第44話 日暮里駅の駅神様
山手線、京浜東北線、常磐線に加えて、京成スカイライナーまで走る日暮里駅。成田空港へ向かう旅行者と、谷中銀座へ向かう下町散策組と、通勤通学の人々が一堂に会する混沌の交差点である。
この駅を守る駅神様は、どこか下町のおじさん然とした風貌。腹巻きに雪駄、頭に手ぬぐいを巻き、手にはなぜか団子串。本人いわく「谷中銀座の雰囲気を取り入れてんだよ」とのこと。
「おーい、今日もみんな成田に急ぎすぎだぞー! スカイライナーは逃げねぇから、切符なくさんようにな!」
朝、スーツケースを転がす旅行者が慌てて改札を通ろうとした。が、ポケットの中で切符が見つからず大慌て。神様は団子をひとつ振り上げると、そのタイミングで旅行者の財布がぽろりと鞄から飛び出した。切符も一緒に床に落ちてきて、旅行者は「あった!」と歓喜。無事にスカイライナーに駆け込む。
「はい解決! 団子一本で切符発見!」
午前中、谷中銀座方面に向かう観光客の集団が駅前で迷っていた。
「猫! 猫はどこにいるの?」
神様は額をぽんと叩く。
「猫は生き物だから、案内できるわけねぇだろ! でもまぁ……」
と、団子を一本かじると、どこからともなく野良猫が現れ、観光客の足元をすり抜けていった。観光客は「きゃー!」と大喜びで後を追う。
「よし、ネコ神降臨。団子パワーは万能だな」
昼時。ホームで弁当を食べようとした学生が、勢い余って箸を落とした。神様が団子串を軽く投げると、箸の代わりにちょうどポケットから出てきたスプーンが手元に収まる。学生は「ま、いっか」と笑って弁当を食べ始めた。
「細かいことは気にすんな、それが日暮里スタイル!」
午後、帰宅ラッシュ前の時間帯。改札近くで、おばあさんが切符の自販機と格闘していた。
「えーっと、ボタン押しても出ないのよ」
神様は慌てて団子串をカチカチと鳴らす。すると、ちょうど横を通った学生が「おばあちゃん、Suica使ったほうが早いよ」と教える。おばあさんは「まぁ便利ねぇ」と笑顔になり、学生もどこか誇らしげ。
「ほら、世代間交流もばっちりや」
夕方、常磐線のホームに酔っ払ったサラリーマンがふらふらと入ってきた。神様は思わず頭を抱える。
「おいおい、線路に落ちんなよ……」
団子を一本床に落とすと、偶然ホームドアが閉まったタイミングでサラリーマンははじかれ、ホームに戻ってきた。周囲の人々が笑い、彼も照れ隠しに「いやぁ、助かった」と言う。
「はい、安全第一。団子一本で人助け完了!」
夜。駅が静かになり、成田行きの最終スカイライナーが発車する。神様は団子串を空に掲げ、にんまりと笑った。
「今日も無事に一日終わり! 団子が足りんから、明日は谷中銀座で補充やな」
そうつぶやき、神様はふらりと夜の街へ消えていった。
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