【エピローグ:帰還と、それぞれの静かな音】
旅は終わった。
誰が言い出したわけでもない。
けれど、最後の“麦屋節”の後、一同は自然と本拠の丘に戻ってきた。
風が吹き抜ける草原の中、ジャニヤが荷ほどきをするふりをして、
ぬるりと遅れて登場した。
「やっと着いた〜って、あれ?みんなもう着いてた?おかしいな、時間感覚どこいった?」
苦笑する拓朗。その横で小百合が軽く首を傾ける。
「……いろんな踊りがあったけど、結局、全部“人”だったね」
“音”ではない。“踊り”ですらない。
その土地に住む人、その空気、その表情――
それらを見つめてきた時間が、何よりの収穫だった。
雄大がぐっと背伸びをして、笑う。
「47都道府県、ぜんぶ回って思ったわ。オレ、傘も桶も炭鉱も……
何もかも一度は手に取ったけど、どれひとつ完璧には踊れてねえ!」
美琴がすかさず毒舌で返す。
「それ、わざわざ堂々と宣言しなくていいやつ」
はづきは笑いながら頷いた。
「でも、どこでもちゃんと“混ざってた”よ。
傘の下でも、炭坑のリズムでも、麦の海でも。……そこに、ちゃんといた」
その言葉に、みんなの顔が少しずつ緩んでいく。
啓が、風を背にして立ち上がった。
「まあ……わりと真面目なこと言うけど。
“笑う”っていうのは、けっこう大事な踊りの一種だったのかもしれないね」
すると突然、ジャニヤが手を打った。
「じゃあ、最後に“われらの踊り”を一発やっとく?」
沈黙。
……からの、全員がドン引きの顔で首を振る。
「いやいやいや」「絶対ムリ」「誰も覚えてないよあれ!」「“われらの踊り”って何!?」
騒ぎながらも、どこか温かい輪ができていた。
それぞれの土地で、それぞれの踊りをリスペクトし、
リスペクトしてる風を装いながら、
全力でズレたりズッコケたり感動したり笑ったり泣いたりして、
それでも“盆踊り”がちょっとだけ好きになった。
そんな、世界に二つとない47の奇跡的な旅だった。
彼らは、またどこかで踊るだろう。
傘の下か、麦の海か、温泉の脇道か、はたまた誰かの心の中かもしれない。
踊りに言葉はいらない。
けれど、笑いと、ちょっとした勇気はいるかもしれない。
――それこそが、彼らが見つけた、“盆踊りの真理”なのかもしれなかった。
そして風が、今日もどこかで音を運んでいる。
(終)
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