『脚コンテストで人生が脚光を浴びた話』
「……で、なぜ俺はここに立たされてるの?」
「いいから脚を出せ、三村。脚だけで勝負だ」
場所は市民文化会館・多目的ホール。
開催されていたのは――第7回・脚だけコンテスト in 城南市。
上半身は布で隠され、脚だけを露出する謎イベント。年齢、性別、職業不問。
審査項目は、「膝小僧の誠実さ」「くるぶしの潤い」「ふくらはぎのドラマ性」など多岐にわたる。
なぜこんなことになったのか。
三村圭介 32歳、独身、SE。趣味:脚を組むこと。特技:寝落ち中の脚ピクピク。
そんな男がなぜ、脚コンテストの壇上に立っているのかというと――
「お前、うちの会社で一番“脚が惜しい”って言われてんだぞ」
「そんなあだ名イヤすぎる!」
* * *
事の発端は、1週間前。
社内の総務部・山下さん(※全てを仕切りたがるタイプ)が、昼休みに叫んだ。
「今年の“市民脚コン”、ウチから出場者ナシ!? そんなのダメでしょ! 脚文化の衰退だよ!」
「そもそも脚文化って何だよ」
「三村くん、脚、いいじゃん。あれで出なよ」
「いやいやいや、俺の脚、普通ですよ!? “上位互換の通行人B”って言われたことあるし!」
「逆にそれがいいの。親近感。あとヒザの骨感。あれ、映えるから」
どんな評価だよ。
* * *
かくして迎えた本番当日。
コンテストには、猛者たちが集まっていた。
・高校陸上部のエース・アユミちゃん(17歳)「ふくらはぎが時速40kmに耐えます」
・整体師・ナガイさん(42歳)「30年間一度も正座してません。ひざが“神”なんです」
・バレリーナ志望・ユージ(34歳)「つま先で全てを表現します。例:怒り→足刀」
・謎の老婆(年齢不詳)「脚は3Dプリンタで作ったのよ、ふふふ」
混沌だ。
控室で三村は汗だくになりながら、テーピングで脚をぴっちり仕上げていた。
「やっぱ帰っていいですか」
「ダメ。もうエントリー名“無職風ヒザ男”で出しちゃったから」
「ふざけんな!」
* * *
そして本番。
1人ずつカーテンから“脚だけ”を出し、音楽に合わせてウォーキング、ポージング、そして“脚トーク”を披露する。
※脚トーク:脚に関する自伝的エピソードを30秒以内で語る謎ルール。
審査員は地元の整形外科医、タイツメーカーの営業部長、そして市長(なぜか毎年来る)。
ついに、司会が呼ぶ。
「続いてはエントリーNo.13、“無職風ヒザ男”さん、どうぞ~~!!」
(三村ですけど!?)
* * *
カーテンの奥から、三村の脚がヌッと登場した。
ザワ……っと会場がざわめく。
(ん? 今、ちょっとザワついた?)
その瞬間、脚トークの合図が入った。
「えっと……これは、祖父の遺志を継いで……あの……ヒザが……“しゃがむたび、未来に近づく”って言われて育ちました……!」
(なに言ってんだ俺!!)
しかし、審査員の整形外科医がボソッとつぶやく。
「……膝蓋骨の角度、絶妙ですね……」
タイツ会社の営業部長が書き込みを始める。
「……この脚、うちの新作タイツのPRにちょうど……」
市長がにこりと笑う。
「いいねえ、“ひざの未来”って感じだね!」
(なんだその概念評価!?)
* * *
結果発表。
グランプリは――「無職風ヒザ男(三村圭介)」。
「え、ちょっと待って、冗談じゃなく俺!?」
副賞は、温泉旅行券、ヒザ用パック3年分、そして脚モデル契約。
さらに市からも“脚部門推進大使”としての辞令が下りた。
毎年、子ども向けに「ヒザで遊ぼう講座」を開くらしい。
* * *
後日、三村のもとに、脚専門ブランド「LEGZ」から正式なオファーが届いた。
・キャンペーン名:「地味脚が一番かっこいい」
・キャッチコピー:「毎日、歩いてる。それだけで、偉い。」
「……いや、俺、ただのSEだぞ……?」
でも――ふと鏡に映った自分の脚を見て、三村は言った。
「……悪くないな」
今日も彼は、デスクの下で脚を組む。
それが、誰にも知られず評価された脚ならば、なおさら。
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