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第一話「圖書館の奧に神話は眠る」貳(2)


旧字Ver 第一話「圖書館の奧に神話は眠る」 貳(2) 

 目の前に廣がっていたのは――空だった。いや、正確には雲海だ。
 眼下にどこまでも廣がる純白の雲。ふわふわとした厚い層の上に、まるでファンタジー世界のような空中キャンパスが浮かんでいた。柱が雲から突き出し、黃金の塔やら、寶玉の輝くドーム屋根まである。空の靑さが異樣に濃い。そこに浮かぶ巨大な建物羣は、古代神殿と近未來硏究所の惡魔合體という奇妙な景觀を作り上げていた。
「な、な、なにここ!? 圖書館じゃないよね!?」
 カイがぐるぐると周圍を見囘し、すでにテンションが爆上がりしていた。
「重力どうなってるんだ……いや、これ夢か? 量子意識の投影か……? うわあ、歷史資料じゃ說明つかないぞ……!」
 タカシはいつもの冷靜さをかなぐり捨て、興奮混じりに震えている。
「ふむ、每度ながら反應は良好だ」
 と、頭上からゆったりと降りてきたのは、あのヤタガラスだった。三本の足をもつ黑いカラス。その羽根は黑曜石のように光り、首元には妙に場違いな赤い蝶ネクタイが光っている。
「いらっしゃい。ここは《雲上神話學習キャンパス》――君たちは特別履修生に選ばれたのだ」
「履修!? 勝手に!?」
「入學手續き、してないよ!?」
 ヤタガラスは片翼をたたみ、まるでカウンターの職員のように說明を始めた。
「君たちが引き當てた《黃泉歸りカード》は、アカシックレコードと直接接續する古代神器の一部。日本神話の生成構造を體驗的に學ぶ特別プログラムの起動キーだったわけだ」
「アカシックレコードだって! カイちゃんテンションMAX!!」
「いやいやいや……そんなもん實在すんの!?」
「もちろん。學びとは知の探求にして、宇宙の渴望だ」
 ヤタガラスが妙に哲學的に言い放った。カイはすっかりノリノリで拍手している。
「つまり私たち、神話の世界に入っちゃったってこと?」
「嚴密には"體驗型神話生成シミュレーター"だ。君たちは神代の始まりを學ぶことになる」
「え、まさか天地創造から!?」
「正解!」
 ヤタガラスが翼を廣げると、眼前の空に巨大なホログラムが展開された。そこに映し出されたのは、宇宙創成のビッグバン――ではなく、墨色のカオスの渦だ。
「はじまりは『無』だ。日本神話においては、これを"混沌"ではなく"未分"と呼ぶ。この未分の中から、まず『獨り神』たちが出現する。それがアメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビの三柱である」
 タカシは食い入るように見つめた。
「『獨り神』ってのは、古事記冒頭に出てくる神々……これって、一神敎的とも言われるやつだよな」
「ふむ、鋭い。アブラハムの神とも共通する超越性を持つが、あくまで"生成の起點"という意味での獨在神だ」
 カイが嬉しそうに手を擧げる。
「それって、グノーシスのプレーローマに似てる感じ?」
「そう! 知の完全充足なる場。無限の可能性の源泉だ。良い質問だ」
 タカシがぼそっと呟く。
「……なんかもう、こっちの方が大學の講義より面白いかも」
 と、そこへパッとホログラムが切り替わる。次に現れたのは履修登錄サイトそっくりの畫面だった。中央に《創世系科目》《生成系科目》《陰陽系科目》《國生み科目》と分類されたアイコンが竝ぶ。
「さあ、まずは履修登錄だ。創世カリキュラムは嚴しいぞ?」
「え、履修登錄もするの!? いやこのシステムの作り込みすごくない!?」
「うおお、サイトがバグって再讀み込み地獄だ!?」
 二人は慌てて操作しながら履修ボタンを連打する。カイの畫面がフリーズしては復活、タカシの畫面は讀み込みループでカラフルなアイコンが踊っている。
「も、もしかしてこれ……リアル人生の履修バグみたいな皮肉じゃ……」
 カイが震える指で『創世入門A』をなんとか選擇し、登錄完了ボタンを押す。ピロリン!という妙に輕快なSEが鳴った。
「登錄完了、おめでとう!」
 ヤタガラスが滿足げに羽根を廣げた。彼の背後に《學生證》がホログラムで現れる。そこには
【創世學部特修課程:タカシ&カイ】
の文字が踊っていた。
「……ほんとに來ちゃったな」
 タカシがゴクリと唾を飮んだ。
「はじまるんだね、神話創造RPGライフ!」
 カイが胸を髙鳴らせていた。

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新字Ver 第一話「図書館の奥に神話は眠る」 弐(2)

 目の前に広がっていたのは――空だった。いや、正確には雲海だ。
 眼下にどこまでも広がる純白の雲。ふわふわとした厚い層の上に、まるでファンタジー世界のような空中キャンパスが浮かんでいた。柱が雲から突き出し、黄金の塔やら、宝玉の輝くドーム屋根まである。空の青さが異様に濃い。そこに浮かぶ巨大な建物群は、古代神殿と近未来研究所の悪魔合体という奇妙な景観を作り上げていた。
「な、な、なにここ!? 図書館じゃないよね!?」
 カイがぐるぐると周囲を見回し、すでにテンションが爆上がりしていた。
「重力どうなってるんだ……いや、これ夢か? 量子意識の投影か……? うわあ、歴史資料じゃ説明つかないぞ……!」
 タカシはいつもの冷静さをかなぐり捨て、興奮混じりに震えている。
「ふむ、毎度ながら反応は良好だ」
 と、頭上からゆったりと降りてきたのは、あのヤタガラスだった。三本の足をもつ黒いカラス。その羽根は黒曜石のように光り、首元には妙に場違いな赤い蝶ネクタイが光っている。
「いらっしゃい。ここは《雲上神話学習キャンパス》――君たちは特別履修生に選ばれたのだ」
「履修!? 勝手に!?」
「入学手続き、してないよ!?」
 ヤタガラスは片翼をたたみ、まるでカウンターの職員のように説明を始めた。
「君たちが引き当てた《黄泉帰りカード》は、アカシックレコードと直接接続する古代神器の一部。日本神話の生成構造を体験的に学ぶ特別プログラムの起動キーだったわけだ」
「アカシックレコードだって! カイちゃんテンションMAX!!」
「いやいやいや……そんなもん実在すんの!?」
「もちろん。学びとは知の探求にして、宇宙の渇望だ」
 ヤタガラスが妙に哲学的に言い放った。カイはすっかりノリノリで拍手している。
「つまり私たち、神話の世界に入っちゃったってこと?」
「厳密には"体験型神話生成シミュレーター"だ。君たちは神代の始まりを学ぶことになる」
「え、まさか天地創造から!?」
「正解!」
 ヤタガラスが翼を広げると、眼前の空に巨大なホログラムが展開された。そこに映し出されたのは、宇宙創成のビッグバン――ではなく、墨色のカオスの渦だ。
「はじまりは『無』だ。日本神話においては、これを"混沌"ではなく"未分"と呼ぶ。この未分の中から、まず『独り神』たちが出現する。それがアメノミナカヌシ、タカミムスビ、カミムスビの三柱である」
 タカシは食い入るように見つめた。
「『独り神』ってのは、古事記冒頭に出てくる神々……これって、一神教的とも言われるやつだよな」
「ふむ、鋭い。アブラハムの神とも共通する超越性を持つが、あくまで"生成の起点"という意味での独在神だ」
 カイが嬉しそうに手を挙げる。
「それって、グノーシスのプレーローマに似てる感じ?」
「そう! 知の完全充足なる場。無限の可能性の源泉だ。良い質問だ」
 タカシがぼそっと呟く。
「……なんかもう、こっちの方が大学の講義より面白いかも」
 と、そこへパッとホログラムが切り替わる。次に現れたのは履修登録サイトそっくりの画面だった。中央に《創世系科目》《生成系科目》《陰陽系科目》《国生み科目》と分類されたアイコンが並ぶ。
「さあ、まずは履修登録だ。創世カリキュラムは厳しいぞ?」
「え、履修登録もするの!? いやこのシステムの作り込みすごくない!?」
「うおお、サイトがバグって再読み込み地獄だ!?」
 二人は慌てて操作しながら履修ボタンを連打する。カイの画面がフリーズしては復活、タカシの画面は読み込みループでカラフルなアイコンが踊っている。
「も、もしかしてこれ……リアル人生の履修バグみたいな皮肉じゃ……」
 カイが震える指で『創世入門A』をなんとか選択し、登録完了ボタンを押す。ピロリン!という妙に軽快なSEが鳴った。
「登録完了、おめでとう!」
 ヤタガラスが満足げに羽根を広げた。彼の背後に《学生証》がホログラムで現れる。そこには
【創世学部特修課程:タカシ&カイ】
の文字が踊っていた。
「……ほんとに来ちゃったな」
 タカシがゴクリと唾を飲んだ。
「はじまるんだね、神話創造ライフ!」
 カイが胸を高鳴らせていた。


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