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第二章『割り当てと計画』

 始業式の翌日、放課後の教室。春の日差しが斜めに差し込み、机に長い影を落としていた。黒板にはチョークで書かれた一文が目を引く。
『修復オーケストラ計画:本格始動』
 教室の中央では、岡島桃音が手元のノートパソコンを見つめながら、すでに整理された一覧表を開いていた。
「担当は私が仮で割り振った。できるだけみんなの性格とか得意なことに合わせてるつもり。異議があれば言って」
 その声は柔らかいが、迷いがない。彼女の言葉にみんなの視線が集まり、空気が少し引き締まった。
「じゃあ……いくね」
 桃音が一人ひとりの名前を読み上げていく。

「石塚大翔はチェロ。倉庫の発見者だし、記録係も兼ねて」
 大翔は頷いた。メモ帳とスマホは常に持ち歩いている。「了解。全部ログ取るよ」

「桜井啓利はティンパニ。細かいとこ気にするタイプだし、精度が必要な打面の張りは得意だと思う」
 啓利は手を組んで頷いたが、すぐ口を開いた。「……完璧にやる。手抜きする奴いたら言うからな」

「黒崎明生はクラリネット。細かいパーツが多いから、丁寧な作業ができる人に任せたかった」
 明生は静かにメモを取りながら「うん、分解図も探してみる」と呟いた。

「坂本田一勤は電子キーボード。あえて一番イレギュラーな楽器にした。面白い修理方法、期待してる」
 一勤はニヤリと笑った。「任せて。普通に直すつもりはないから」

「宮地央都、ハープね。部品管理ができる人がいいと思って。お金と部品の貸し借り、全部仕切って」
 宮地は眼鏡を直して「ちゃんと貸借表作る。誰が何使ったか明確にするから」とすでにノートを開いていた。

「川中麻弥はビオラ。落ち着いてて計画的な人に、複雑な修理工程を任せたいと思った」
 麻弥は静かに「スケジュール表、私が組むよ。無理のない範囲でね」と口にした。

「金山久智はウクレレ。独自のアイデア持ってるし、デザインも含めて遊び心を足してほしい」
 久智は一瞬照れたように笑って、「絵とか入れてもいい?星とか月とか」と聞いた。

「森本川めりあはトロンボーン。大きくて扱いづらいけど、自由な発想があればきっと大丈夫」
 めりあはガッツポーズを作って「オッケー!ぶっ壊れてても、直して吹けるようにする!」と明るく笑った。

 桃音は順に読み上げながら、全員の反応を見て、微調整を加えていく。話しながら、彼女の目は常に全体を見ていた。
「これが最終じゃない。進めてみて無理があれば、ちゃんと交代や協力体制も作る。目指すのは“全員で完成”だから」
 誰も異議を唱えなかった。
 黒板の横に貼り出された担当一覧表は、クラス全員分びっしりと埋まっていた。その一枚の紙が、これからの数週間の行動計画のすべてになる。
 その後、各担当ごとにグループが作られ、修理方法や必要な部品のリストアップが始まった。机を寄せ合い、話し合い、調べ合い、時に意見がぶつかることもある。
 だが、教室の空気には不思議な一体感が漂っていた。
「音楽会の舞台って、いつにする?」
 誰かがぽつりとつぶやくと、
「それは最後に桃音が指揮して、みんなでやるって決まってるんでしょ?」
 と誰かが返す。
 そして、大翔がこっそりスマホで記録していた。
『2025年4月3日、修復オーケストラ計画、正式始動』
 終

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