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第10話 新橋駅の駅神様

  サラリーマンの街、新橋。夕方になれば駅前のSL広場に人が集まり、ネオンの灯りに誘われて居酒屋へと流れていく。
 そんな新橋駅を守る駅神様は、酒好きの小さなおじさんの姿をしていた。頭にはねじり鉢巻き、手には常に徳利。
「よっしゃ、今日もおつかれさん! 無事に電車降りられたら、まずは一杯いっときな!」
 そう言うと、なぜか改札を抜けたサラリーマンたちの足取りが自然と居酒屋方向へ向かう。駅神様の仕業だ。
 そのとき、山手線のホームで会社員がぐったりと座り込んでいた。
「会議ばっかりで疲れた……」
 駅神様は徳利を軽く振る。すると、偶然隣に座った同僚が「おい、一杯行くか」と声をかけた。会社員はぱっと顔を明るくし、「行く!」と立ち上がる。
「うんうん、それでこそ新橋や!」
 一方、観光客のカップルはSL広場の前でスマホを覗き込んでいた。
「待ち合わせ……だけど、人が多すぎて見つからない」
 駅神様はひげをなで、ぽんと手を打った。すると広場に停まっていたSLの汽笛が「ポーッ」と鳴る。驚いて顔を上げたカップルは、偶然目が合って笑顔になった。
「ほれ見ぃ、縁はここで繋がるんや」
 駅神様は得意げに徳利を傾け、ふらりと改札の上に腰を下ろした。
 夜はこれから。人々の笑い声とグラスの音が、新橋の夜に混ざって広がっていく。


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