第19巻 大田区:オオタノカミの願い
大田区の空は朝から曇りがちで、羽田空港の滑走路には次々と飛行機が離着陸を繰り返していた。
オオタノカミは、せわしなく動く空港を見守る神様だ。
彼は多忙でせっかち、願いを叶えるのも速攻だが雑な面があった。
悠大は空港内で働く物流会社の社員で、日々の仕事に追われていた。
「もっと効率よく仕事ができたら…」と呟くと、オオタノカミが静かに現れた。
「任せとけ。時間は命や」
そう言うと、オオタノカミは手をかざし、悠大のデスクの周囲にデジタル表示のタイマーやスケジュールが乱立し始めた。
仕事の流れが一気に整理され、作業効率は劇的に上がった。
だが、その反面、細かな連絡や確認が飛ばされることも増え、ミスもいくつか発生した。
「早いけど雑やな…」と悠大は苦笑い。
それでも納期に追われる中、仕事は滞りなく進んでいった。
同僚の栞那は、そんな悠大を気にかけ、時折フォローに回った。
「効率だけじゃなくて、もう少し余裕も必要よ」
オオタノカミは口数少なく、淡々と答えた。
「余裕は無駄の元や」
だが、その言葉の裏には、仕事の進捗に厳しいだけでなく、みんながうまく回ることを願う気持ちもあった。
ある日、悠大は大きなトラブルに見舞われた。
機材の手配ミスで、重要な荷物が遅れてしまったのだ。
オオタノカミはすぐに駆けつけ、神速で問題を解決しようと動いたが、あまりの速さに現場は混乱した。
「落ち着け、オオタ様!」と周囲が叫ぶほどだった。
悠大はその光景を見て、思った。
「速さだけじゃダメだ。人の手も必要だ」
トラブル後、悠大は同僚たちと連携を強め、確認作業やコミュニケーションに時間を割くことを意識した。
オオタノカミはそんな変化を遠くから見守り、時折小さくうなずいた。
「仕事は人と人とのつながりも大切や」
ある夕方、滑走路を見下ろす屋上で、悠大は一息つきながら空を眺めた。
飛び立つ飛行機の光が徐々に闇に溶けていく。
「効率と余裕、そのバランスを見つけるのがこれからの課題だ」
静かな夜風が頬を撫で、オオタノカミもそっと隣に立った。
「まあ、焦らんでええ。じっくりやればええんや」
悠大は笑って頷き、ふたりはしばらく空を見つめていた。
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