第155章 浦安市:ウラヤスノカミの夢と魔法のご近所トラブル
舞浜の駅前がにぎわう朝。
浦安市の空には、夢と魔法がいつもほんのり混ざっている。
その中心に住まうのが、ウラヤスノカミ。
夢の国のご近所神様であり、願いは“夢と魔法のように明るく叶える”がモットー。
ただし──叶える際のテンションが毎度、すこしだけ浮かれすぎる。
ある意味、そこが問題だった。
「神様〜、聞いてください!うちのマンションのゴミ捨て場、ルール守らない人がいて!」
町内の主婦・智咲子が、眉間にシワを寄せながら神様ハウスを訪れた。
「燃えるゴミに、謎の“耳が三つあるぬいぐるみ”とか入ってるんですよ!どこのキャラですかあれは!」
「これは……夢の国の余波……?」
ウラヤスノカミはキラキラした目でうなずいた。
「よし、ここはひとつ“魔法的に”解決しよう!」
「普通に張り紙でいいです!!」
だが神様は、もう止まらなかった。
翌朝、マンションのゴミ捨て場に現れたのは──
喋るゴミ箱である。
「おはようございます!今日は“燃えるゴミ”の日だよ〜★
違反ゴミは、ポイしないでね〜♡」
「……うわ、うるさい!」
近隣住民、朝からテンション削られる。
さらに、神様はエントランスに謎のテーマソングを流し始めた。
《ゴミはルールでぽいぽいぽ〜い♪
燃やすか捨てるかよく考えて〜♪》
「なんで曲調がアイドル風!?」
住人・一摩(管理組合長代理)、涙目。
そんな中、神様はさらに「魔法」を仕込んでいた。
その名も「マナーが悪いとコスチューム変化」魔法。
「な、なんかスリッパが、ミニスカポリス風に……!?えっ、これ俺が捨て間違えたせい!?」
「そうだよ♡ポイ捨てポリスは君のそばに〜!」
──まさかの羞恥プレイ。
「夢と魔法で指導」は、町内に静かなる恐怖を巻き起こしていた。
一方、神様は今日もごきげん。
「うんうん、魔法的にマナーが改善されてるねぇ。夢ってすごい!」
「いや違います、羞恥と圧力です……」
そうぼやくのは、最近すっかり神様の通訳と化している近所の中学生・夏希。
「神様、一応確認しますけど……“普通の解決策”って知ってます?」
「うーん……夢の国のキャストさんって、ほら、何事も明るく解決するじゃない?」
「それ、プロフェッショナルだからです……」
しかし、ウラヤスノカミの願い叶え力は、方向性はズレてても効き目は絶大だった。
週末。
マンション前で、住人たちが自主的に掃除を始めた。
「なんか……ゴミのこと意識するようになったよね」
「うん、あのゴミ箱に怒鳴られるのイヤだから……」
「ていうか“ポイ捨てポリス”って誰が仕込んだの!?」
「……うちの神様です」
夏希がそっと頭を下げると、住人たちはしばし沈黙したあと、ふっと笑った。
「ま、楽しかったから、いっか!」
その夜。
空に浮かぶ観覧車の明かりを見ながら、ウラヤスノカミはベランダで夕涼みしていた。
「夢ってさ……ちょっと照れくさいくらいがちょうどいいよね」
隣には夏希。手には謎の“耳が三つあるぬいぐるみ”が。
「これ、本当に何のキャラ?」
「うーん……たぶん、君の想像の中にいるやつだよ」
「ごまかしましたね?」
風がそよぎ、星がまたたく。
今日もまた、夢と魔法のご近所トラブルは、ゆるく、明るく、解決されていた。
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