風呂に入ったら、ピンポンが鳴る呪い
土曜の午後。
気温は28度、湿度は78%。
「今日はもう、風呂入ってスッキリして昼寝しよう」
そんなささやかな幸福を目指して、私は湯船に身を沈めていた。
スマホには、Amazonの通知。
「お届け予定:本日14:00〜16:00」
現在、13:55。
大丈夫。あと1時間はある。
そう思っていた。
あの“音”が鳴るまでは──
~第一章:ピンポンは突然に~
「ピンポーン」
全裸で聞くその音は、
“告げられた終末”に等しい。
え、今?
14時ぴったりじゃん!?
むしろ5分早くない!?
プロなの!?
慌てて湯船から出る。
全身びしょ濡れ。
泡もついてる。
鏡の中、髪はぺしゃんこ。
こんな状態で出られるかァアアア!!!
~第二章:タオルがない問題~
体を拭こうとした瞬間、気づく。
タオルがない。
あれ? いつもここに──
あ、洗濯機の中だ。
うわあああ。
慌ててキッチンへ。
手拭きタオルで全身拭く。
「無理無理無理、サイズ感がフェアじゃない!」
次にバスタオルを探す。
押し入れ、ゴソゴソ。
やっと見つけた頃には、もう一度ピンポン。
「ピンポン(2回目)」
「すみませーん!アマゾンでーす!」
無言で土下座したい。
~第三章:適当な服が見つからない~
濡れた髪のまま、引き出しを開ける。
・上下パジャマ(くたびれてる)
・Tシャツ(謎のシミ)
・ジーンズ(乾いてない)
選択肢が地獄。
迷ってる場合じゃない。
結果、
「上・普通のTシャツ、下・タオル巻き」という“宅配業者対応モード”が爆誕。
~第四章:玄関までの最速移動~
玄関まで走る。
廊下で足を滑らせる。
猫が驚いて逃げる。
インターホンを確認。
「不在票、入れられてる!!」
ダッシュでドアを開ける。
「いま開けるの!?こわっ!」と業者さんの顔。
私「すみません……お風呂で……」
業者「大丈夫ですよー(視線がタオルに刺さる)」
そっと受け取る。
Amazonの箱。
中身、「歯ブラシ立て」。
この汗だくの戦いの結果がそれかい。
~第五章:風呂、リスタートできない問題~
風呂場に戻る。
湯船の中、ちょっと冷めてる。
もう一度浸かるには、テンションが足りない。
頭は中途半端に濡れたまま、
気づけば洗面所で座り込んでいた。
風呂って、一度中断されるとリズムが完全に崩壊する。
~第六章:学ばない人間~
その夜、再びAmazonから通知。
「お届け予定:明日14:00〜16:00」
私「明日はちゃんとシャワー済ませておこう」
でも翌日。
昼食を食べすぎてうたた寝して、
13:55に急いで風呂に入った。
そして、14:02にまた鳴るピンポン。
学習能力、ゼロ。
結論:
宅配便の「お届け予定時間」は“信じる者、救われない”
ピンポンの音は、風呂場で聞くと3倍怖い
タオルと適当な服は、常に風呂の近くにあるべき
Amazonの箱は軽いけど、ドラマを生む
人はなぜ、風呂中に来るとわかっていて風呂に入るのか
~最終章:置き配って、神なのでは?~
最近、私はようやく気づいた。
「置き配にしておけばいいのでは?」
──そうだ、それで全てが解決する。
でも今日もまた、
私は“対面受け取り”にチェックを入れていた。
なんか……置き配って、ちょっと寂しくない?
そんな矛盾を抱えながら、私は今日も風呂に入る。
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