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第99巻 八尾市:ヤオノカミの願い

 八尾市。
 祭りの熱と、昔ながらの商店街が混在するこの街には――

 「願いを実用的だが古風に叶える神様」がいる。

 その名も、ヤオノカミ。

 この神様、何かというと
「そらまあ、米俵で例えるのが一番や」
「スマホは信用ならん。筆と紙じゃ」
 などと言って、最新技術の願いも、明治風にアレンジして叶えてしまう。

 高校三年の貴大は、真面目で感情を整理するのが得意なタイプ。

 だが、志望校に落ちた翌日。
 ぽっかり空いた心の隙間に、うっかり書いた願いがある。

「自分の強みを、もう一度思い出したいです」

 その夜。
 家の仏間から「ピキ…ポンッ」という古びた和太鼓音が聞こえてきた。

 振り返ると、紋付袴に角帯、団扇をもった神様がいた。

「わしがヤオノカミじゃ。ええ願いや。実用的に、古風に叶えたる!」

「なんで神様が落語家みたいな風貌なんですか……?」

「なんでもや! 八尾じゃからな!」

 翌朝、貴大の机の上に、妙なモノが置いてあった。

 竹でできた巻物、糸電話、そして朱肉と木製ハンコ。

「現代的なアプローチは……どこに?」

 だが、不思議なことに、竹の巻物には「貴大、得意:人の感情整理」とちゃんと書かれており、
 糸電話はなぜかLINEよりスムーズに会話できるという謎仕様。
 朱肉の印は、押すたびに「ようやっとる」と心に響く音声付き。

 学校ではクラスメイトから、
「なんか最近、話しやすくなった」
「気持ちを整理してくれる感じ、頼りになるわ」と言われはじめた。

 朱肉ハンコも人気を博し、みんなが「ようやっとるスタンプ」を押してもらいたがった。

「ありがとう、って言われることって、強みだったんだな……」

 貴大は改めて、“地味だけど確かな自分の良さ”に気づいたのだった。

 放課後、公園のベンチにて。

「神様、願い……ありがとうございます。実用的に叶えてくれたんですね」

 ヤオノカミは、ひとさし指を上げ、重々しく言った。

「そや。実用の本質とは、“派手さやスピード”やのうて、“ちゃんと使えること”や。
 せやからわしは、いつの時代も“地味で実用的”に願いを叶える」

「かっこいい……けど地味!」

「ええんや、それで!」

 八尾の商店街の片隅。
 今日もどこかで、古風すぎる発明品を抱えて歩く神様が、
 誰かの“ちょっとした願い”を、粋に、地味に、叶えている。

 ──完──


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