第154章 宇治市:ウジノカミの優雅すぎる茶室改革
宇治市といえば、日本有数の茶どころ。
静かな川の流れと、ほのかに香る抹茶の匂い。そんな街の片隅に、ひっそりと暮らす神様がいた。
名は、ウジノカミ。
願いは“優雅に、そして癒し系に”叶える神様である。
……が、その“優雅”が時として“暴走”することもある。
ある日、観光案内所に一通の願いが届いた。
【願い】
「観光客向けの“体験茶室”をもっとオシャレにして、若者が来るようにしてほしいです(案内所スタッフより)」
──この願いを読んだウジノカミの目が、ふっと細くなった。
「“オシャレ”とな。ふふ……見くびられては困る」
その瞬間、茶葉がふわりと宙に舞い、神の茶室改革プロジェクトが始まった。
翌朝。
観光案内所の横にあった古びた茶室は、驚きの変貌を遂げていた。
「……これ、茶室?」
「いや、なんか……高級サロン?」
まず外観が漆黒のガラス張り。中には観葉植物、間接照明、流れるのは琵琶のアレンジBGM。畳の代わりにベルベットクッションが並び、床には「茶葉のアロマパウダー」が撒かれていた。
「ようこそ。“癒しの茶空間・宇治ヌーボー”へ」
「名前もクセがすごい!!」
体験メニューも神様が完全監修。
・「初めての一服(いっぷく)」:香りに包まれながら抹茶を点てる体験
・「癒しの茶瞑想」:BGM付きで10分間ただ茶を見つめる
・「あなたに合う茶葉診断」:脈と眉間のシワから判定される
「診断結果:あなたは“やや煎茶よりの人間です”」
「……なにそれ……」
客は戸惑いながらも、なぜか癒やされていく。
しかし。
ウジノカミの“癒し改革”は、町内の茶道教室に波紋を広げていた。
「え?茶室でフカフカクッション?お茶って……“胡座”で飲むものでしょ?」
「“眉間のシワ診断”? それ、道じゃなくて占いやん!」
伝統を守るおばあ様たちが、静かに立ち上がった。
「いざ、癒しの乱を起こしましょう」
──名付けて、「宇治・お点前防衛戦線」。
翌日。
“茶室ヌーボー”の前に、道着姿の婦人たちが集結した。
「神様!本来の茶道の“わびさび”を忘れないで!」
だが、ウジノカミは静かに応じる。
「承知の上でございます。
“わびさび”とは時代とともに、姿を変えるもの……」
その言葉に、空気がピンと張り詰めた。
──が、その直後。
「お時間です、“癒しヨガ抹茶セッション”のお客様、どうぞ〜」
「……誰やねんそれ呼んだの」
結局、婦人たちは体験だけして帰っていった。
「クッション……意外とええやん……」
「お茶、ちょっとええ香りしたな……」
──癒しの勝利である。
夕暮れ時、ウジノカミは縁側に座り、抹茶を一服。
今日一日で、観光客数は過去最高を記録し、口コミ評価も上昇。だが、神様はそれ以上のことに満足していた。
それは──
「老若男女、誰もが“お茶を通じて少し笑えた”。それが、よろしおすな……」
──この一言である。
風に揺れる茶の木が、かすかに拍手したように見えた。
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