第四章『心の成長』(05)
【自己流を超えて】
一方、バンジョーを直していた川崎一滉は、図工室の隅でいつも一人黙々と作業していた。話すのは苦手で、誰とも視線を合わせようとしなかった。
そんな彼の元に、ある日突然やってきたのはカリンバ担当の松尾川京祐だった。
「バンジョーの胴の共鳴、カリンバと似てるんだよ。音板じゃなくて、箱の鳴らせ方で調整できる」
「……そうなの?」
驚いたように川崎が顔を上げたのは、この計画が始まって初めてだった。
「ほら、これ。これが俺の実験メモ。変な図ばっかだけど、参考にはなるかも」
川崎は一度それを断ろうとしたが、手を伸ばしてメモを受け取った。そして、しばらくページをめくった後、小さく「……ありがとう」と言った。
それが、彼の中の殻がほんの少しだけ破れた瞬間だった。
修理が進むほどに、それぞれの楽器と、それを担う人の心が繋がっていく。誰もが完璧ではない。でも、互いの違いを受け入れ、支え合う姿が、教室という小さな舞台で確かに育っていた。
そして、ある日の放課後、桃音がふと呟いた。
「……みんな、変わったよね」
その横で、大翔が笑って言う。
「楽器も、人も、きっと“修復”されたんだと思う」
終
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