第三章『修理の難関と工夫』(05)
【ひとつの音に、全員の手】
放課後の図工室が閉まる直前、誰かが試しに鳴らしたクラリネットの音が、教室の空気を変えた。透き通るような一音が、まだ未完成な楽器たちの間を滑る。
黒崎明生が「リード、手作りしたやつ」と誇らしげに言った。周囲から小さな拍手が起こる。
そして大翔が、今日最後の記録を音声で残した。
『今はまだ、一人一人の音。でも、きっといつか、それが合わさって“音楽”になる』
そうして図工室の灯りが消える頃、残った数人が無言でうなずき合った。
修理は順調に見えた。だが、それぞれの内側には、まだ見ぬ「心の課題」も眠っていた。
それは、次の章で明らかになる。
終
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