第三章『修理の難関と工夫』(03)
【記録魔、大翔のチェロ修理】
図工室の片隅、窓際の明るい場所で、石塚大翔はチェロの横にノートパソコンとスケッチブックを広げていた。彼の前には、表面にひびが入り、駒が折れた古びたチェロが置かれている。
「駒、交換。表板は接着剤だけじゃ不安。補強材は……こっちだな」
彼は自分の声をスマホで録音しながら、修理手順をすべて動画とメモで記録していた。カメラのアングル、部品の型番、使った接着剤の種類まで克明に残す。
「ここ、貼り直すと音質変わるらしい。あとで音比べしよう」
時に眉を寄せ、時に微笑みながら作業を続ける彼の姿に、周囲の数人が自然と集まり始めた。
「ねぇ大翔、その記録さ……他の楽器でも使えるかも」
と声をかけたのは、宮原集睦だった。トランペットの分解図と格闘中の彼は、部品の順番を何度も間違えていた。
「うん、じゃあ“修復マニュアル”って形でまとめていこうか。あとでデータ共有する」
大翔はクラウドフォルダを作成し、**『修復オーケストラ記録帳』**という名前をつけた。
この行動が、のちに全体の連携を支える土台となる。
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