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門松ラバーズ株式会社

 年末年始──それは、門松業界が最も輝く季節。

 ……というのは、門松業界の人たちだけが信じている伝説である。

「よしっ!今年も門松の波が来てるぞぉぉ!!」

 そう叫んだのは、「門松ラバーズ株式会社」営業部長・関根。

 竹に魂を捧げて25年、正月は“聖戦”と呼ぶ。

「ライバルは鏡餅とお年玉です!」

「あと玄関に貼る謎の魔除け!」

「負けてられるか!門松には夢があるんだ!」

 社員は年末に差しかかるたび、鼓舞されながら竹を切っている。

 門松ラバーズ株式会社は、東京都板橋区にある社員6人の小さな会社。

 事業内容はシンプル。「門松を、やたらと売る」。

 玄関先だけでなく、

 ・社内に
 ・ベランダに
 ・ペット用に
 ・果ては「枕元に飾る門松(寝る前にお祈りOK)」まで開発していた。

「現代人に足りないのは竹です!」

「いやそれはミネラルとかじゃないですかね」

 新人の小谷は、毎朝出社するたびに思っていた。

「なんで俺、門松会社入ったんだろう……」

 しかし、小谷にも一つだけ驚いたことがある。

 それは、毎年“門松大戦争”が起きることだ。

 都内のビルのエントランス、商業施設、マンションのロビー──どこに門松を置かせてもらえるか。

 各門松会社が激しく競り合い、血で血を洗う仁義なき竹戦争。

 関根部長、異常なまでに燃えていた。

「見ろあの角度!あんなの“若竹の恥”だ!」

「え、どこが?どれも似たような……」

「バカモン!門松は“主張しすぎず、なお目を引く”が基本だ!」

「よく分かんないですけど……要するに“地味ハデ”ってことですね」

「そうだ!つまり“和のギャル”だ!」

「もう何言ってるのか分かりません……」

 そんな折、ビッグな案件が飛び込んできた。

「港区・高層タワマン・ロビーへの門松納品」

 条件:とにかく“映える門松”

 小谷は思った。

(……門松って、映えるんだっけ?)

 だが、関根部長は燃えていた。

「今年の勝負どころだ!!“インスタ門松”作るぞぉ!!」

 部内でブレストが始まる。

 ・金箔入り門松
 ・光るLED門松
 ・Bluetooth搭載門松(音声で「迎春」再生)
 ・門松からミストが出る「高湿度門松」

「全部バカっぽいです!!」

「だが!バカは刺さるんだッ!」

 結局、全案を合わせた「全部入り門松」が完成。

 名づけて《KADOMAX》

 重さ:72kg
 高さ:2.1m
 価格:非公開(見積もり時にお祓いが必要)

 タワマンのロビーに納品されたKADOMAXは、大きな話題を呼んだ。

「何この竹!DJブースみたい!」

「ミストの中で『謹賀新年』って言われた……夢かな?」

「うちの犬、毎日お辞儀してる」

 思いのほか好評だった。

 だがその夜、事件が起きる。

「門松が……倒れた……!!」

 原因はミストの過剰供給による足元の滑り。

 KADOMAX、ぬるぬる事故。

 マンション住民の奥様方が議論を始める。

「門松って、こんなに主張していいのかしら?」

「いやでも、うちの旦那、気に入ってたのよね」

「子どもが『バブみを感じる』って言ってたわ」

 それ、門松に言う感想じゃない。

 結局、KADOMAXは「話題賞」として取り上げられ、年末のニュース番組にまで登場。

 インタビューに答える関根部長。

「門松は“過去と未来をつなぐ竹Wi-Fi”なんです!!」

 字幕:※意味は不明です

 小谷は、ふと思った。

(俺、なんかもうよく分かんないけど……この会社、好きかもしれん)

 その年の正月、小谷の家の玄関にも、ささやかな門松が置かれていた。

 もちろん、ミストなしのやつである。


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