第153章 習志野市:ナラシノノカミの軍用自転車と防衛願望
千葉県習志野市。穏やかな海風とともに、今日もどこかでラッパの音が鳴っていた。
「ぷっぱらぱー!きょーも朝から戦闘配置〜〜〜!」
誰だこんな音出してるのは、という声があがる前に、現場の空気はすでに引き締まっていた。なぜならそれは、神様の笛だからである。
この街を守るのは、ナラシノノカミ。自衛隊基地と海辺を愛し、「願いは強くて堅実に叶える」が信条の、厳しくも優しい神様である。
今日も彼は、迷彩柄のはんてんを着込み、町内パトロールを開始していた。
「よし、今日の訓練目標は“買い物袋を持ちながら全力疾走”だな!」
──神様、朝からフルスロットルである。
そんな彼の元に、町の小学校から1件の願いが届いた。
【願い】
「運動会で“防災・防衛テーマリレー”をやりたいです!でも全然まとまりません!助けてください!(教員代表)」
「了解。作戦コード“ナラシノ式民間強化型体育”を発動する」
──なんかすごいの来た。
数日後。
習志野第一小学校の校庭には、見慣れない標識が立ち並んでいた。
《第1コーナー:迷彩ゾーン》
《第2関門:炊き出し訓練》
《最終直線:砂袋運搬》
「え?これって運動会ですよね?」
「そうです。地域と防衛を融合した、史上初の“耐久型体育祭”です」
先生たちは頭を抱えたが、なぜか子どもたちは大喜び。
「やったー!本物の土嚢積みだー!」
「リアル災害訓練だー!」
「ちょっと変な方向で盛り上がってる……!」
親たちは、開会式からすでに動揺していた。
午前10時。
ナラシノノカミが手配した“自衛隊自転車部協力(※非公式)”のご厚意で、「軍用自転車リレー」が始まった。
──競技内容:
・砂地を自転車で走る
・荷台にペットボトル40本を載せる
・途中、謎の段差と横風トラップあり
「がんばれー!倒れたら補給物資全部パァだぞー!」
「ひどいプレッシャー!!」
だが子どもたちは必死にバランスをとって進む。
倒れる。立ち上がる。倒れる。また立つ。
「た……楽しいかも……!」
耐久力、忍耐力、そして笑い。なぜか大盛り上がり。
ナラシノノカミ、満面の笑み。
午後の部。
保護者競技にも神の手が入っていた。
「それでは、次は“親子対抗・簡易テント設営対決”です!」
「え!?なにそれ!?」
「災害時には親がテントを張れなきゃ話にならん!」
──神様、容赦なし。
だが実際やってみると、意外と盛り上がる。パパたちは説明書に頭を抱え、ママたちは設営後に速攻で中に入り「ここで暮らせそう」と言い出す。
「……この神様、めちゃくちゃだけど、なんか憎めない……」
それがナラシノノカミの術中である。
閉会式。
表彰状にはこう書かれていた。
《よく倒れ、よく立ち、よく運び、よく笑った。
本日をもって、君たちは“町の小さな防人(さきもり)”である。
──ナラシノノカミ、心より敬礼》
子どもたち、全員起立。
「敬礼ー!」
「ビシィッ!!」
なぜか感動の空気に包まれたグラウンド。
先生たちは目を潤ませ、親たちは肩をすくめながらも満足げに拍手を送った。
夜。
海風がそよぐ砂浜にて、神様は一人、訓練用ラッパを吹いていた。
「ぷっぱらぱー。今日も平和だったな……」
空には星が広がり、遠くの海からはカモメが一声。
神様はヘルメットを脱いで、そっとベンチに腰かけた。
《本日任務:
・小学校運動会 → 成功(※厳しめ)
・保護者の耐性向上 → 成果あり
・炊き出しカレー → 残飯ゼロ(地味にすごい)》
「習志野の未来、安泰や」
──そして、明日もまた神様は、どこかで笛を吹く。
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