第四章『心の成長』(03)
【感性で響かせる者と、精密に組み立てる者】
ピアノの調律に挑んでいた高西純優は、音叉を手に真剣な顔で鍵盤を叩いていた。微細な音の違いを聴き分けながら、ひとつひとつ弦の張力を調整している。
「でも、同じ“A”でも、響き方が違う……」
唸るように呟いた純優に、隣でトランペットを磨いていた宮原集睦が顔を上げた。
「数値で合わせたら完璧じゃない?」
「……完璧って、均一ってこと?」
純優は鍵盤に手を置いたまま、視線だけで問い返した。「私は、ずれてても“綺麗”って思える音が好き。正しさより、感じた響きの方が、私は信じられる」
集睦はしばらく沈黙していたが、ふと、彼女の調律済みの音を聴いてから、言った。
「じゃあ、その響き、数値で測ってみていい?」
「うん。測ってみて。違いが出たら教えて」
互いに相反する方法で向き合ってきた二人のやりとりは、反発ではなく“交差”に変わっていた。
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