第五章『音楽会当日』(03)
桃音が指揮台に立ち、静かに両手を上げる。教室の空気が一瞬にして張り詰めた。
第一曲目は、全員参加によるオリジナルメドレー。
冒頭を飾るのは――森本川めりあのトロンボーン。
「いくよっ!」と小さく声を出してから、めりあがスライドを引いた。
艶やかで伸びのある一音が、空気を震わせる。
続いて、ウクレレの軽快なリズム。金山久智の指が刻む音には、彼が描いた星の模様のような明るさがあった。
ピッコロの高音が乗る。彩由美が少しだけ震える指で吹いたその音は、完璧じゃない。でも、観客の胸に真っ直ぐ届いた。
クラリネット、サックス、ホルン、トランペット――それぞれの音が交差し、重なり、ひとつの波のように教室を包む。
そして中盤、ティンパニの重低音が曲を引き締めた。啓利の腕は迷いなく振り下ろされ、その響きに観客が一斉に息を呑む。
(完璧だ……)
彼の目がわずかに潤んでいたことに気づいたのは、大翔だけだった。
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