プロローグ 駅神様、はじまりの改札
この国には数え切れないほどの駅がある。人々が列をなし、改札をくぐり、電車に乗り降りする。だが、その流れをただの雑踏と思うなかれ。実は、どの駅にも――そこを守護する「駅神様」がいるのだ。
駅神様たちは姿を人に見せぬ。けれど、朝のラッシュの混雑をどうにか押し流そうと、見えぬ手で人々をちょっとだけ誘導したり。忘れ物をした学生を、乗り換え口で偶然友人と再会させたり。時に、迷子を改札前の交番に自然と導いたり。小さな奇跡を積み重ねるのが彼らの役目だった。
だが、駅神様たちには悩みもある。人の流れは気まぐれで、計算どおりには動かない。新しい施設ができれば人波は変わり、ダイヤが乱れれば怒号が飛び交う。外国からの旅行者が増えれば、異国の言葉に右往左往。工事が終わらない駅などでは、神様自身が「いつ出口が変わるのやら」と頭を抱える始末である。
そんな駅神様たちの物語は、今日も賑わうホームから始まる。まずは、全国で最も人の流れが激しい、あの巨大な駅から――。
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