勇者パーティーに迷い込んだだけなんですけど。
目が覚めたら、パーティーのど真ん中だった。
「よう、目覚めたな。名を聞こうか、そこの男!」
見知らぬ甲冑の青年が、まばゆい笑顔をこちらに向けている。後ろには魔法使い風の少女と、妙に落ち着いた神官、そしてなんかヒョロい盗賊っぽい人。彼らは明らかに「それっぽい」格好をしていた。
一方の俺、悠月はただの農民である。昨夜、畑に落ちたナスを拾おうとしゃがんだところを、落雷に巻き込まれて意識を失ったはずだった。
「お、おれ……ただの農民ですけど……」
「農民!? ハハッ、謙遜が過ぎるぞ! 我が名はリーダー・リュオン。君はきっと、神が送った“謎多き新人”というやつだな!」
いや、だから本当に農民なんだけど。
*
こうして始まった、勇者パーティーと農民の珍道中。
だがこの旅、始まってみるとおかしなことが次々と起こった。
魔法使いの珠愛が魔法詠唱をミスると、なぜか俺の畑仕事の知識で修正できた。「水分足りてないのよ、この地面。農作物ならこの硬さじゃ育たないわ。魔力も育たないわよ」と的確に指摘。
神官の脩也が迷子になっても、俺が地形を読む力で即発見。「あ、あの雑草、村の裏山にしか生えてないやつですね」と冷静。
さらには、盗賊の惠里沙が罠に引っかかった際も、俺が「それ、ネズミ捕りと同じ原理ですね」と見事に解除。
「なんだお前、実は万能系の勇者か?」とリュオンは目を丸くした。
ちがう。農民だ。
*
だが、旅の終わりが近づく頃、事件は起きた。
魔王の城に乗り込む直前、勇者リュオンがひとこと。
「よし、ここは俺と農民の悠月が囮になる。お前らは裏から回って奇襲だ!」
「え!? なんで俺!?」
「いや、なんか君……実質、俺より目立ってるし……なんか……ね……」
嫉妬か!? 勇者のくせに器ちっさ!
しかし、言われるがままに突撃し、俺が草むらに転がったトマトを投げた瞬間。
「ぎゃあああああ! この酸味!まさか……農民スロー!? 伝説の!」
魔王が絶叫した。
たしかに、あのトマトはばあちゃん直伝の有機栽培だったが……。
気がつけば、俺は魔王城の玉座にいた。謎の勲章を胸にかけられ、国王から直々に「真の勇者」の称号をもらっていた。
*
「そ、それじゃあ俺……農業には戻れないんですかね?」
「戻っていいよ」隣で珠愛があっさり言った。「ていうか、私たちも農業やるわ。なんか、君の畑って癒し」
リュオンもうなずいた。「魔王退治もいいが、土いじりも悪くない。俺、鍬の扱い覚えるよ!」
「私、ニンジン担当します!」と惠里沙までノリノリ。
そして、なぜか元魔王が言った。
「我も……土に還りたい」
いや、言い方!
こうして、勇者パーティーは全員、俺の畑で農業を始めた。
魔王も除草担当として、地味に頑張っている。
*
春。花咲く畑で、俺は野菜の苗に話しかける。
「お前らが……世界、救ったんだよな」
「いや、お前がな」とリュオンが笑う。
いや、農民だから。
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