見出し画像

第25話「修学旅行は奈良!神と鹿とアルキメデス」

 秋も深まったある日——
 2年B組は待ちに待った修学旅行へと出発した。
 行き先は、奈良と京都。
 —
「アルキメデスさん、神社仏閣めぐりとか好きそうだよね」
「“しんじゃぶっかく”……ふむ、それは宗教建築のことか? わしの得意分野である!」
 —
 しかし、彼が最初に驚いたのは——
 宿でも観光でもなく、奈良公園の“鹿”だった。
 —
「おお……これは……神の使いか? なぜ人の中におる? しかも自由に歩いておる……!」
 —
「放し飼いっていうか、もう共生してるのよ」
「ほう……神の眷属と、人が……共に暮らす……!」
 —
 鹿煎餅を手に近づくと、すぐさま群がる鹿たち。
 —
「むっ!? 囲まれた!? これは信仰か、それとも収奪か!?」
 —

 鹿に煎餅を奪われたあと、アルキメデスは呆然とつぶやいた。
「……神々の使者は、予想より貪欲であったな」
 —
 その後、大仏殿に到着。
 圧倒的なスケールの大仏を見上げて、
 彼の中の“建築愛”と“数学魂”が爆発する。
 —
「この天井の構造……梁の組み方……!
 木材の応力分散が……完全に計算されておる……!」
 —
 生徒一同が感心する中、
 アルキメデスは大仏を見つめながら、両手を広げて言った。
 —
「すべては真空の中にある!」
 —
 静まり返る大仏殿。
 その場にいた観光客がぽかんと口を開け、
 担任があわてて「すみません!」と頭を下げた。
 —
 夜の宿では、畳に寝転びながら、鹿煎餅の包装を観察しつつこう記す。
《奈良の構造的観察》
 ・人と動物の境界が曖昧
 ・信仰と観光の融合現象
 ・建築美=力と技術の均衡
 ・それでも、神は“共にある”と信じたくなる空間
(第25話 完)


いいなと思ったら応援しよう!

Goldness 楽しんでいただけることが一番の喜びです。いつもご覧いただき、ありがとうございます!これからも、皆さんと一緒に素敵な時間を共有できるように、より一層努力していきます。