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【bon16:山形県_花笠音頭と“無限ハナハナループ地獄”】

「ヤッショー、マカショ!」
「ヤッショーマカショ!」
「やっしょー……ま、か……ショ?」
「……ねえ、誰が正解?」
 はづきの問いに、誰も答えられなかった。
 ここは山形県山形市、花笠まつりの特設会場。通りには無数の提灯が並び、山形の夏が最高潮に達していた。
「“花笠音頭”って、掛け声の気合いで全部持っていってるよね」
 ジャニヤが冷静に分析している横で、雄大はというと――
「見よ、俺の“片手花笠・高速回転式”!」
 すでに片手に赤い花笠、もう片手はなぜかうちわを持って“二刀流”で踊っていた。
「うちわは関係ないだろ!?」
 拓朗が叫ぶが、雄大はすでに「祭り会場をBOSS戦ステージだと勘違いしてる人」モードに入っていた。
「今、俺は“祭りの化身”なんだよッ!」
「うるさい黙れ!! その花笠は貸し物だって注意書き読め!!」
 一方、踊り講習コーナーには、慎ましやかな雰囲気の男――裕幹がいた。
 彼は、踊らないで済むポジション(受付係)を狙って静かに座っていた……が、花笠の勢いは止まらない。
「お兄さんも踊って!踊って踊って踊って!」
 山形市の小学生女子軍団が、完全に人たらしモードで迫ってくる。
「ぼ、僕は責任感が……責任……うわああああ!」
 強制参加。すごい勢いで花笠を渡され、列に放り込まれる裕幹。
 そして、踊りが始まった。
 ♪ ハァ~ 花の山形~ 紅の町よ~
「うおっ、意外とテンポが良すぎる!」
 美琴が慌てて拍を数える。花笠を“くるり、くるり”と回しながら、隊列は練り歩く。
 そして気づく。
「これ……」
 ジャニヤがつぶやく。
「……無限ループだ」

ジャニヤのつぶやきどおり、それは終わりなき盆の渦だった。
 列は止まらない。通りを折れ、また戻り、駅前を通過し、気がつけば同じ場所を三周していた。
「おかしい……! “この角、さっきも曲がった”って記憶がある!」
 小百合が疲労困憊の顔で言う。
 彼女は他人に合わせていた結果、完璧に踊れてしまい、抜け時を失っていた。
「やばい……これって……“踊れる人から抜けられない式”……!」
 「やってみたら抜け出せなくなった勢」も多数いた。
 その一人が、裕幹である。
「回す、投げる、上げる、……また回す……あれ?これで四巡目……?」
 もはや義務として腕が動いていた。表情は虚無、でもステップは正確。
 完全に“魂の盆ロボット”になっていた。
 そして隣で、雄大がなぜか体力全快で踊り続けていた。
「この振付、ずっとやってると脳がトリップするね!!」
 そう言いながら、花笠を左右に振って――飛んだ。
「飛ぶなーーッ!!」
 美琴が限界声で叫んだそのとき。
 踊りの輪が、花火の音とともに一時中断した。
 バァアアン……!
 夜空に大輪の花。
「……あ、止まった……止まった……!」
 小百合が地面に座り込む。もはや“戻ってこれた人”。
 久々に停止した踊りの列。その最前列にいたのは、なんと雄大と――
「……裕幹!?」
 全員が目を疑った。
 満面の笑みを浮かべ、花笠を掲げていた裕幹。さっきまで「責任が」とか言ってた男が。
「お、俺……踊ってた……?みんなと……?」
「完全に主役だったよ」
 ジャニヤが言う。
「なんか、ずっと中心で回してた」
「記憶が……ない……でも心は温かい……」
 その姿に、一同がふと無言になった。
 「この人、今だけ“花笠の精霊”に取り憑かれてた説あるね」
 拓朗のひと言で、場が和む。
 そして雄大は、花笠を掲げながら叫んだ。
「来年も、またこの地に舞い戻ろう!花笠隊として!」
 それを聞いた地元の人がすかさず言う。
「君はもう来年のチラシの表紙決定やな」
 ※なお、その花笠は貸出品だったため、5分後に係員に回収された。
(bon16:End)


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