暑苦しさ選手権 〜汗と根性とちょっと迷惑〜
「今年もやってまいりましたーッ! 第二十二回、日本全国・暑苦しさ選手権ッ!」
──その年、日本列島は観測史上最も暑かった。
連日40度越え、熱中症注意報は常に発令中、校庭のスプリンクラーからは湯気が立っていた。
そんな中、なぜか開催されるこのイベント。参加条件はただ一つ。
「見てるだけで、暑苦しい人。」
会場は埼玉某所の市民会館。なぜか冷房は切られていた。
「暑苦しさの真実味を出すためです」
という主催者の発言に、数名が失神。
だが出場者たちは皆、汗だくでやる気満々だった。
私、佐藤慎二(27歳・地味営業マン)もその一人だ。
なぜ出場したかというと──
「お前、夏になると“顔から熱湯出してるのか”って言われてるもんな」
と、会社の後輩に笑われたのが発端だった。
「じゃあ証明してみせるよ、“俺が一番暑苦しい”ってな!」
どうかしている。
エントリーNo.1「火山口の小林」
開幕から上半身裸で、頭にねじり鉢巻。胸には「噴火中」のタトゥー(たぶん偽物)。
「オレの汗はマグマだ!」
観客:おぉーっ!
エントリーNo.2「激熱演説・田中」
扇風機を真顔で切り、体育会系の熱弁スタイルで絶叫。
「皆さん! 暑さを! 心で! 迎え撃つのです!」
審査員の1人が途中で脱水症状になった。
そして私の出番、No.6。
正直言って、私には派手さもインパクトもない。
見た目は普通のリーマン。
だが、この顔だけは、炎天下の電柱よりアツい。
控室で、鏡を見ながら練習していた。
「よし……目を少し見開いて……眉を下げて……鼻の穴を若干ふくらませて……」
それは、まるで“今にもエアコンに殴りかかりそうな表情”だった。
ステージに上がる。
無音。
私は、ひたすらに顔で訴えた。
──うおおお……暑い……たまらん……でも耐えるんだ、俺は……!
観客がざわめく。
「えっ、あの人……見てるだけで暑い……!」
「顔、真っ赤だよ! 湯気出てない?」
違う、これは演技ではない。
本当に暑いのだ。舞台裏でスポーツドリンク飲み忘れたから、本当に倒れかけてるのだ。
だがそれが功を奏した。
「審査員特別賞、“顔から煮込み感”賞、佐藤慎二さん!」
壇上に上がったとき、私はもう意識が朦朧としていた。
表彰状と共に、冷却シートが贈られた。
泣いた。感動でもなんでもなく、単に汗が目に入った。
──数日後、会社。
「佐藤さん、あれ出てたんすか!? “顔暑男”ってあだ名ついてましたよ!」
「なんならアイス売場でポスターになってましたよ!」
よく見ると、コンビニに自分の顔のイラストが。
《食べる前に冷ましましょう! 熱気男・慎二登場!》
……誰が許可出したんだ。
だが、それでも思う。
あの暑さの中、最後まで顔だけで勝負できた俺は──
間違いなく、人生で一番“火力”を出していた。
※なお、その後「冬の寒苦しさ選手権」も誘われたが、丁重に断った。
なぜなら。
──僕の顔は“冬は無”だからだ。
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