第四章『心の成長』(01)
【見た目重視だった彼と、静かな共感者】
「こっちの塗装の方が……たぶん、綺麗だと思うんだけど。どう思う?」
大西卓伸は、フルートの胴部に光を当てながら訊いた。細かな傷を隠すように、銀色のラッカーを何度も塗り直している。
「うん、でも……それ、ちょっと光りすぎてない?」
そう返したのは、チェンバロを担当している横山荘子だった。
「音が鳴れば、見た目なんて気にしないって人もいるよ。私は……自分の楽器が黙ってても“何かを語る”ような姿でいてほしいかな」
卓伸は手を止めた。彼にとって、見た目はずっと最優先事項だった。だが、荘子の言葉には説得というより、自分の内側を覗かれるような妙な感触があった。
「……“語る”姿、か。じゃあ、塗り過ぎて無口にしちゃってたかもな」
それきり、二人はしばらく黙って作業を続けた。でもその沈黙は、互いを拒絶するものではなく、どこか心地よい調和を伴っていた。
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