第104話 津田沼駅の駅神様
総武線快速、総武線各駅停車、そして新京成線。千葉県北西部の拠点として君臨する津田沼駅。駅前はデパートや予備校の看板が林立し、学生も社会人も入り乱れている。
そんな津田沼を守る駅神様は、白衣にメガネ姿の「なんちゃって進学塾講師」風。手には赤ペン、腰には消しゴム。口癖は「はい、減点!」だ。
「今日も迷子は減点5点! でも正しい出口にたどり着けたら加点10点やで!」
朝、快速ホームに駆け込む学生が参考書をぶちまけた。駅神様は赤ペンを一閃。すると偶然通りかかった別の学生が参考書を拾い上げ、「これ、落としましたよ」と差し出す。受け取った本人は照れ笑い。
「はい、友情ポイント加算で+20点!」
一方、改札前では予備校生らしき男子が「今日模試なのに!」と青ざめていた。Suicaを探してポケットをひっくり返すが出てこない。駅神様は赤ペンで空に丸を描く。すると財布の隙間からSuicaがぽろりと顔を出した。男子は「助かった!」と走り去る。
「はい、ぎりぎり合格点。模試もその調子でがんばれ!」
昼、駅前のデパートの地下では、買い物袋を抱えた主婦が困っていた。
「電車乗る前に、もう一つ袋ほしいわねぇ」
駅神様は消しゴムを投げる。すると偶然、隣の人が持っていた予備のエコバッグを落とし、主婦が「まあ助かるわ」と拾って使うことに。
「エコな加点で+15点!」
午後、新京成線の乗り換え口で観光客が首をかしげていた。
「え、津田沼と新津田沼? 違う駅なの?」
駅神様は思わず赤ペンを折りそうになった。
「それ、紛らわしすぎて減点100点や!」
結局、地元の高校生が「地下道ですぐ行けますよ」と案内してくれた。観光客は感謝し、高校生は誇らしげに歩く。神様は赤ペンを直し、「まぁプラマイゼロにしといたろ」と笑った。
夕方、ホームは帰宅ラッシュでぎゅうぎゅう詰め。神様は赤ペンを空に掲げ、大声で叫ぶ。
「はい! 人の流れ、速読の要領で処理するんやー!」
その瞬間、電車が偶然2分早く到着。人の波が分散され、誰も押し潰されずに済んだ。
「よし、これで今日も満点や!」
夜、駅前の看板がネオンで輝き、学生たちが塾や予備校に吸い込まれていく。神様は梁の上から赤ペンを置き、ため息まじりに笑った。
「津田沼は“人生の模試会場”やな。迷ったり焦ったりするけど、最後はみんな合格点に届くんや」
そう呟くと、改札を出ていく人々の背中が、なぜかちょっとだけ自信に満ちて見えた。
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