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第50話 大崎駅の駅神様

  山手線、埼京線、湘南新宿ライン、りんかい線が交わる大崎駅。かつては「オフィス街の通過点」と呼ばれがちだったが、再開発でビルや商業施設が立ち並び、近年は乗り換えの要として存在感を増している。朝の通勤客、昼のオフィスワーカー、夜は居酒屋に吸い込まれる人々で、人の流れは止まらない。
 この駅を守る駅神様は、スーツにヘルメット姿の「再開発ディレクター」風。手には分厚い都市計画図を抱え、口癖は「大崎はまだ伸びしろだらけや!」。
「さぁ本日も再開発進行中! 人の流れも都市デザインやでぇ!」
 朝。山手線ホームでサラリーマンが「ぎゅうぎゅうで入れん!」と青ざめていた。神様は計画図をパタパタ広げ、「ここに新通路を開設!」と叫ぶ。すると偶然、隣のドアが追加で開き、サラリーマンはするりと乗車できた。
「はい! 臨時通路完成や!」
 午前中、観光客が改札で「りんかい線ってどこ?」と迷っていた。神様は指差し棒を構え、「この動線や!」と叫ぶ。直後、案内板が点滅して「りんかい線→」が強調表示され、観光客は迷わず進んだ。
「よし、サイン計画も完璧や!」
 昼。駅前のビル街でオフィスワーカーが「ランチ、和食? イタリアン?」と悩んでいた。神様は都市計画図を丸めてメガホン代わりに、「今日はイタリアン街区に誘導や!」と叫ぶ。すると偶然、「本日パスタ大盛り無料!」の看板が目に入り、ワーカーは即決。
「商業導線もバッチリや!」
 午後、湘南新宿ラインのホームで学生が「新宿行き? 大宮行き?」と混乱。神様は設計士らしく三角定規を取り出し、「北へ南へ、直線通路や!」と叫ぶ。すると偶然、アナウンスが「新宿方面、まもなく発車」と流れ、学生は安心して乗り込んだ。
「はい一件落着! 動線整理ヨシ!」
 夕方。帰宅ラッシュでホームはごった返す。神様は梁の上に飛び乗り、計画図を広げて叫ぶ。
「ここに広場! こっちは回廊! さぁ流れろー!」
 と、その時、タイミングよく二本の電車が同時入線し、人の波が自然と分かれて改札を抜けた。サラリーマンが「大崎って意外と便利だな」と笑い、神様は胸を張った。
「再開発は心にも効くんや!」
 夜。オフィス帰りの人々が居酒屋に集まり、駅前は賑やかな笑い声に包まれる。神様は梁に腰を下ろし、計画図を畳みながらつぶやいた。
「大崎はまだまだ育つ街や。今日も人の流れを整理して、新しい景色を描いたる」
 そして夜空に計画図を掲げ、声を張り上げた。
「明日も大崎、工事中! 未来は常に建設現場や!」
 その声は人には届かない。けれど駅を出ていく人々の顔には、街が少しずつ成長していく期待感が映っていた。


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