系。平成の闇文化。
だが今は2025年。
その手のメールは淘汰され、誰も信じない。ましてや「爆発」とか、小学生男子の妄想にもほどがある。
僕は迷わず削除した。
その5分後、机が爆発した。
◆
「原因は不明です。が、ちょっとだけ焦げたスマホが机の上にあったようでして……」
ビルの管理人が説明してくれたが、まったく耳に入らなかった。
なぜなら机の上にちょっとだけ焦げたスマホががあって、画面にこう表示されていたからだ。
【時間切れ】
ご利用ありがとうございました。
ウーバーイーツか何かかよ。
会社全体がざわついた。社長は「これは陰謀だ!」と叫び出し、総務部長は「労災申請はどこから!?」と発狂。
僕はそっとポケットの中のスマホを見た。
……いや、さっき爆発したの、会社支給のやつじゃん。
◆
「絶対これヤバいやつですよ!」
と騒ぎ出したのは、隣の席のオカルト大好き・川崎だった。
彼は未だに幽体離脱の練習をしており、先週は「上司の霊圧が消えた」と大騒ぎしていた。
「これさ、“呪術式爆破チェーン”だよ! ついに日本にも来たか……」
「ちょっと待って。何その新ジャンル。中二病が独り歩きしたの?」
「違うって! 海外ではもう“第八形態”まで進化してるらしい!」
第八形態!?
そんなデジモンみたいな進化いらない。
しかしその直後、別部署から悲鳴が上がった。
「課長の椅子が!回転し始めました!!」
何それ、新手のアトラクション?
「……見た?」
「うん、課長、椅子と一緒に回転しながら飛んでた」
どうやら課長もチェーンメールを無視したらしい。
この日、社内は爆発のドミノ倒しとなった。
◆
午後。会議室には生存者だけが集められた。
「これ……やばくないですか?」
「全社員の携帯が同時に故障したら、業績と会社が消えるよね」
「ていうか、誰がこんなメールを送ったんですか?」
ざわざわする空気を断ち切ったのは――インターンのミツキだった。
「あ、たぶん……私です」
全員が振り返った。
「いや、ちょっとウケるかな〜と思って、“無害なドッキリメール”っていうアプリ使ったんですけど……」
「いや、無害ちゃうやん!!!」
「え、爆発って演出じゃないんですか……?」
その瞬間、全員がスマホを取り出してチェックした。
通知一覧には、例のメッセージ。そして……
【残り時間:2時間47分】
「このメッセージを10人に回さないと、あなたのイスが爆発します」
「ちょ……僕、立つ! 今から立つ!!」
「僕、寝転がります!!」←柔道部の大西
「私は、床に……埋まります……」←社内ニンジャの田村(出社時から謎にスモークと共に登場する)
全員が混乱した。
そして、冷静なフリしてた受付の美人・あかりさんが、ついに声を上げた。
「全員……回しましょう。爆発したら、社員旅行行けないじゃない。」
◆
午後6時、社内チャットは混乱の渦に陥った。
「誰かLINEで8人回してくれた?」
「インスタに載せたけど既読つかない!」
「TwitterじゃなくてXって名前に変わってから、拡散されにくくなった!」
最後のは全然関係なかった。
僕はもう面倒になり、「メッセージを100回自分に送る」という禁じ手に出た。
これ、無限ループでポイント2倍くらいにならないだろうか。
だが、爆発タイマーは残り30秒を切っていた。
……その時。
「待ってください!」
ミツキが立ち上がった。手にはアプリ開発元に送った問い合わせメールの返信が表示されている。
「本アプリは“爆発演出”のみにとどまり、実際の爆破機能はありません。演出が現実化する場合、端末の方に霊的干渉が起きている可能性がございます」
「ええええ!? 幽霊のせいなの!?」
「じゃあ課長の椅子の回転も!?」
「社長が煙の中から“ワシはまだいける”って出てきたのも!?」
最後のは普通に怖い。
◆
結果的に、社内での爆発チェーンメール祭りは1日で終息した。
ミツキは深く反省し、つぎはアプリの「回すとコーヒーが無料になるチェーンメール」を検索中らしい。
なお、僕の机は業者によって復旧されたが、椅子だけはなぜか新品の金ピカになっていた。
座るたびに「ポン!」と鳴る。
「地雷じゃないよね……?」
怖くて座れないので、僕は今も立って仕事している。
――立ったまま、今日もまた。
誰かがこっそり僕のデスクに置いた「プレゼントBOX(謎)」を眺めながら。
いいなと思ったら応援しよう!
楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。