見出し画像

第1巻 横浜市:ミナトノカミの願い

 夜の横浜みなとみらいは、煌めく灯りが海面に映り込み、まるで星空が街に降りてきたかのようだった。
 そこに暮らす神様、ミナトノカミは今日もゆったりと街の高層ビルの屋上に腰掛け、夜景を眺めていた。

「ほう、やっぱりこの光のバランス、完璧だな」と小さくつぶやき、手にした魔法の扇子をひと振りすると、ふわりと海風が吹き抜けた。

 その日は、近くのカフェで働く咲奈がこっそり願い事をした。
「もっと自分に自信が持てますように…」

 咲奈の願いを耳にしたミナトノカミは、少し気まぐれに、でもいつものスタイルで願いを叶えることに決めた。

「おっと、まずは見た目が大事だぜ!」

 ミナトノカミが指を鳴らすと、咲奈の身にまとう服が一瞬にして最新ファッションに変わった。色とりどりのライトが彼女の周囲を華やかに照らし、まるで夜景の一部のように輝く。

 だが、カフェの常連客たちは「おいおい、そんな派手な服で仕事は無理やろ?」と戸惑う顔。
 咲奈も鏡の前で「わあ…でも確かにかわいいけど、これじゃ仕事しにくいよ…」と困惑した。

「願いを叶えたぞ!これで自信満々、きっと人目を引くはずだ!」と満足げなミナトノカミ。

 しかし、肝心の「自信を持つ」という心の部分はそのまま残ったままだった。

 その後も、咲奈は見た目が派手になったことで逆に恥ずかしさが増し、何度も服を直しながら接客に戸惑う。

 そんな彼女を見て、直也というチームリーダーが声をかけた。
「咲奈、大丈夫か?そんなに気にしなくても、君らしくやればいいんだよ」

 ミナトノカミはその様子を、影からこっそり見守りながら、
「おっと、次は心の中の輝きをどうにかするか…でもなあ、面倒だしなあ…」と呟いて肩をすくめた。

 こうして、願いは叶ったようでズレている。でも、少しだけ咲奈の心には変化が生まれていた。

 それが、この港町の夜にほんの少しの灯火をともすのだ。


いいなと思ったら応援しよう!

Goldness 楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。