第97巻 青森市:アオモリノカミの願い
青森市。
厳しい寒さの中に、燃えるような祭りの熱が息づくこの街には――
「願いを熱くダイナミックに叶える神様」がいる。
その名も、アオモリノカミ。
この神様、何かというと「魂を燃やせ」と言い出し、
願いの大小に関わらず、ねぶた祭りレベルの熱量で叶えてしまうのが特徴である。
そんな神様に、ちょっとしたお願いをしてしまったのが、
高校一年生の匠海。
彼の願いは単純だった。
「……ちょっとだけ勇気が欲しいです……」
告白とか、発表とか、ほんのちょっと背中を押してくれるような、
その程度を――お願いした、はずだった。
だが、その晩、彼の寝室に謎の爆音が響き渡った。
「ラッセーラッセーラッセラーーー!!!」
「なんだぁああああ!?」
部屋の隅には、太鼓を叩く謎の男たちと、光るねぶたに乗った神様がいた。
「願い、受け取ったァアアア! 匠海よ、魂を燃やすのだ!!」
「燃やす量!! おかしいでしょ!!」
翌日。
匠海は学校に登校したが、なぜか制服が若干、祭り法被風になっていた。
しかも、自分の発言がやたらと鼓舞風味に変換されてしまう。
「……あの、授業始めてください」
↓神様変換↓
「さあ行こう! 我らが知識の荒波へ!!」
「誰!? 今しゃべったの誰!?」
自分で自分にツッコむ始末。
さらに放課後、彼が意を決して片想い中のクラスメイト・ヒカリに話しかけると、
その声は校内放送に乗った。
「ヒカリさん! 我、そなたに一片の想いあり! 心、まっすぐ届けたく候!!」
「……いや、時代錯誤がすごい」
ヒカリは困惑しつつも、「えっと、ありがとう……でも、ちょっと考えるね……」と、
なぜか快く保留された。
これはきっと、勢いだけで全てが吹き飛ばなかったアオモリノカミの奇跡である。
その夜、アオモリノカミが再び現れた。
「どうだ! 魂は燃えたかッッ!!」
「……うん、いろいろ吹っ飛んだけど、少しだけ強くなった気がするよ……」
「よいぞォオオ!! 来年のねぶた、そなたの顔を使う!!」
「やめてええぇぇぇ!!!」
青森の空の下。
神様は、今日もまた誰かの願いに、
不必要なほどの熱意とラッセラーを添えて応えている。
彼の字典には、“ちょっとだけ”という言葉は存在しないのだ。
──完──
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