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第22話 大阪梅田駅の駅神様

  大阪の中心・梅田エリア。JR大阪駅に加えて、阪急・阪神・地下鉄……そして今回の主役、阪急の巨大ターミナル「大阪梅田駅」。名前が似すぎて旅行者を混乱させる常連犯だ。
 この駅を守る駅神様は、阪急電車カラーのえんじ色のマントをひらひらさせた青年。宝塚の舞台俳優のように気取ってはいるが、実際は方向音痴で慌て者。
「さぁ、本日も華麗にお出迎えだ! ……えーと、こっちは阪神? いや阪急? あれ、ここどこ?」
 開幕から迷っている。
 朝、観光客が駅前でスマホを見ながら叫んだ。
「大阪駅? 梅田駅? 同じ? 違う?」
 駅神様は慌ててマントを翻す。
「落ち着け! 駅名が多すぎるだけだ! 全部ひっくるめて“梅田”だ!」
 だが旅行者には聞こえない。代わりに、通りかかった地元の人が「ぜーんぶ歩いて行ける距離や」と笑って案内してくれた。旅行者は半信半疑ながらもついて行き、無事に目的地へ。
「よし、地元民の説明力に助けられた。僕はサポート役ってことにしとこう……」
 昼時、駅ナカのパン屋で行列ができていた。サラリーマンが「明太フランスか、クリームパンか……」と迷っている。神様はため息をつき、指先でパン屑を散らす。すると偶然、店員が「明太フランス焼き立てでーす!」と声を張り上げる。サラリーマンは即決して購入。
「はははっ! 選択肢を減らすのも神の技!」
 午後、ホームでは学生たちが「宝塚行き? 京都河原町行き? どっち?」と混乱していた。駅神様は胸を張って答えようとしたが――。
「えーと、宝塚は……右? いや左? うーん、僕もわからん!」
 オロオロしているうちに、学生たちは駅員さんに聞いて無事に乗車。神様は顔を赤らめてマントで隠した。
「……神様やのに方向音痴って、どうなんや」
 夕方、帰宅ラッシュで人波が渦を巻く。阪急三路線の分岐で人々がぶつかりそうになった瞬間、神様はマントを大きく広げた。すると風が起きて、人の列が自然に三方向へ分かれる。
「見よ! これぞマントの奇跡! ……って、ただの偶然かもしれんけどな!」
 夜。阪急百貨店のネオンが輝き、人々が駅を後にする。神様は梁の上に腰を下ろし、しみじみとつぶやいた。
「梅田はややこしい。でも、迷うたびに誰かが助けてくれる街でもある。……まぁ、僕も未だに迷うけどな!」
 マントをひらりと揺らしながら、駅神様は笑った。人には見えないその笑顔が、不思議と梅田の夜を明るくしていた。


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